今村佳太

「チェンジングディフェンスはシーズン一番良い出来」

1月11日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズはアウェーでアルバルク東京と対戦。12月4日の天皇杯、11日の試合で連敗していた相手に出だしから攻守で圧倒して、78-61で快勝した。

第1クォーターから名古屋Dは、得意のトランジションを繰り出して8選手が得点と、バランスの取れたチームオフェンスで27-21と主導権を握る。第2クォーターに入ると前から激しくプレッシャーをかけることでA東京のリズムを崩し、このクォーターで10失点に抑え、前半で12点のリードを奪った。

後半に入っても堅守からの素早い攻守の切り替えでイージーシュートの機会を次々と作り出し、第3クォーター残り3分で21点の大量リードを奪い、楽々と逃げ切った。

名古屋Dのショーン・デニスヘッドコーチは、「これまでの対戦ではペイント内を支配されていましたが、今日は相手のフィジカルに対応できました。チェンジングディフェンスは今シーズン一番良い出来です。アルバルク相手にターンオーバーから21得点を奪えたのが素晴らしかったです」と勝因を語る。

フィジカル勝負で互角以上に渡り合うのに貢献したのが短期契約での加入が発表されたばかりのアイザック・バッツだ。今シーズンここまでファイティングイーグルス名古屋に選手、コーチとして在籍していたバッツを、指揮官はこう称える。「ルーク・メイ選手が故障でいない中、バッツ選手が名古屋にいたという利点もありました。ウチの対戦スケジュールでいうと今週のアルバルク、オールスターブレイク明けの大阪エヴェッサはともにフィジカルなチームです。今日、バッツ選手はこの部分でインパクトを与えてくれました。14分間で8リバウンドは素晴らしいです」

この試合、名古屋Dの今村佳太は10得点2アシスト2スティールを記録。開幕前の負傷でシーズン初戦が11月と出遅れた今村だが、試合を重ねるごとに調子を上げている。この試合でも常々意識しているチーム全員を巻き込むオフェンスを構築し、数字に出ない働きも大きかった。

「今日の試合はゲームプラン通りにでき、自分たちのシステムを信じてやり続けたことが勝利に繋がりました」と試合を総括する今村は、次のようにチームの成長に手応えを語る。「素直にチームとして変わってきていると思います。より自分たちのやるべきこと、ディフェンスのシステム、オフェンスのスペーシングなど、一人ひとりが理解してプレーできている。それが結果に出ていると思います」

今村佳太

「よりクリエイトして仲間を生かすプレーを」

今村個人のパフォーマンスについては、次のように手応えと課題を語る。「得点に関してはシュート確率などでパフォーマンスをもっと上げていかないといけないです。5人でより戦えるチームの方が強いと思っていて、その部分では味方のオープンシュートをクリエイトできていると思います。あとは味方を信じて、これをやり続けることでチームにすごく良い影響を与えられます」

昨シーズンまで在籍していた琉球ゴールデンキングスでの今村は、ハンドラーとして攻撃の起点を担う場面が多かった。だが、名古屋Dには齋藤拓実という絶対的な司令塔がいる。「拓実はポイントガードでリーグNo1の実力を持っていると思います」と今村も絶大な信頼を寄せ、齋藤との共存方法をこう考える。

「彼の負担をどれだけ軽くしてあげられるかがすごく大事です。その中で彼と一緒に出ている時は、シューターの立ち位置でスペーシングを取ることもあります。オフェンスが手詰まりなった時でも、そこから流動的に展開することで、自分はこのチームにおいて違いを生み出せる存在だと思います。また、彼が出ていない時は、自分のフィニッシュだけでなく、よりクリエイトして仲間を生かすプレーを考えています」

シーズン序盤は黒星先行と苦しんでいた名古屋Dだが、ここ10試合は宇都宮ブレックス、サンロッカーズ渋谷、群馬クレインサンダーズなど強敵との連戦が続く中、今日の勝利で8勝2敗、シーズン通算でも16勝13敗と白星先行となっている。

この復調を今村は「最初は自分がケガをしている時期に客観的にチームを見て、選手一人ひとりが少し違う道に逸れている、自分ではなくいろいろなことにフォーカスを向けてしまっていました。それを中断期間などに『それは違うよね』と話し合い、自分たちがやるべきこと、システムを信じてやり続けることの強さを再確認して進んでいる段階です」と明かす。

そして、右肩上がりの状況にも慢心することなく、勝って兜の緒を締める。「もちろん良い方向に向かっていますが、過去にはそれが1試合で崩れてしまう経験もしています。まだまだ満足してはいけないですし、より高いレベルで自分たちのバスケットボールを遂行できればこういう試合を続けられます。現状に甘んずることなく危機感を持ってやっていきたいです」

明日の試合、A東京は今日の屈辱を晴らそうとより強い気持ちを持って、アグレッシブに向かってくるだろうが、今日の強度や組織的なプレーを継続して連勝をつかみ取れば名古屋Dには大きな弾みとなる。そのためには、リーグ屈指の2ウェイ選手である今村の攻守に渡る貢献が欠かせない。