トレイ・ヤング

「現役引退する時にどれだけ勝ったかで評価は定まる」

ポール・ジョージがホストを務める『Podcast P』にホークスのトレイ・ヤングが出演。彼はこのオフを『父親』として過ごしている。「息子は2歳で、8カ月の娘もいる。オムツ交換は当然やっているよ。僕には12歳年下の弟がいるから、弟が生まれた頃からそういった役割はお手の物だけど、自分の子供となると全く違うね。人生が変わるよ」と、トレイはリラックスした表情で語る。

そして話題はバスケへ。ジョージはいきなり、デジャンテ・マレーとの関係というセンシティブな質問を投げかけた。2022年オフに加入したマレーとトレイのコンビは機能せず、今オフにマレーがペリカンズにトレードされることに。このコンビについてトレイは「良い面と悪い面があった」と説明を始めた。

「正直に言うけど、悪い面は勝てなかったこと。良い面は生涯の友情を築けたことだ。僕らの性格や考え方はすごく似ていて、バスケに限らず家族のような付き合いができた。でも勝たなきゃコンビは続かない。2シーズン続けて結果が出せなかった以上、ニュースになる前からもうコンビ解消だと分かっていた。机上の計算では完璧なコンビだったと思う。実際に彼は本当に良い選手だったけど、上手く噛み合わなかった」

その後もジョージは、親密であるからこそセンシティブな話題を持ち掛け続ける。トレイはNBAでの6シーズンで常にホークスのエースとして活躍し、3度のオールスター選出など輝かしい経歴を残しているが、彼を嫌う者、評価しない者も多く、点は取るがディフェンスのできない選手、自己中心的な選手、チームを勝たせられない選手、というイメージがある。

「僕のことを自己中心的な選手だと見ている人は間違いなくいる」とトレイは言う。「でも、全員がそうだとは思わない。真実が何かを確かめるには、僕と一緒にプレーする選手に聞いてみるべきだ。正直、なぜそんなイメージを持たれるのかは分からないけど、勝てば変わるものだと思っている。プレーオフで勝ち、カンファレンスファイナルに進出するようなことになれば、誰もそんなことは言わなくなる」

「知名度や人気はもう気にしなくなった。本当の意味で僕に注目し、僕を理解しようとしてくれるのは、僕を応援してくれる人たちだ。だから過小評価されているとか嫌われているとかは考える必要がないんだ。結局のところ、現役引退する時にどれだけ勝ったかで評価は定まるものだと思う」

彼のことを最も嫌っているのは、間違いなくニックスのファンだ。マディソン・スクエア・ガーデンにホークスがやって来るたびに彼らは『f**k trae young!!』と声を合わせて叫ぶ。最近ではホークス戦ではなくても、ニックスが大きな勝利を収めて気分が良い時、ファンはこのチャントで盛り上がる。

きっかけは3年前のプレーオフだった。8年ぶりにプレーオフに進出したニックスのファーストラウンドの相手はホークスで、ヤングの勝負強さを知るニックスファンは『f**k trae young!!』のチャントで彼を揺さぶろうとした。それでも第1戦、ヤングはブーイングをモノともせず決勝フローターを沈めた。続く第2戦ではコートサイドの観客から唾を浴びせられる事件があったが、それでも彼は『氷』のような冷静さでシュートを沈めていった。極め付けはシリーズが決着した第5戦、試合終了間際にニックスの敗退を受け入れた観客たちが奮闘を続けた選手たちに拍手を送る中、ニックスのロゴの位置からダメ押しのディープスリーを沈めたトレイはニックスファンに向かって深々とお辞儀をした。

ここからトレイはニックスファンの『宿敵』となった。これに対して彼は「最高に面白い」と笑みを浮かべる。「こんなのは見たことがないし、二度と起きないだろう。テーブルオフィシャルのすぐ後ろで、10人ぐらいのニックスファンが僕に中指を立てていた。それが第1クォーターの残り10分、まだ何も起きていない時だよ。僕は黙ってその女の子の隣にいる父親を『クールだね』って感じで見ていた。ファンとの心理戦はそうやって始まる。観客を眺めてただ笑っている僕の写真はたくさんある。それが僕のやり方なんだ」