琉球ゴールデンキングスは60試合と長丁場のレギュラーシーズンを終えた。シーズン半ばから故障者続出もあって黒星が続き、佐々宜央ヘッドコーチが自ら「チャンピオンシップ出場も危ない状態」と表現せざるを得ないほどの苦戦が続いたが、そこから持ち直して2年連続となる地区優勝を決めている。シーズン終盤のチーム立て直し、そしてチャンピオンシップの戦いについて、指揮官に聞いた。
腰痛で戦線離脱「現場にいないで見るものじゃない」
──シーズン中盤戦からケガ人が相次ぎましたが、佐々ヘッドコーチにもアクシデントがありました。3月13日、アウェーでの滋賀レイクスターズ戦にはチームに帯同できず。腰痛と発表されていますが、実際はどのようなことだったのですか?
月曜日の朝3時とか4時にトイレに行き、立ち上がったところで力が入らなくなり、これはヤバいと。痛いというより力が入らず、這ってベッドまで行き、寝ながら練習に行けないことを伝えました。翌日に病院に行った時は車椅子です。やはり無理と診察されました。
試合は自宅で見ていたのですが、笑えないけど新鮮でしたね。選手のプレーやアシスタントの采配が不安なわけではなく、現場にいないで見るものじゃないと思いました。特にあの試合は最初につまずいて大差を付けられ、そのまま負けました。純粋に悔しかったし、終わった時は放心状態でした。
──腰痛はもともと抱えていたんですよね。このまま復帰できない怖さもありましたか?
一瞬はありました。栃木でアシスタントコーチを務めていた最後のシーズンには1カ月も病院にいたのですが、やった瞬間にあの時ほどひどくはないと感じました。あの時はすぐに自分で救急車を呼んだので。今回は滋賀戦が水曜で、金曜に状態が良くなって福岡戦で復帰できました。
──ヘッドコーチの心理的な不安が腰痛を引き起こした、ということはありませんか?
食い過ぎじゃないですか(笑)。このシーズンは本当に体重が増えたので、絶対にそっちだと思います。お酒も結構飲みますが、かと言って毎日たくさん飲むわけじゃないし、お酒がないとやっていけないという感じではありません。ただ、食うのは食っていました。選手にいつも体調管理をしっかりしろと言っているのにヘッドコーチがこれではダメですね。
「簡単に勝てるチームではないと思わせたい」
──地区優勝を決めた京都ハンナリーズとの2試合は、ともに終盤までもつれる試合に競り勝った内容でした。
良い戦いでした。この2試合は本当に一つの笛のジャッジメント、一つの3ポイントシュート、一つのポゼッションですごく状況が変わる、どっちに転んでもおかしくない試合をモノにできました。確実に勝てる展開に持ち込むのが一番ですけど、チャンピオンシップはお互いにもっと緊張感を持っていて、そんなに簡単な勝負にはならないです。まずは残り1ポゼッションで勝つか負けるかというところに持っていく。常に自分たちのやるべきことを見失わず、その状況に居続けることが大事です。
──地区優勝については、もっと早く決めなきゃいけなかったのか、あるいは途中のこと考えたらレギュラーシーズン残り5試合の段階で決めたのは早いのか。どういう印象ですか?
出だしのあの勢いだったら結構前に決まっていたかもしれないです。そのくらい自信を持っていました。ただ、そこからアクシデント、ケガ人が出た中で、プレーオフには行けないかも、と本当に思いました。それを考えれば意外に早かった。3月27日の水曜ゲーム、あの京都戦をブザービーターで勝ったのが大きかったです。あそこで負けていたらまた変わっていたと思います。
──ポストシーズンに目を向けると、優勝するためには東地区の強豪にも勝たないといけない。今は勝つために、どのような青写真がありますか?
KJ(ケビン・ジョーンズ)とジェフ・エアーズ、アイラ(ブラウン)の構成で戦ったのは千葉ジェッツだけです。栃木ブレックス、アルバルク東京と戦った時はジョシュ・スコットがいたので、今のメンバーでどこまで戦えるのかは正直に言って分かりません。自信があるともないとも言えないです。ただ、相手にもキングスは簡単に勝てるチームではないと思わせたい。チーム力は落ちるかもしれないですが、そういうくらいにはなっていると思っています
──チャンピオンシップでキングスは何をアドバンテージにして戦っていくべきでしょうか。
アドバンテージの前に、まずウチの不利なところとして得点が止まってしまうのが、東地区の3チーム、新潟、川崎と比べても一番に挙げられます。それが、ここにきて少しずつ解決できている。僕らのプラスは、ロースコアの泥試合に持ち込めるところだと思います。京都や名古屋のような得点能力の高いチームとやっても泥試合になることが多い。そういう展開に持ち込んでいきながら、第4クォーターでしっかり点が取れるようにしていきたいです。
「安易な気持ちで入ったらポロっと負けてしまいます」
──現状、3つの地区を比べると東地区のレベルが傑出して高く、不均等なのではと言われます。そういった外野の声について、西地区を戦うコーチとして感じるところはありますか。
東地区のチームを見ると日本代表に名を連ねている選手が多いのは事実ですし、個の力が高いのは間違いないです。ただ、西地区のチームと戦っている時、日本代表レベルの選手が少ないのは確かですが、それぞれが色々と戦略を練ってくる。毎回、西地区の対戦ではどういった試合の駆け引きがあるか、非常に準備が難しいことが多いです。
──ヘッドコーチにとって2度目のチャンピオンシップとなりますが、初めてだった昨シーズンの経験があるからこそ注意したいことを教えてください。
昨年は前のシーズンの成績(クォーターファイナル敗退)を何が何でも超えないといけない。そうでなければ自分が来た意味がない、という強い気持ちがありました。結果としてセミファイナルに進めましたが、でもセミファイナルに行って千葉とやった時、絶対にファイナルに行ってやろうという気持ちがあったのか。今、考えると、そこはクォーターファイナル突破に懸ける思いと比べると薄かったのかもしれません。
もちろん今回もクォーターファイナルから厳しい戦いとなるでしょうし、ここを勝つのは当たり前みたいな安易な気持ちで入ったらポロっと負けてしまいます。ファイナルに勝って優勝するまで気を緩めてはいけない。
そこは僕も一時はチャンピオンシップに出られるか難しいと感じていたところから地区優勝できたことに安堵した部分もあるのですが、でもここからは選手とともに、昨シーズン以上の成績を絶対に残さないといけない。もう一度原点に戻って「何が何でもやってやる」というメンタリティへとしっかり持っていきたいです。
──最後にチャンピオンシップへの意気込みをお願いします。
優勝を狙える可能性は1桁なのか10%なのかは分からないですけど、間違いなくあると思っています。たとえ少ない可能性であっても、そこに道はある。そこをどうこじ開けていくのか。また、よくどのチームもチャレンジャーの意識で臨むと言いますが、チャレンジャーであると同時に絶対に優勝してやるという気持ちを持たないといけません。もちろん精神面だけでなく、今回から第3戦は別日の40分勝負となりますし、戦略面の準備もしっかりしていくことが大切です。本当にここからだと思っています。
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