ダグ・クリスティ

ヘッドコーチ交代がカンフル剤として効果を発揮

キングスは乱高下を繰り返すシーズンを過ごしているが、今は最も良い時期にあるようだ。13勝18敗の時点でヘッドコーチのマイク・ブラウンを解任。暫定指揮官となったダグ・クリスティ体制での初戦となったレイカーズ戦は落としたものの、そこから6連勝を飾っている。現地1月10日には前年王者セルティックスに114-97の快勝を収め、19勝19敗と勝率を5割に戻した。直近の3試合は臀部のケガでディアロン・フォックスが欠場しているが、それでもキングスの勢いは止まらない。

セルティックス戦はフォックス欠場で8人ローテとなったが、28リバウンドのドマンタス・サボニス、ベンチから11リバウンドのトレイ・ライルズが軸となり、他の選手もタフに戦ってペイントエリアの攻防を制し、リバウンドで56-43と上回った。オフェンスではデマー・デローザンが24得点、サボニスが23得点、マリーク・モンクが22得点、キーガン・マレーが19得点と主力がバランス良く攻めた。

第3クォーターまでは一進一退の攻防で、第4クォーターを38-21と圧倒した試合展開だったが、キーガン・マレーはこう語る。「ずっと僕らのペースだったように思う。相手は素晴らしいチームで、僕らはベストプレーヤーを欠いていたけど、今までとは風向きが変わっている」

指揮官の交代は、プレシーズンの期間から準備してきたことが無駄になることが多いが、カンフル剤として停滞していたチームに刺激を与える。今回のキングスで起きているのは、まさにこれだ。かつてキングスの選手として活躍した経歴を持つクリスティは、「選手たちは自信を取り戻している。これはコーチングにできる範囲外のこと。どの選手も勝つことを信じてコートに立っている」と語る。

では、コーチングとしてクリスティがもたらしたのは何だろうか? 興味深いことに、守備的なガードとしてハードワークが売りだったクリスティは「足を休めよう」と選手に指示している。マイク・ブラウンの練習は厳しく、遠征先でも常に選手を稼働させて常にその心身を『ON』に保とうとした。

しかしクリスティは『OFF』を大事にし、練習の負荷をかなり下げた。マリーク・モンクは練習時間が減り、その強度も落ちたと証言している。対戦相手のスカウティングは入念にやるが、スクリメージはかなり減ったそうだ。ケビン・ハーターもこう語る。「シーズンのこの時期は試合数もかなりこなしているし、身体的にも精神的にも疲労が溜まっている。少しペースを落とせるのは正直助かるよ。でも、やるべき仕事をちゃんとやっている自信はある」

今回のボストンでのセルティックス戦は中3日とスケジュールに余裕があった。ブラウンであればその間にも課題を克服するための厳しい練習を組み込んだだろうが、クリスティは休養を優先した。長いシーズンを戦う上でペースを落とす時期は必要だし、その前は6連敗していて指揮官解任もあって選手たちは精神的にも余裕を持てておらず、一息入れる効果は大きかった。

こうして心身ともにフレッシュになったことが、セルティックス戦での素晴らしいパフォーマンスに繋がった。ただ、緩めてばかりではこの先は厳しくなる。クリスティがどんな手綱さばきを見せるのかに注目したい。