「降格しても上昇の空気を作り出しているのが外側の私にも伝わった」
悪夢のB2降格を経て、昨シーズンはB2優勝&B1復帰と歓喜に沸いた滋賀レイクス。今シーズンは新たに前田健滋朗ヘッドコーチを招聘し、B1でのリスタートを切る。国内トップリーグやオーストラリアでアシスタントコーチを歴任し、直近2シーズンは長崎ヴェルカでヘッドコーチを務めた若き指揮官に話を聞いた。
――まずは就任の経緯を教えてください。
滋賀はクラブとして積み上げてきた16年の歴史があるクラブです。降格を経験して非常に苦しい状況にあったと思いますが、その状況からもしっかりとクラブ一丸となって上昇の空気を作り出しているのが、外側にいた私にも伝わってきました。その中で、今回いろんなタイミングが重なり、お声がけをいただきました。オーナーの中山(太)さんや代表取締役の原(毅人)さんから、クラブに対する思いをうかがい、もう一度ヘッドコーチをやらせていただくチャンスいただき、お互いにより良くしていきたい、自分もチャレンジしていきたいという思いから、今回ご一緒させていただくことになりました。
――滋賀はクラブのビジョンを外に向けて明確に打ち出すクラブだと感じています。その辺りも惹かれた要因でしょうか?
ビジョンが明確だったというところがありますし、地域にしっかりと根付いて、滋賀を盛り上げていきたいという思いが非常に強いというのは、自分の中でクラブを決める決め手でした。いかに地域の皆様に貢献できるかということを、これまでもすごく大事にしてきました。そこに対する貢献の一部になりたいと思ってコーチを続けているので、その部分も合致したという感じですね。
――オーストラリアでアシスタントコーチをされていた時に「プロスポーツクラブの存在意義を考えさせられた」という言葉を拝見したことがありますが、その影響は大きいでしょうか?
非常に大きいです。私がオーストラリアに行かせていただいた時は、8チームしかありませんでした。環境としても日本の方がはるかに良かったです。日本は環境も良く、チーム数も今や54チームあり、世界中のどの国を見ても日本しかないです。これだけの選手やスタッフがバスケットボールで生活させていただけているというのは、バスケットボールの強さではなく、その国の人口や経済がしっかりしているから成り立つものです。なおかつ自分が生まれて育った国が、そうであることは非常に恵まれていることだと思います。だからこそ、日本全体の活力に貢献していきたいという思いが強いです。
「それぞれの選手がチームをより良くするための発言や行動をしていって欲しい」
――ロスターの編成やリクルートについては、どの程度関わりましたか?
我々のマネジメントチームは原さん、中山さん、GMの眞庭(城聖)さん、私の4人体制です。それぞれの視点からチームがより良くなるために編成しましたが、私なりの意見を常に共有させてもらっています。それぞれの「こうやったらチームがより良くなるだろう」というアイディアを集約しながら進めている状況です。
――どのような部分を重要視しましたか?
クラブとしての考え方や方向性があるので、私の声だけが強く反映された訳ではないですが、これから滋賀が積み上げていく中で、特に今シーズンB1で何を残せるか、滋賀はこういうチームだというインパクトを残すことが重要だと思っています。成績面でも内容面でもそうですが、それがブースターやスポンサーに感じてもらえるようなところを非常に考えていました。その部分で既存の選手ももちろんそうですし、どの組み合わせがチーム力が最大化されるかを常に考えて、こういった選手がいいのではないかという話はさせてもらいました。
――日本人選手は若手が多いという印象です。シーズンを通じた成長が期待できるチームですね。
もちろん若手選手の伸び代というところもあるのですが、若手でもベテランでもしっかりと成長マインドを持っている選手やチームは、シーズンを通して成長していけるなと思っています。若いからこそ特別という思いはないですが、シーズン中も常に毎日良くなり続けたいと思っています。ただ、若い選手はどうしてもミスを恐れてしまいます。積極的に自分の持っているものをどんどん出していって欲しいです。ミスを恐れるのではなくて、手に入れたいものを手に入れるために思い切ってやって欲しいです。
――選手にはどのようなリーダーシップを望みますか?
リーダーシップについてはそれぞれの形があると思いますし、これが正解というのもないと思っています。ただ、周りに良い影響を与えられる選手やスタッフというのは素晴らしい人材です。いかに良い影響を与えられるか、周りをより良くできるかという行動が最終的にリーダーシップに繋がると思っています。ですので、それぞれの選手がチームをより良くするための発言や行動をしていって欲しいです。それがリーダーシップだと私は思っています。
――練習で「自身やチームの可能性を信じる」という言葉を使っていました。メンタルについても言葉をかけることを重要視していますか?
私自身、ここ2年ヘッドコーチをやらせていただいてマインドや可能性への発言というのはかなり少なかったです。ただ、滋賀に来たということもそうですし、この2年間で私が学んだこととしては選手自身に可能性を信じてもらうことや、チームの可能性を感じてもらうことが、リーダーとしてやるべきことだと感じました。少しずつ私のコーチとしてのやり方が変わってきたというところも大きいと思います。
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