惜しくも競り負けた千葉Jとの2試合目、後半だけで22得点をマーク
長崎ヴェルカは10月26日、27日とホームで千葉ジェッツと対戦した。優勝候補の千葉Jが相手で注目度が高いカードは2試合とも約5500人の満員となったが、長崎は連敗で終わってしまった。
ただ、初戦では攻守で全く良いところなく50-82で大敗したのが、第2戦は75-79の惜敗と、内容で大きな進歩を見せることができたのは収穫だった。長崎は前日に引き続き千葉Jの強度の高いディフェンスに苦しんで27-43で前半を終えた。このまま再びズルズルと終わってしまうかと思われたが、第4クォーターに猛追を見せ、残り1分には2点差にまで迫った。最後は千葉Jのエース、富樫勇樹の勝負強さに屈したが、長崎の怒涛に追い上げによってホームアリーナは熱狂に包まれた。
この長崎のカムバックを導く原動力となったのがポイントガードのマーク・スミスだ。1試合平均20得点以上を挙げるスミスだが、26日の初戦では強引なアタックからのタフショットも目立ちフィールドゴール16本中5本成功の11得点に留まっていた。第2戦の前半もフィールドゴール7本中2本成功の7得点と決して良くなかったが、後半に限ればフィールドゴール13本中7本成功の22得点と大暴れだった。
このスミスの変貌について、モーディ・マオールヘッドコーチは、スミスだけでなくチームオフェンスがうまく機能した結果と語る。「後半は全員がしっかりと適切な読みをして正しいプレーができていました。他の選手が正しい場所にいることで、マーク(スミス)がアタックした時、千葉さんのディフェンスを引き付けてからパスを出して得点に繋がっていました。それによって千葉さんはスイッチで守るようになり、そこでマークは(ビッグマンとの1対1となり)スピードのアドバンテージを生かして得点が増えていきました」
「自分たちのアイデンティーがよりはっきりしました」
そしてスミス本人は、「昨日の試合に比べてチームとして成長できました。自分たちがどういうプレーをしたらいいのかを明確にして、後半にカムバックできたのは大きかったと思います」と、敗戦の悔しさがある中でも手応えを得たと振り返る。「自分たちのアイデンティーがよりはっきりしました。そして千葉さんのような強豪相手では、少しでも気を抜くと差をつけられてしまう。40分間集中しないといけないことを、この週末であらためて学びました」
自身のパフォーマンスについても「後半のプレーで自信をより得ることができました」と言い、負けん気の強さを大事にしていると続けた。「僕は競争心を持った選手で、昨日の試合はタフな結果でした。今日は自分の最高のプレーを見せたかったです。千葉さんはリーグ屈指の素晴らしいチームです。そういう手強い相手に立ち向かっていき、ベストなチームを相手に自分のベストを尽くすのが好きです。常に自信を持っていますが、その上でより自信を得ることができました」
新加入のスミスは、プレシーズンの時から傑出したスコアリング能力を披露。10月19日の群馬クレインサンダーズ戦では43得点と大爆発したことで得点面に関してスポットライトを浴びたが、彼の一番の持ち味は総合力の高さだ。実際に得点だけでなく、193cmのサイズとコンタクトの強さを生かし平均6.3リバウンドと1.2スティールを挙げるなど守備面の貢献も光っている。
「僕はポイントガードですが、リバウンドを取れますし、ペイントにアタックしていきます。自分でクリエイトして得点を取るだけでなく、他の選手たちがプレーしやすいようにできる。チームメートを信じているので、キックアウトしてパスを出します。リバウンド、ドライブ、シュートと特別なことではないですが、チームが勝つために必要なことを何でもやります」
「勝つ可能性を高めるために、どんな相手にもマッチアップします」
このように自身の特徴を語るスミスだが、27日の試合では千葉Jの207cmのビッグマンであるディー・ジェイ・ホグに対し、見事なディフェンスを見せていた。この試合、ホグは前半で13得点(フィールドゴール7本中5本成功)を挙げたが、後半は5得点(6本中2本成功)に留まった。それはスイッチでマッチアップする機会の増えたスミスが、平面で激しいプレッシャーをかけてホグのレイアップを封じたことも大きかった。
ビッグマンへのディフェンスに関し、スミスはこのように語る。「これまでもホグ選手のような自分より大きい選手の守備につくことはありました。前半の終わり、彼が多くの得点を挙げたことで、後半からコーチにスイッチでつくように言われました。僕は強くて大きいガードです。彼にプレッシャーをかけ続けて、難しいシュートを打たせることを目指しました。チームが勝つ可能性を高めるために、どんな相手にもマッチアップします」
長崎は今週末、再びホーム開催となり、難敵の名古屋ダイヤモンドドルフィンズを迎え撃つ。チームの現状についてマオールヘッドコーチは、「まだ、私たちはチーム作りのプロセスにおける初期段階です。(今、負けたとしても)自分たちのことを信じています。チャレンジを通して前に進んでいる限り、3月、4月には結果がついてくるチームになっていると信じています」と、成長段階にあることを強調する。
指揮官が語るように、レギュラーシーズンは60試合の長丁場であり、最後にいかにピークを持っていけるかが大事だ。とはいえ、ポストシーズンに進めるのはわずか8チームの狭き門であり、序盤から確実に勝ち星を積み重ねていく必要もある。千葉Jに名古屋Dと強豪対決が続くとしても、連敗は避けなければならない。長崎にとって今週末はシーズン序盤における大事な踏ん張りところであり、ここで勝利をつかむためにはスミスの攻守にわたるオールラウンダーとしての活躍が不可欠だ。
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