篠山竜青&辻直人

取材=古後登志夫 文=鈴木健一郎 写真=太田勝也

前節は福岡に大苦戦を強いられながらも貴重な連勝

前節、川崎ブレイブサンダースは敵地でライジングゼファーフクオカと対戦した。下位に沈む福岡は格下だが、B1残留へ向けた闘志に飲み込まれかけた。本来であれば完勝したい相手に大苦戦を強いられたのは反省点だが、今は結果が大事。中地区首位の新潟アルビレックスBBがまさかの連敗を喫したのに対し、川崎は辛勝を2つ重ね、ゲーム差を3へと縮めた。

篠山は「第1戦は失点が非常に多くて、そこが反省点でした。今日は75点以下に抑えることをチームの目標にして、最後は76失点でしたが、いつもこれぐらい抑えられるようにしていかないといけない。まだまだ反省点もあるので、この3月でステップアップしたい」と語る。

辻も、連勝という結果よりも苦戦した内容へと目を向ける。「後半の出だしが悪く、最後までズルズル行ってしまった。なんでこうなったかチームで話し合って、次節に改善したい」

「昨日、僕は全然チームの力になれなかったので偉そうなことは言えないんですけど」と、第1戦で無得点とブレーキになった辻が言葉を続ける。「悪い意味で相手に合わせてしまいました。自分たちのオフェンスやディフェンスがどのチームに対しても発揮できないと強いチームにはなれません。良かったり悪かったり、その差が少ないのが強いチームだと思います」

篠山竜青

篠山「代表の良いところをうまく川崎に持ってこられた」

篠山と辻、そしてニック・ファジーカスの日本代表トリオは川崎にとって大きな武器だが、主力3人を代表活動で頻繁に欠くことは、チーム力を思うように高められない要因にもなる。いかにしてマイナスを減らし、プラスをより多くチームに還元するかは重要な課題だ。

今回、代表から戻った辻がチームに合流した際に、チームメートに語ったことを篠山が明かしてくれた。「代表が勝ち星を伸ばしていることもあって、すごく良い雰囲気で練習をやれていた感覚がありました。そういう緊張感の高い練習の雰囲気を経験して戻って来て、川崎ではまだまだ突き詰めないといけないところがあると、辻がみんなに伝えてくれました」

「このままじゃいけないよと練習が終わった後に話してくれて、そこから練習の雰囲気も変わったと思います。そういう意味では、代表の良いところをうまく川崎に持ってこられた感触は僕個人としては持っています」と篠山は言う。

「チームとしても個人としても、置かれている立場の自覚が足りなかった」という内容のことを辻は川崎のチームメートに伝えたそうだ。「実際に、そこからチームの雰囲気はすごく変わったと感じます」と辻もその効果を語る。

辻直人

辻「オフェンスがしっかりできないとディフェンスに響く」

オフェンスもディフェンスも、まだまだ改善の余地がある。これからチャンピオンシップに向けてチームを完成の域に持っていかなければならない中、2人はそのカギをこう考えている。

篠山は「まずはもっとターンオーバーを少なくすること。ディフェンスからファストブレイクが出る時が一番強い時間帯だと思うので、ディフェンスを固く締め続けること。リバウンドをしっかりと1本で取ること。ここをどれだけ突き詰めていけるか」と主にディフェンス、川崎が本来持ち味としている手堅く隙のない試合運びについて語る。

一方で辻は、そこから一歩踏み出してオフェンスをカギと見なしている。「ファストブレイクを出す時のターンオーバーがいくつかあって、そこで流れに乗れませんでした。このチームはすごくディフェンスが大事と言われますけど、オフェンスがしっかりできないとディフェンスに響くのはチーム全員が分かっています。オフェンスはもっともっと改善するところがあって、チームとして強いオフェンスができると思うので、この3月中に改善したい」

チームの顔である篠山と辻の働きが川崎復活のカギになるのは間違いない。それでも篠山は「僕と辻が一緒に出ていると失点が多いとコーチから指摘されたことがあるので、そこを改善できるように」と語った。こう言葉にしたからには、やってくれるのが篠山であり、辻であるはずだ。

レギュラーシーズンも残り16試合。優勝候補の川崎としてはチャンピオンシップに意識が向きそうなものだが、北卓也ヘッドコーチは「チャンピオンシップのことはまだ考えません。中地区で1位を取る、そのための目の前の試合に集中します」と気を引き締める。

今夜はホームに横浜ビー・コルセアーズを迎える神奈川ダービー。篠山と辻がここで挙げた課題をクリアできるかどうかに注目したい。