片峯聡太

福岡大学附属大濠は、ウインターカップ2024で初戦の日本航空戦から圧倒的な強さを見せ、準決勝の東山、決勝の鳥取城北と強敵相手にも大差をつけて勝利し、3年ぶり4回目の優勝を勝ち取った。『日本一カッコ良く素敵なチームを目指す』というテーマを体現して全国制覇を果たし、地元の福岡に戻ってようやく一息ついた片峯聡太コーチに、大会を振り返ってもらうとともに、新しい2025年の抱負を聞いた。

「個人としても組織としても本当に成長し続けられた」

──ウインターカップ優勝おめでとうございます。福岡に戻って来て、祝杯を上げて気分良く過ごしているのか、日常に戻っていつも通り淡々となのか、どう過ごしていますか。

どちらかと言うといつも通りですね。いろんな方からの祝福のメッセージや、学校にも電報などが届いてありがたいばかりですが、家に戻ればいつも通りです。昨日も朝イチから息子たちを連れて体育館に行って、決勝で湧川裕斗がやった上手いステップを練習していました。今ようやく少しゆっくりしています。あとは「来年どうしようかな」というのを今ちょっと考え始めていますね。

──今回、優勝できた一番の要因は何だったのでしょうか。

やっぱり3年生が去年の悔しさを忘れず、大会に入るところから終わるところまでしっかり結束して、個人としても組織としても本当に成長し続けられたことです。それがゲームの中での共通認識だったり、最後までやりきる遂行力に繋がったのだと思います。

──トーナメントを戦う中で、カギになった出来事を挙げるとしたら何ですか。

日本航空との初戦の入りがすべてでした。ウチの選手たちはみんな『良い子ちゃん』で『お利口ちゃん』ですから、構えて入って受け身になってしまうと流れがつかめずにそのまま進んでいきそうで、それで勝ったとしてもチームの勢いが上がらないんじゃないかと思っていたのですが、初戦の開始3分をしっかり戦えて、攻撃的にやれているのが見えました。それなら相手のレベルが上がっても、こちらがスカウティングをしっかりやって的を絞れば、自分たちでギアを上げていけると最初の3分で感じました。

──的を絞ってのスカウティングが一番ハマったのが東山との準決勝だと思います。

八王子学園八王子と東山ですね。八王子には十返翔里選手と平原侑真選手という良いシューターが2枚いて、そこへの守り方をずっと練習して、試合前日も当日もアジャストしました。東山も瀬川琉久選手と佐藤凪選手の2枚を守るのは同じですが、八王子はオフボールスクリーンからのシュートが上手いのでそこを守ったのですが、東山はオンボールのクリエイトを止めることに重点を置きました。瀬川選手と佐藤選手のラインをしっかり切ってどちらかを孤立させれば、タフショットが増えてくるという考え方でした。

あとは自分たちがしっかり走ること。八王子も東山も苦しい試合の連続だったので、絶対どこかで足に来ると考えていました。思った以上に前半から点差が離れたので、なんとなく楽勝のように見えたかもしれないゲームですが、ウチとしてはやるべきことを最初から強度高く、しっかり遂行できたのが良かったです。

片峯聡太

「目標とか指針があるのとないのとでは全く違う」

──日本人選手だけで戦う大濠としては留学生とのマッチアップがカギとなります。一昔前までの留学生はゴール下にどっしり構えていましたが、今はセンターよりもフォワードとしてプレーして外のシュートも打てる選手が増えてきました。

留学生の質、使い方も変わってきていると思います。だからこそスカウティングで相手のやりたいことを潰していかないと、どこからでもやられてしまうことになってしまいます。今回はスカウティングがまずあっての、選手たちの遂行力でした。

昔と比べると映像だとかデータだとか選手とのコミュニケーションツールも増えています。昔はコーチの経験や感覚に頼る部分が大きくて「先生が言うことを信じてやる」のが組織の作り方でしたが、今はそうはいきません。だからこそ、そういったツールを上手く活用して組織を作るチームが勝ち上がってきているんじゃないかと思います。

──この1年間は『GIVE』というテーマを掲げてチームを作ってきました。そういったテーマを掲げたり目標設定することは、チーム作りにどんな影響を与えますか。

良い時はいいんですが、迷ったり悩んだり沈んだりする時に「僕らはやっぱりこれだよね」と立ち返ることのできる目標とか指針があるのとないのとでは全く違うと私は思います。そのためにそういったテーマを掲げていますし、毎年その代の選手たちを見ながら、その子たちに合ったものを選んでいます。

──来年のテーマはもう考え始めていますか?

今年のチームがこれだけ強かったので、来年は戦力的にもキャリア的にも少し落ちてしまうので、「もう一回、チャレンジ」みたいなものを考えようと思います。何かこう、歯切れの良いものが準備できればと思います。

片峯聡太

「次のステージでも必要不可欠な存在に成長できる」

──新チームは勝又絆選手と榎木璃旺選手のスタート2人が残り、サントス・マノエル・ハジメのような選手や新しく入るメンバーを組み合わせて連覇を目指すことになると思います。新チームにはどのような期待を持っていますか。

勝又も榎木もすごく良い選手で、今シーズンの優勝に2年生ながら絶対欠かせない選手でした。でも、じゃあ彼らが今のままで来シーズンにチームが勝てるかと言えば、やっぱりそうではないので。サントスの成長にも期待していますし、上手くチームを作らなければいけないと思っています。

タレント的にはサイズ感も含めて少し落ちますが、今の2年生、1年生も能力があって、今年のウインターカップの景色を見るとともに、3年生がこれだけ努力しなきゃ日本一になれないんだ、というのを見ています。逆に次の3年生は、能力がやや劣るからこそ、これまで以上に頑張らなきゃいけない。そこで自分たちにもっと磨きを掛けなきゃいけないというマインドを持ってほしいです。

──日本一を勝ち取って卒業していく3年生たちの今後をどう見ていますか。

みんなどこに行っても主軸になれる能力を持っているだけではなくて、チームが良くなるために、チームが勝つために、自分が何をすべきかを考えて体現できる選手でもあります。だからそれぞれ次のステージでも間違いなく必要不可欠な存在に成長できると、そこは安心して見ています。

──では最後に、今年も大濠に注目しているバスケファンへのメッセージをお願いします。

今年は巳年なので、辰年だった2024年の昇り龍のような圧倒的な強さはないかもしれませんが、ヘビのように紆余曲折しながらも日本一に向けて進み、またウインターカップの決勝の舞台に立てるように頑張っていきます。今年も福大大濠トロージャンズの応援をよろしくお願いします。