残り5分の甘さを払拭、重圧を振り払う『気持ちの勝利』
3月26日、三遠ネオフェニックスはサンロッカーズ渋谷との激戦を72-69で制し、連敗を5で止めた。そして30得点を挙げたジョシュ・チルドレス、12得点の太田敦也とともに勝利に貢献したのが田渡修人だ。この日、田渡は10得点だったが、その内の7得点を第4クォーターに挙げており、ここ一番での活躍が光った。
もし、前日に続いてSR渋谷に敗れた場合、中地区2位の三遠は同地区で3位につける渋谷とのゲーム差が1にまで縮まり、3位転落の危機に陥っていた。それだけに、この日は何としても勝ちたいゲーム。それを制したことで、田渡は勝利の喜びと安堵をまずは語る。
「連敗を止めて本当に純粋にうれしいですし、ホッとした部分もあります。直接対決で負けてはいけない。ここで負けるとゲーム差が詰まり、かなり競ってしまうことになるので、絶対に勝ちたいという気持ちでした」
中心選手の一人であるロバート・ドジャーが家庭の事情で一時帰国という離脱が響いて連敗していた三遠だが、5試合すべてが惜敗と大きく崩れて負けたわけではない。ただ、あと一歩での負けが続くからこそ精神的にこたえる面があったのも事実だろう。この苦しさを乗り越えての勝利に、藤田弘輝ヘットコーチが「気持ちの勝利」と語っていたが、それは田渡も同じ考えだ。
「ここまでの5試合は逆転負けがほとんどで、『残り5分の甘さ』がありました。そこを特に見直して練習してきました。今日は試合に出ていないメンバーもベンチからと、みんなで声をかけあったことで、最後しっかり勝ち切れました。今日勝てたことでメンタルが回復しました」
田渡が感じる課題はシュートを『打つための動きの質』
彼自身がメンタルに触れたように、連敗中、田渡は自身のパフォーマンスも良くなかったこともあって少なくないプレッシャーを感じていた。実際、3ポイントシュートを持ち味とし、ここまで40%を超える成功率を誇っている田渡が、連敗中は5試合すべてで成功率が40%を下回った。また、この試合でも第3クォーターまでは3ポイント5本放ってすべて失敗と悪い流れが続いていた。だが、第4クォーターにしっかり決め、チームの勝利につなげた。
「シュートが入ってなくても打つことが僕の仕事です。僕が打つことで相手の守備を外に引き付けることができるし、コーチには自信を持って打ち続けてくれと言われています。入らないことを気にしていないわけではないですが、そこは切り替えていました」
このように田渡が語るように、シューターの仕事は入る、入らないに関係なく打つことが仕事。シューターが打つべきタイミングでしっかり打たないと、チームとしてオフェンスの流れが悪くなってしまうからだ。
また、たとえ入らなくとも打ち続けることで相手の守備はマークに行かざるを得ない。それが、ゴール下へのアタックへとつながる利点を生む。実際、この試合でも「第3クォーターに入らなかったですが、それでも打ち続けていたことで、自分のマークマンが出てきて、そこからドライブを仕掛けて得点を決められた。ドライブで展開できたのは、自分の中でも良い切り替えがでした」と本人は振り返る。
今回、田渡の得点はアウトサイドシュートよりも、ドライブからのものが多かった。ただ、それも打つべきタイミングで、しっかり打ち続けてからだ。
これからは、シュートを『打つための動きの質』をもっと上げていきたいと語る。「昨日の試合はドライブが多く、相手も僕に寄って来なくてパスを散らすことができませんでした。それが、今日は自分からも積極的に動いて相手を崩し、シュートを打てました。シュートを打つための動きが、これからの課題かと思います」
苦しい連敗からの脱出、涙をこらえる「最高の瞬間」
試合終了直後、田渡が両膝をついて下を向いている時がしばらくあった。この点について体力的にキツかったのかと聞くと、「連敗の間、自分のパフォーマンスも上がっていなくて苦しかったこともあった中での勝利だったので、泣きそうになっていました」と明かしてくれた。
それだけチームが勝てなかったことにプレッシャーを感じていた田渡だが、それも昨シーズンまでと違い主力選手として起用されているからこそ。プロ入りしてからこれまでのシーズンとの充実感は全く違うと強調する。
「任されている責任感がある中で、この5試合勝てていなかったことへの重圧はありました。今日もシュートは入らないにしろ、他のところで展開できたりし、最終的に勝てました。最後までコートに立たせてもらった意味でも最高の瞬間でした」
これからのシーズン終盤へ向けて、「ここ最近、外国籍選手に負担を多くかけてしまっているので、日本人選手もシュートを打つ、リングにアタックする。そのメリハリを付けていければもっと勝てると思います。最終的には優勝を目指せると思うので、この勝利を次につなげてステップアップしていきたいです」と語った田渡。
シュートを打つ、リングにアタックする日本人選手の中心的な役割を担っているのは彼である。
いよいよチャンピオンシップのフォーマットも発表されたが、セミファイナルまでの第3戦が第2戦の直後に、前後半5分の超短期決戦で行われる方式は、旧NBL勢には未体験のもの。そこは旧bjリーグ勢に一日の長がある。この方式をよく知る三遠は、上位チームにとっては怖い存在であり、その怖さをどこまで高めていけるか。そのキーマンの一人が田渡だ。
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