富山グラウジーズ

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

負けられない両者、一歩も譲らない大熱戦に

ライジングゼファーフクオカが富山グラウジーズを飯塚第一体育館に迎えた第2戦。残留を目指す福岡とチャンピオンシップを狙う富山、目標は違えど負けられない両者の激戦となった。

立ち上がりは両チームとも良いシュートチャンスを作り出せず、外国籍選手の強引な個人技でしか得点が動かない重い展開。こうなると重量級センターのジョシュア・スミスを強調する富山に分があるかと思いきや、そのジョシュアが開始4分半でファウル2つとなりベンチに下がる。

いきなりゲームプランが崩れかねないアクシデントだが、これを山田大治がカバーする。「まずは落ち着いてディフェンスをやることを意識しました」と話す37歳の大ベテランが、マーカス・ブレイクリーに付き、リングへのコースを的確に抑えることでアタックを許さない。攻めではゴール下に飛び込む水戸健史に合わせる絶妙なアシストを見せ、ジョシュア不在で逆にペースを上げる。

だが福岡も一歩も引かない。富山がペースをつかみ始めたところで城宝匡史が2本連続で3ポイントシュートを決め、津山尚大も続いて一気に差を詰めて、第1クォーターを22-24で終えた。

第2クォーターに入ると、福岡がトランジションに持ち込む。レオ・ライオンズにタフショットを打たせ、リバウンドを押さえたブレイクリーが力強いボールプッシュで一気にフィニッシュまで持ち込む。攻め気が出すぎたところを阿部友和の3連続アシストで突かれ、大塚裕土の3ポイントシュートで反撃されるも、リードを保って前半を終えた。

宇都直輝

あきらめない宇都の全力ディフェンスが均衡を破る

スコアは拮抗していたが、狙いどおりのトランジションバスケットに持ち込んでリードしている福岡のゲーム、と呼ぶべき展開。ところが後半の福岡は立ち上がりからエナジーを出せない。前半のうちからファウルがかさんだ影響で慎重になりすぎたのか、ディフェンスの強度が落ち、それに引きずられてオフェンスも停滞。

指揮官のボブ・ナッシュは「プッシュしなければいけないのに、やりきれなかった。無理なシュートを打ってしまい、それが決まらないことで気持ちが落ちてしまう、そういった悪循環があった」と、このブラックアウトを振り返る。

そして第3クォーター残り6分半、ブレイクリーが宇都直輝からスティールに成功。一気にリングに向かう。景気の良いファストブレイクでチームの士気を立て直し、流れを呼び戻すビッグプレーかと思われたが、それ以上のスピードで駆け戻った宇都がコースに入り、オフェンスファウルを引き出す。ブレイクリーはこれで個人4つ目。この時点で55-53とわずか2点リードの富山が、これを機にたたみかける。第3クォーターの最後を葛原大智のバスケット・カウント、阿部がブザーとともに沈めた3ポイントシュートで締めて、73-60までリードを広げた。

第4クォーター、福岡は選手個々が盛り返そうと奮闘するも、チームとしてまとまらない。積み重なったジャッジへの不満にキレてしまったエリック・ジェイコブセンがファウルアウトとなり、残ったブレイクリーももうファウルはできないため攻守に本来の力強さが出せない。その分まで身体を張った波多野和也、遥天翼がファウルアウトになって万事休す。終盤は一方的な展開となり、最終スコア101-74で富山が勝利している。

ジョシュア・スミスはファウルトラブルでプレータイムが24分と短かったがゲームハイの21得点と結果を出した。福岡にファウルがかさんだ一方で富山はコントロールできており、特にビッグマンのファウルの差が勝敗に直結したと言える。

マーカス・ブレイクリー

「ファンに応えるという意思を見せることが大事」

結果的に富山は連勝を4に伸ばし、ワイルドカード下位でのチャンピオンシップ進出圏へと浮上した。連勝した相手は残留争いの最中にいる滋賀レイクスターズと福岡。ここから先、上位チームを相手にどう勝っていくかが富山にとっては重要だが、それを聞かれた指揮官ロナルド・ベックは「福岡も良いバスケットをして、簡単に勝てる相手ではなかった。相手のことを考えすぎるより、過密日程の中で自分たちのバスケットをするのが大事」と語る。

今週末にはワイルドカード下位を争うシーホース三河との直接対決が控えているが、その前の水曜ナイトゲームの三遠ネオフェニックスに勝たなければ意味がない。しかも、その三遠は今節で三河に連勝しており勢いがある。また、その後は2週連続で『水金土』と4日で3試合が組まれている。相手よりも、この『超過密日程』の中でいかに自分たちのパフォーマンスを落とさないかにフォーカスするのは正しい。

一方の福岡は痛い連敗。福岡にとって納得いかない判定もあったが、ボブ・ナッシュは「コールに対して文句を言っても始まらない。受け入れた上で戦わなければならない」と断言。「ファンの素晴らしい声援に応えられなかった。勝つことも大事だが、ファンに応えるという意思を見せることが大事」と、劣勢でも戦う気持ちを持ち続けることの重要さを語った。