文・写真=泉誠一

プレッシャーをかけ続けて「最後は若干足に来ていた」

秋田から駆けつけた多数のファンがベンチ裏をピンク色に染める。残念ながら『桜咲く』とはいかず、田口成浩は27回目の誕生日を白星で飾ることはできなかった。だがその田口、悔しい完敗を喫した後も「ピンチの時こそ、チャンスが見えてくる」と明るく前を向いている。

昨日はアルバルク東京に60-78、チャンピオンシップ進出をアシストする敗戦となった。開始8秒、続いて1分12秒に2つのターンオーバーを犯した田口は、「出だしのミスから先手を取られてしまい、後手になってしまったのが悔やむところ」と自責の念に駆られる。だが、その後のタイムアウトで「やってしまったことは仕方ない、切り替えて行け」と声をかけられ息を吹き返す。

敗れはしたが、両チーム最多となる19点を挙げてみせた。

第3クォーターだけを抜き出せば、24-14と秋田ノーザンハピネッツが上回り、リードするA東京を6点差まで追い上げている。だが、第4クォーターに再び引き離された。シュートを決めきれなかったオフェンスよりも、「守る方がダメだった」と田口はディフェンスを反省材料として挙げた。

「守るべきところを守り切れなかったのがあと一歩届かなかった原因。そこがすごく悔やまれる。プレッシャーをかけて、リズムを変えようとしてディフェンスはうまくいっていたが、最後は若干足に来ていた部分もあり、判断力が衰えてしまった」

A東京のような上位チームとの対戦は一筋縄ではいかない。リスクを冒してプレッシャーをかけたことでガス欠を起こしていた。その要因を作ってしまったのも出だしのミスである。「まずは明日の出だしがカギになる」とヘッドコーチの長谷川誠が強調するように、序盤から食らい付いていき、勝機を見いだしていかねばならない。

「27歳の1年間は楽しかったな」と言うためにも残留は必須

秋田はこれまで先発を務めてきた白濱僚祐と、ベテラン水町亮介をケガで欠く正念場を迎えている。しかし田口は、「今までプレータイムが少なかった選手や新しく入ってきた若い選手たちにとってはチャンスが増える。そこで結果を残すことで新しいハピネッツが見えてくる」とポジティブに捉え、キャプテンとしてチームを引っ張っている。

昨シーズンまでのbjリーグでは3年連続ファイナル4に進出していた強豪クラブ。だが、旧NBL勢と統一したBリーグでは残留争いに巻き込まれている状況だ。相手の強さを認めながらも、自分たちの強さを出していく戦いを強いられている。

「強い相手には1対5で戦ってもダメ。チームが一つとなって立ち向かって行かなければ勝てるわけがない」とチームワークを心掛けるよう、キャプテンとして常に伝えてきた。その甲斐もあり、後半から加入したイバン・ラベネルやまだ合流して5試合目のレオ・ライオンズの2人の新戦力も、コート内ではセルフィッシュになることなくハッスルし、ベンチに戻れば立ち上がって盛り上げた。キャプテンの思想がチームに浸透しているのが見て取れる。

3月25日で27歳になった田口に、記者から1年間の抱負を求められた。「目の前にある自分のやるべきことを一つひとつクリアしていくことが結果につながっていく。また来年、28歳になる時に『27歳の1年間は楽しかったな』と言えるように悔いなく1日1日を進めていきたい」

『楽しい27歳』を迎えるためにも、まずはB1に留まらなければならない。現在リーグ15位でB1残留圏外に秋田は弾き出されている。どこが相手でも一戦必勝であり、今日もA東京とのタフゲームに挑む。

「一つの試合の勝敗が本当に大事になってくる。どんなチームでも白星をつかみにいく気持ちが今後も絶対必要。まずは次の試合で白星をつかめるように、チーム一丸となって戦っていくだけ」と田口は言う。

本日14時10分から代々木第二体育館で行われるA東京とのアウェーゲームを乗り切れば、次節はピンクの集団が背中を押すホームゲームが待っている。

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