「しっかり勝ち切れたことに価値がある」
3月2日、宇都宮ブレックスはホームでレバンガ北海道と対戦。ともに3ポイントシュート成功率40%以上とシュートタッチ好調で激しい点の取り合いとなるも、ここ一番の決定力で上回り98-91で制した。
この試合で最も目立ったのは40得点を挙げたグラント・ジェレットだが、遠藤祐亮も持ち前の堅守に加え、3ポイントシュート3本成功を含む13得点をマーク。出場時間の得失点差で、チームトップの+16が示すように勝利に大きく貢献した。
その遠藤は試合をこう総括する。「相手が最初から昨日とは違う速い展開で攻めてきたところで、たくさんシュートを決められてしまうクォーターが多かったです。自分たちも得点を多く取れ、ディフェンスの課題は多くありますが、終盤には守り切った場面もありました。しっかり勝ち切れたことに価値があると思います」
宇都宮はこの連戦の前、1月中旬に心臓疾患で緊急手術を受けていたケビン・ブラスウェルヘッドコーチが46歳の若さで亡くなる大きな衝撃に見舞われた。目の前の試合に集中することが難しい中でも連勝できたことは、遠藤が語るように大きな価値がある。
「大変な1週間を過ごしました」と遠藤は振り返り、大きな悲しみの中でもチームが一つになってやるべきことを遂行できたと続ける。
「良い雰囲気で練習ができていたと思いますし、下を向く選手は一人もいませんでした。よりチームとして一丸にならなければいけないとキャプテンからも言われていました。お互いに助け合いながら、試合で誰かが下を向いていたら声をかけることを昨日も今日もできていました」
「小さい部分の積み重ねを、自分が先頭を切って」
この助け合いの精神こそ、ブラスウェルが重視して宇都宮に浸透させようとしてきたことだ。「タレントが揃っていると言われますが、そこで助け合い、チームとして一つになる努力を続けていくことで、他のチームは追いつけないとケビンは言っていました。それをこれからも意識し、チーム一丸となって頑張っていきたいです」
水曜日、宇都宮はアウェーに乗り込んでアルバルク東京と激突する。さらに今月は群馬クレインサンダーズ、三遠ネオフェニックスと上位対決が続く。チャンピオンシップへのシード争いにも大きな影響を与え、ポストシーズンに向けた試金石となる戦いへ、遠藤は次の姿勢で臨む。
「バイウィークも明けて強い相手と戦う回数が多くなり、チャンピオンシップを見据えて戦っていく時期です。チャンピオンシップで何かを変えるのではなく、ここからしっかり習慣づけて、自分たちらしさを毎試合出せるよう準備をしていく。それができればチャンピオンシップでも良い結果が出ると思います」
宇都宮のタレント力はリーグ随一で、シーズンMVP受賞者である比江島慎とD.J・ニュービルは圧倒的な個の力で相手ディフェンスを打開できる得点力を備えている。さらに今シーズンは、ジェレットもこの試合の40得点を筆頭にリーチの長さを生かしたドライブ、成功率38%以上の3ポイントシュートで得点源として活躍しており、比江島とニュービルの2大エースではなく、ジェレットを加えた『オフェンス三銃士』と評していいだろう。
ただ、3人を軸としたハイパワーオフェンスが本来の力を発揮するには、宇都宮の根幹である激しいディフェンスが機能してこそ。そして『ブレックス・メンタリティ』と言われるハードワークによる堅守を誰よりも体現するのが遠藤であり、「ディフェンスで自分が激しくやれば、みんなもついてきてくれます。小さい部分の積み重ねを、自分が先頭を切ってやっていきたい」と強い自覚を持っている。
ここからシーズンクライマックスへ向けて宇都宮が勝利を積み重ねていくには、目立たなくても宇都宮らしいバスケに欠かせない遠藤の働きの重要度がこれまで以上に増すはずだ。