写真=Getty Images

チームプレーに徹して封印していた個性を求められる

2016-17シーズン開幕をニックスで迎えたブランドン・ジェニングスは、キャリア7年で通算フィールドゴール成功率38.9%、3ポイントシュート成功率34.8%を記録しているシューターだ。もちろん、ポイントガードの彼はプレーメークにも優れているのだが、ニックスではクエスチョンマークが付くような判断も少なくなく、決められる可能性が低いプレーを選択していた印象が強い。

チームが期待していた能力を発揮できなかった結果、ジェニングスはニックスから解雇され、それから程なくしてウィザーズと契約を結んだ。

ウィザーズでもニックスと同様、セカンドユニットのポイントガードとして起用されているが、合流後の試合中、指揮官スコット・ブルックスから意外な助言をもらったと、ジェニングスが『CSNMidatlantic.com』に明かした。

「試合のタイムアウトの際、コーチから『いつになったらシュートを打ち始めるんだ?』と言われたんだ。それで自分は『手が滑らなければ打っていましたよ』と答えた。自分はエアボールになるのが好きじゃないからね。そうしたらコーチは、『分かった、次の試合からはシュートを打て』と言ったんだ」

ジェニングスは元来シュートを多投するタイプの司令塔だ。1年目の2009-10シーズンには、2009年11月14日のウォリアーズ戦でバックスの新人選手としては球団記録の1試合55得点をマークしたのだが、同試合では実に34本ものフィールドゴールを放ち、8本中7本の3ポイントシュートを含む21本を決めた。

当時から「シュートを打ちすぎる」との批判も多く、その後のバックス、ピストンズ、ニックスではシュートを控えるよう指示され続け、左足のアキレス腱断裂という重傷を経てシックスマンに転向したことも重なり、本人も意識しないうちに『チームの歯車』になることを優先していたようだ。

しかし、ブルックスはジェニングスの長所が積極性にあることを見抜き、シュートを打つように指示したのだ。

ジェニングスは語る。「これまで『もっとシュートを打て』と僕に指示したコーチは彼が初めてだ。リーグでプレーするようになった当時は、ポイントガードがシュートを多投する傾向は好まれていなかった。それが今では『打て』と言われるのだから、昔の自分に戻らないといけないね」

流れるようなオフェンスを好むブルックスは、ジェニングスにだけではなく、ブラッドリー・ビールにも1試合で最低20本の3ポイントシュートを打つよう奨励している。選手が自信を持って能力を発揮できる環境を作ることに長けるブルックスのスタイルが生かされた結果、ウィザーズは東カンファレンス3位に躍進。

ジェニングスが今後、シュートを多投することでパフォーマンスを上げ、先発ポイントガードのジョン・ウォールの出場時間を抑えられるだけの働きをしてくれれば、プレーオフ進出の可能性が高いウィザーズにとっては大きなプラスになる。

チームスポーツとはいえ、自己顕示欲が強いNBAプレーヤーは少なくない。たいていの場合、自分のプレースタイルに合致しない指示をされて受け入れる選手は稀で、個の力を発揮しようと逆効果になるケースもある。ところがジェニングスの場合、シュートを打つように指示されてからも特に1試合のシュート数が増えている様子は今のところ見られない。むしろ、パスを優先しているように見えるのだから不思議だ。

指揮官からの『GOサイン』を受けたジェニングスが、自ら眠らせていた爆発力を発揮できるかどうか、今後のパフォーマンスに期待したい。