「自分も点を取れたらチームをもっと楽にできる」
4月3日、川崎ブレイブサンダースは本拠地での三遠ネオフェニックス戦を91-67と圧勝。第1クォーターで27-14と突き放すと、そのまま危なげない展開で押し切った。
だが、試合内容を振り返るとセーフティリードであったとはいえ、集中力を欠いたプレーからのミスや簡単な失点も見受けられた。そんな悪い流れになりかけた時、激しさを持ったプレーで流れを立て直したのがベンチメンバーだった。
川崎の北卓也ヘッドコーチも「控えのメンバーが後半、インテンシティを高くプレーしてくれたことで突き放せました。結果論ですけど、前半もっと積極的に控えメンバーを出したほうが良かったのかなと思いました」とその奮闘を称える。
中でもゴール下の守備で存在感を示したのが鎌田裕也だ。この試合、第4クォーターに10分フル出場を果たすだけでなく、第1クォーターにも途中出場し、得意のディフェンスで貢献した。
北ヘッドコーチは次のように鎌田のプレーを評価する。「シェーン(エドワーズ)だと相手のビッグマンに対して当たりが少し弱いかなというところで鎌田を出しました。彼は身体を張ってコンタクトして、リバウンドを取るよりも取らせないのが非常に大きいです。オフェンスのところが少し心配ではありますが、ああやって走って点を取ってくれれば。彼を出すと、ディフェンスが締まるのは良いところだと思います」
鎌田本人は「自分の仕事をこなした感じです」と淡々としているが、自身の役割をこのようにとらえている。「ディフェンスでは外国人選手とマッチアップすることが多いので、しっかりコンタクトして相手をイライラさせる。ニック(ファジーカス)やバーノン(マクリン)が自分と交代で入った時に少しでも優位に立てるように、相手を少しでも削ることが役目です。オフェンスはみんな点を取れますが、自分もうまく合わせのプレーで点を取れたらチームをもっと楽にすることができると思います」
「出番があればいつでも行ける準備をしていました」
この日、鎌田のプレータイムは13分半と、12分半の出場時間だった3月24日のレバンガ北海道戦に続く10分以上の出場となった。昨シーズンの鎌田はプレータイムを大きく増やし、夏には日本代表候補に選出されるなど着実にステップアップしていた。ところが、今シーズンは出場しても勝敗が決した後の数分という試合も多いなど、厳しい状況に置かれていた。
「最初、プレータイムがだんだんなくなっていった時はさすがにしんどいではないですが、考える部分はありました」と率直な気持ちを語る。ただ、そんな時でも「チームのために、出番があればいつでも行ける準備をしていました。マッチアップにしても自分なりの研究、考えながらやっていました」と常に準備を怠っていなかった。
その地道な努力の積み重ねが、シーズン終盤の今になって与えられたチャンスをしっかりモノにできていることに繋がっている。彼の献身的な姿勢はファンにもしっかり伝わっており、だからこそ試合後のヒーローインタビューに彼が呼ばれた時、4000人を超える会場はこの日一番の盛り上がりを見せた。
ここ数試合の川崎はセカンドユニットが好調で、それは藤井祐眞、エドワーズがスピードを存分にいかしてテンポを上げることができている面が大きい。相手に重量級のビッグマンが来た時、鎌田がその選手に対して身体を張ることができれば、エドワーズはフィジカルコンタクトで削られることなく持ち味の機動力をより発揮できるし、ファジーカス、マクリンのどちらかを休ませることができる。わずかな時間でも、この繋ぎの役割を鎌田に任せられるとなれば、川崎の選手起用の幅を大きく広げるものとなり得る。
『縁の下の力持ち』としてゴール下で存在感を発揮
鎌田は「ビッグラインアップがうまく機能できたらもっとプレータイムが増えます。そこの連携の精度を高めて、試合に生かしていきたい」と、さらなる貢献を目指す。こういう控えメンバーの姿勢はチームの活性化に繋がっていく。
引き続き平日開催が続く過密スケジュールにあって、おそらく川崎はシーズン最終戦まで消化ゲームのない負けられない試合が続く。だからこそ、この試合で第4クォーターに篠山竜青、辻直人、ニック・ファジーカス、長谷川技の中心メンバーが揃って出場なしと温存できたのは大きい。川崎が勢いに乗ってチャンピオンシップに突入するためにも、縁の下の力持ちとして鎌田がゴール下で存在感を発揮することは少なくない意味を持つ。