「僕にとって、これ以上相応しい場所があるだろうか」
現役引退を表明してからわずか数週間で、ケンバ・ウォーカーはセカンドキャリアをスタートさせた。キャリアの全盛期をエースとして過ごしたホーネッツに戻り、育成担当コーチとなった。
ホーネッツはもう8シーズンもプレーオフから遠ざかっており、ドラフトで有望な若手が加入しても、その才能を生かしきれない。新たな指揮官チャールズ・リーの下、選手育成の体制を見直すにあたり、ケンバに白羽の矢が立った。コーチとしての経験はないが、それでもホーネッツ時代に彼が見せたリーダーシップ、日々の努力を怠らない姿のおかげで、このチームの誰もが彼の帰還を歓迎している。
取材に応じたケンバは「人生の大きな転換期を迎えた時に、自分のキャリアでも最高のプレーができたチームからチャンスをもらえた。本当にうれしい」と語る。
2011年のNBAドラフト1巡目9位で指名を受けて加入したホーネッツでは8シーズンを過ごし、オールスターへと成長した。自分自身の成長について「ホーネッツのおかげだと思っている」と彼は言う。「初めてここに来た日から、プレッシャーを感じることなく自分の成長に集中できた。ミスを恐れずプレーできたのはここでプレーできたからだ」
NBAで最後にプレーしたのは1年半前のこと。最後のシーズンはフランスのモナコで過ごした。「膝のケガがあって、まずはモナコでシーズンを最後までやり遂げることを目標にした。シーズンが終わって1週間で続けるか引退するかを決めようとしたけど、決心がつかなかった。チャールズ・リーから連絡をもらったのはその時だ。彼とは少し前からいろんな会話をしていたから、ホーネッツが新たな体制に変わることは分かっていたし、僕は新しい挑戦を求めていた。ホーネッツが特別な何かをスタートさせるなら、その一員になりたかった。僕にとって、これ以上相応しい場所があるだろうかと考えたよ」
彼が一番に考えるのは、今のチームのエースであるラメロ・ボールのことだ。22歳ではあってもすでに4年のキャリアがある彼は若手とは呼べないかもしれないが、「コートで見ているだけで分かるけど、ラメロは特別だ」とケンバは言う。「ホーネッツは大きなポテンシャルを秘めているけど、それを発揮するには選手たちが健康を維持するのが最も大事になるし、ラメロが健康であればチームは大きなことを成し遂げられる」
若い選手たちにプロフェッショナル精神を教えるのはケンバだけの役割ではない。新加入のセス・カリーとタージ・ギブソンは、経験あるベテランとして努力と規律の大切さを若手に示すことになる。
「若手が選手として成長し、より優れた人間になるのを助けるために、できる限りのことをしたい」とケンバは言う。「正直、その方法論はまだ分からないんだ。僕はコーチになろうと思ったことさえなく、今はただチャンスを与えられただけだからね。でも何人かの選手がすでに僕にトレーニングのアドバイスを求めてきた。僕は自分の経験を伝え、できる限り彼らの疑問に答えようとしている」
「正直、オファーをもらった時はどうなるか想像できなかったけど、若い選手たちと体育館にいるのは本当に楽しい。やり方が探り探りだけど、このチームを良いものにしていきたいんだ」