「あの場面を託されるルーキーはほとんどいないよね」
現地1月12日のジャズvsネッツは、再建中のチーム同士の顔合わせとなった。シーズンの成績よりも今年のNBAドラフトで上位指名権を得ることに意識が向くフロントは「負けてもいい」と考えていたかもしれない。だが、そんな状況でもチームは目の前の試合に勝つことに全力を注ぐ。そんな意地と意地とがぶつかり合った試合はオーバータイムにもつれた。そこで輝きを放ったのはジャズのルーキー、アイザイア・コリアーだった。
コリア―は昨年のNBAドラフトで1巡目29位指名を受けた20歳のガード。若いタレントの多いジャズで頭角を表すのは簡単ではなく、ここまで30試合に出場しているものの、確たる結果を残せずにいた。
それでもこのネッツ戦ではキヤンテ・ジョージが欠場してガードの枠が空いた。さらにラウリ・マルカネン、ジョン・コリンズ、ウォーカー・ケスラーと主力を軒並み欠き、「負けてもいい」構えと取られても仕方のないラインナップとなったが、コリアーは先発のチャンスに燃えていた。
華麗なスキルやひらめきの持ち主ではないが、パワフルで粘り強く、タフに戦い続けることのできるポイントガード。フォワードとセンターの主力が不在の状況で、コリアーはコリン・セクストンとツーガードを組み、ゲームをコントロールした。そしてチャンスと見れば積極的にリムを攻め、そのメリハリの利いたプレーがネッツ守備陣を苦しめた。
そのコリアーのアグレッシブさは、危険なプレーをも招いた。第4クォーター序盤、相手の3ポイントシュートに鋭く寄せてブロックショットを決めると、そのままブレイクに持ち込む。トップスピードでボースハンドのダンクを叩き込んだのだが、ブロックされて追い掛けてきたキーオン・ジョンソンに背後から突き飛ばされたコリアーは、リングをつかんだ状態でバランスを大きく崩し、顔からフロアに衝突。鼻から出血があり、脳震盪の検査のためにコートを離れなければいけなかった。
「接触があるかもしれないからリングにぶら下がるつもりだったせいで身体が完全に横向きになり、顔から落ちることになった。痛かったけど、大事に至らなくて助かった」とコリアーは言う。
コリアーはそのままロッカールームに下がった。通常、選手がケガをしてフリースローを代役の選手が打った場合は、もう試合に戻ることはできないが、例外は脳震盪プロトコルによる診断を受け、問題ないと判断された時だ。「耳と鼻と口をチェックされて、鼻血の手当てをして、何とか戻ることができた。痛みは残っていたし違和感もあったけど、プレーはできた」とコリアーは振り返る。
ISAIAH COLLIER WINS IT FOR THE JAZZ 🧊🧊 pic.twitter.com/BhYPvoJ9ZK
— NBA (@NBA) January 13, 2025
第4クォーター残り10分50秒で下がった彼は、残り5分半で戻って来た。違和感が消えるまで少し時間を必要としたが、試合がオーバータイムにもつれたことで、彼は最高の見せ場を得た。
オーバータイムもリードチェンジを繰り返す大接戦、110-111と逆転された残り6秒からの最後の攻め。ブライス・センサボーからボールを受け取ったコリアーに、ニコラス・クラクストンとノア・クラウニーがダブルチームを仕掛ける。ネッツとしては無理にボールを奪いにいくリスクを避け、6秒間で良いシュートを打たせない狙いで、まずはコリアーにプレッシャーをかけてパスを出させ、時間を使わせるはずだった。
しかし、ここでコリアーはダブルチームの隙間にボールを通し、続いて自分も強引に割って入る。身体を寄せるクラクストンに屈することなくトップスピードに乗ったコリアーはそのままレイアップを沈め、ジャズに112-111の逆転勝利をもたらした。
「ブライスにボールを戻して打たせるか、自分で行くかの判断で、スピードで勝負しようと決めた。競られていたけど、上手くリムにボールを置いてくることができたよ」とコリアーはゲームウィナーを振り返る。
このラストプレーを託してくれた指揮官ウィル・ハーディへの感謝も忘れなかった。「あの場面を託されるルーキーはほとんどいないよね。コーチからの信頼を感じるからこそ僕は落ち着いてプレーできるし、頑張ろうと思える。僕もコーチのことを信頼している。夏にユタに来たばかりだけど、本当に多くのことを教えてもらっている」
コリアーにとってこれまでで最高のパフォーマンスだったのは間違いないが、「僕が今一番大事にしているのは、ポイントガードの役割を果たして信頼を勝ち取ることだ」と彼は言う。「このところターンオーバーが減っているのが僕としては満足感がある。毎日たくさんの映像を見て、判断力を高めようと思っている。それが実際にコート上で生きていると感じる時、自分をとても誇らしく思えるんだ」