平良彰吾

ディフェンスを評価され3番手のポイントガードに定着

2月9日の試合を終え、B1は代表活動による約3週間のブレイクに入る。現在、琉球ゴールデンキングスは26勝11敗で、2位の島根スサノオマジックに2ゲーム差をつけての西地区首位につけ、3月にはEASL(東アシアスーパーリーグ)のファイナル4、天皇杯決勝とビッグゲームが続く。

オフに複数の主力が去り、特に開幕戦で伊藤達哉が約2カ月の長期離脱となるなど故障者に苦しんだことを考えると、今の状況は上出来と言える。その過程で大きな貢献を果たしたのが、開幕から1カ月後に緊急補強でB3の横浜エクセレンスから加入した平良彰吾だ。

27歳の平良は昨シーズンまでB1でのプレー経験がなく、これまでB3を主戦場としてきた。それでも琉球では控えのポイントガードとしてインテンシティの高いディフェンスとハッスルプレーで貴重な戦力となっている。その結果、約1カ月だった期限付き移籍の期間が今シーズン終了までに延長された。伊藤が故障から復帰した後も、岸本隆一と伊藤に続く3番手のポイントガードとして居場所を確立。ビハインドで得点が必要な場面での出番は厳しいが、主に堅実なプレーによる繋ぎ役として出番を得ている。

桶谷大ヘッドコーチは、岸本、伊藤と2人の実績十分な司令塔がいる中でも平良を起用する理由を「まずディフェンスを高いレベルでできることが一番です。ボールプレッシャーに加え、ピックプレーへのプレッシャーのかけ方で、ウチはビッグマンが機敏なタイプではないからこそ、ガード陣がそこを担うことが大事です。その部分をできることでチームのプラスになっています」と語る。

また、ともに30代の岸本と伊藤の負担を軽減させる意味でも、平良の存在は大きいと続ける。「隆一をどれだけ休ませることができるかは大切ですし、伊藤も限られた時間で爆発力を出して良い仕事ができるタイプです。平良が1分、2分でもプレーして、隆一を少しでも良い状態で最後の締めの時間帯でコートに出せるのか。平良の出ている時間帯を五分五分で繋いでくれたらチームにとってプラスになります」

平良本人は、ここまでの自身のプレーをこう見ている。「自分の武器であるディフェンスは、シーズンが終わるまでずっと激しくやり続けてチームの流れを良くしたいです。オフェンスはトランジションの中でのアシストだったり、自分がパスをさばくことで良いリズムを作っていく。あとは3ポイントシュートの成功率を改善して決めるべきシュートを決めていきたいです」

平良彰吾

「チャンピオンを決める舞台に行けるのはありがたい」

2021-22シーズンから今年の開幕までB3にいたことも考えれば、B1の強豪である琉球で試合に出ていることに達成感を得てもいいだろう。しかし平良は、「満足してはいけないですし、もっと良くしているところがあります。プレータイムをもらえているからこそより成長して次に繋げていきたいです」と語る。

3月のEASLファイナル4、天皇杯決勝とタイトルが懸かる大舞台は初めての経験となる。そのことに「本当に恵まれていて、ありがたいです」と平良は感謝を強調する。

「天皇杯はエクセレンスで9月に負けているのに決勝に行かせてもらえる。長い間、B3でやっていたのにアジアの別の国のチームと試合ができて、チャンピオンを決める舞台に行けるのはありがたいです。その分、自分ができることをしっかり考えてコートで表現したいです」

今の平良は、わずか数カ月前には想像すらできなかった舞台に立っている。だが、これはわずかなチャンスをつかみ取った平良の実力だ。B1屈指の常勝軍団の一員であるのは、幸運ではなくこれまでの積み重ねの成果だ。

だが、平良は「ありがたい」という気持ちが第一に来るという。「本当に考えられないことが起こっています。楽しみな部分もありますけと、今の状況に何よりも感謝し、自分のやるべくことをやらなければならないと考えています」

強度の高いディフェンスやハッスルプレーに加え、平良がチームにもたらしたいと意識していることに、ハングリーさがある。今の琉球の多くのメンバーは、すでにプロでタイトルを獲得している。優勝経験があるからこそ再びその喜びを味わいたいとの思いもあるだろうが、これまでタイトルやスポットライトを浴びる舞台と無縁だった者だけが持っている栄冠への渇望もある。

そういったハングリーさを平良は琉球に注入していく。「そもそも最初は1カ月だけの期限付きで、優勝とか考えないで加入したのが、シーズンの最後までいさせてもらえることになりました。自分がエナジーを出して、優勝に向けて少しでも貢献していきたいです」

B3からB1常勝チームのメンバーへ。これだけでもBリーグの歴史を振り返っても一番とも言うべきシンデレラストーリーだが、このストーリーはここからより輝かしい結末へと向かうこともできる。