要所で決める『質の高い23得点』で勝利の立役者に
3月26日、琉球ゴールデンキングスは、プレーオフ出場を巡り激しい争いを繰り広げているライバルである京都ハンナリーズとの対決を89-78で制した。エーススコアラーのレイショーン・テリーを欠く中、彼の不在を埋める活躍を見せたのがルーキーの田代直希だ。3ポイントシュート5本成功を含むゲームハイの23得点を挙げ、勝利の立役者となった。
この試合、琉球は序盤からリードしながら後半に追い上げられ、第4クォーター序盤に追い付かれる嫌な展開となる。しかし、66-66と追い付かれた直後に3ポイントシュートを決め、この悪い流れを断ち切ったのが田代だ。さらに残り約5分半、3点リードの場面で再び3ポイントシュートを沈めて突き放すなど、要所での得点を数多く含む『質の高い23得点』だった。
「シュートがよく当たっていたことと、喜多川さんが勝負どころで3ポイントとフリースローをきっちり決めたこと。相手に警戒していた3ポイントを多く打たれてしまいましたが、成功数を抑えることができました」
このように勝因について語る田代は、自身のパフォーマンスについて以下のように振り返る。「今日はテリー選手が出場しないことでオフェンスが少し弱くなってしまうと思っていたので、思い切り良くシュートを打とうと試合の前から決めていました。チームのみんなが崩してくれて、気持ち良くシュートを打てたのが今日のパフォーマンスにつながったと思います」
また、試合序盤はノーマークでの3ポイントシュートがエアボールになるなど、シュートミスもあった中、後半に盛り返した点については「最初のエアボールは滑ってしまいましたが、全体的にシュートタッチは良かったです。そして後半、ちょっとベンチに下がって試合を見ることで、コートに戻ってからも落ち着いてプレーできました」と語っている。
プロの激しいプレッシャーに適応して本領発揮
シーズン中盤になって黒星が増え、厳しい戦いが続いていた琉球だが、これで5連勝。2月以降を見ると、川崎ブレイブサンダース、千葉ジェッツとリーグトップクラスの相手には4戦4敗だが、この2チーム以外の相手には7勝1敗と大きく勝ち越すなど、調子を上げてきている。この上昇気流に寄与する一人が田代であることは間違いない。
専修大学時代、同世代でも屈指のスコアラーとして名を馳せた田代だが、今シーズン序盤は大学とはレベルの違うプロの激しいプレッシャーへの適応に苦戦。チーム内でのポジション争いでも後塵を拝することで、そもそもプレータイムを安定して得られない時期が続いた。
だが、1月29日の新潟アルビレックスBB戦が、彼にとって大きな転機となる。ここで果敢にゴールへのアタックを続け、キャリアハイの23得点とようやくの本領発揮を果たすと、次の試合で初の先発出場。2月以降は全試合で先発の座を守っている。
シーズン後半戦に入ってからの変化について、田代自身はBリーグへの慣れを挙げる。「プロのバスケに順応できてきていると思います。慣れることで、前はボールを持った時にアタフタしていたのが、今は例えば『ここではシュートではない、パスだ』など考える力がついてきました」
単発に陥りがちだった琉球の攻めを高めるプレーメーカー
今の田代はチームオフェンスの流れを良くすることを一番に心掛けている。「チームバスケであり、フローオフェンスがうまくいくことを最優先に考えています。残り時間を考えて、自分がタフショットを打つよりも良いシュートチャンスが作れそうならすぐにパスを出す。そして良いタイミングでパスが来た時はシュートを狙っていくことです」
このシュートセレクションの良さは田代の大きな武器となっている。苦戦していた時の琉球は、試合の流れが悪くなるとオフェンスで単発のアウトサイドシュートが目立ち、それが外れて速攻を食らってリードを広げられ、さらに焦って攻撃がより単発になる悪循環が目立っていた。
しかし、田代のシュートはパスをしっかり回した流れの中や、しっかりアタックしてからと、単発のものが少ない。その結果として、たとえシュートが外れても速攻を受けにくくなっている。本人は「オフェンスではプレーメーカーと呼んでもらって、思い切り良くプレーさせてもらっています」とチームメートのお膳立てあっての自分と謙遜しているが、彼こそがチームオフェンスをより高めるキーマンとなっている。
実際、田代が今シーズン2桁得点を挙げた試合でチームは5勝1敗。30分以上のプレータイムを得た試合で4勝1敗と、彼の働きが勝利に直結するケースが多い。琉球がプレーオフの切符を手にするかどうか、それはこれから田代が輝きを放つ試合をどれだけ増やしていけるかが鍵となるかもしれない。
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