デビン・バッセル

ネッツ戦でキャリアハイの37得点、勝利の立役者に

デビン・バッセルは評価の難しい選手だ。2020年のNBAドラフト1巡目11位指名でスパーズに加入して以来、得点もアシストも右肩上がりで伸ばしてきた。再建に入ったスパーズが勝てない中、プレッシャーのかかる重要な局面でチームを勝利に導く働きができていたわけではないが、キャリア3年目を終えた時点で5年1億3500万ドル(約200億円)の契約延長を結び、エースとして期待を寄せられていた。

だが、キャリア4年目の昨シーズンはビクター・ウェンバニャマが加入して、スパーズは別のチームへと生まれ変わった。NBAの歴史に名を刻むであろう『エイリアン』が強烈な個性を発揮するのと反比例するようにバッセルは目立たなくなった。今シーズンはオフに足を手術した影響で出遅れ、クリス・ポールが加入し、ルーキーのステフォン・キャッスルが躍動し、2月にはディアロン・フォックスがやって来て……バッセルの存在感は次第に薄れていった。

しかし、2月にウェンバニャマが血栓症でシーズン終了となると、バッセルが再び目立ち始めた。ウェンビー離脱後、試合によって波はあるもののシュートを打つ本数が増え、強気に攻める姿勢が出るようになった。そして現地3月4日のネッツ戦でキャリアハイとなる37得点を記録した。フィールドゴール20本中14本成功、3ポイントシュートは11本中8本と高確率で、さらに11リバウンド5アシスト4スティールを記録。37得点はキャリアハイで、11リバウンドと4スティールはキャリアハイタイと、攻守ともにキャリア最高と呼ぶべきパフォーマンスを見せた。

ウェンビー離脱から2勝5敗と失速していたスパーズに、バッセルが貴重な1勝をもたらした。「自分に自信を持つことが一番大切なんだ」と彼は言う。「シュートを連続して外すと、そのことで頭がいっぱいになってしまうけど、そんな時こそ自信を持たなきゃいけないし、思い切り良くプレーする必要がある。それは得点に限らない。とにかく全力でアグレッシブにやれば結果は出るものさ」

そして彼は厳しいオフを振り返る。「去年の夏は手術をした影響で思うような準備ができなかったけど、リハビリを言い訳にして消極的なプレーをするのは嫌だ。シュートが決まらなくても前を向いて、次のプレーに向かうんだ。みんなが僕にアグレッシブに戦うことを求めている。その基準をクリアしていたかった」

グレッグ・ポポビッチが病気で指揮を執れず、ウェンビーも戦線離脱。それでもバッセルが『ネクスト・マン・アップ』のメンタリティを発揮することで、スパーズはいまだ興味深いチームであり続けている。