文=大島和人 写真=B.LEAGUE

「アールティとサクレのところに改善の余地がある」

サンロッカーズ渋谷は25日、京都ハンナリーズ戦を75-66で下して3連勝を決めた。勝率の近い相手を下し、星も19勝19敗と五分に戻した。とはいえBTテーブスヘッドコーチが「ちょっと変な、気持ち悪い試合だった。オン・ザ・コート2の時間帯に、最後までオフェンスのリズムをつかめなかった」と振り返るように、チームには戦い方の部分で小さくない『モヤモヤ』が残っている。

SR渋谷はチャンピオンシップ進出を目指すチーム。しかし現在は中地区の3位で、チャンピオンシップ出場8枠の最後の座をギリギリで争っている状況だ。開幕時の期待値を下回っていると言わざるを得ない。

伊藤駿とともにチームのキャプテンを任される広瀬健太は、チームの課題を特に強く感じている。SR渋谷は15-22のビハインドで京都戦の第1クォーターを終えたが、広瀬は試合の出だしをこう振り返る。

「ボールの回りが悪くなっていて、自分たちがセットオフェンスに入るまでに時間もかかった。京都さんは時間を使って攻撃をするので、それに合わせてしまったところがある。気づいたら自分たちの攻める時間も少なくなって、何も起きずにタフなショットを打つということで最初から入ってしまった」

22日の新潟アルビレックスBB戦を体調不良で欠場したロバート・サクレが京都戦で復帰した。ただ「そこに対しての意識が強すぎて、ボールの回りが悪くなった」と広瀬は説明する。SR渋谷は1月にサクレが加入するまで人とボールがスムーズに動き、オープンな形を作って外からのシュートを多投するスタイルだった。

もう一人のインサイドプレイヤーであるアールティ・グインは、ミドルシュートや3ポイントシュートを強みにしている。そんなアウトサイドを強みとするチームに、直近までNBAでプレーしていた強力なセンターが加わったのだから、補強の狙いとしては実にロジカルだ。

ただ広瀬は率直に課題を説明する。「アールティはものすごくシュートが上手で、アウトサイドを中心に攻めるビッグマン。サクレはインサイドを主戦場にしているビッグマンということで、本当はそこで住み分けができる。中と外で分業できるはずなんですけど、それがなかなか上手く生きてこない。自分たちのオフェンスは、アールティとサクレのところに改善の余地があると思います」

チャンピオンシップ進出へ、早急な問題解決が求められる

端的に言えば人がどう動き、ボールをどう動かすか、というところに課題がある。広瀬はこう続ける。「フリースローラインより下、ミッドウェイにボールが行かない。行ってもそこから外にボールが出てこないことが続いている。ディフェンスが強い、インサイドが強い、プレッシャーが強いチームからしっかり2点を取れる、なおかつ良い状況判断でノーマークの選手を作って3ポイントシュートを打てるように、システム、戦術、戦略を見直さなければいけない」

キャプテンとしてサクレへの要求もある。「今やっているシステムは4番5番の選手の『気づき』がものすごく必要。味方が困っているなというところを助けてくれる、何か一つ手を出してくれるというところが必要だと思う。そこの考え、ひらめき、意思の疎通が足りず、特に今日の出だしのところはチームのバスケットを重たくする要素になった」

広瀬はチーム全体についても、ややシビアな評価を口にする。「練習中や試合から単に映像を見るだけでなく物事をしっかり言えるかどうか、そこだと思います。シュートが入らない、シュートセレクションが悪い、パスが回らない、ターンオーバーが多い、だけじゃなくて『なぜそうなったか』というところの根本的、具体的な打開策が見えていないので、この順位になっている」

プロならば当たり前だが、彼らは連戦の中で立て直さねばならない。広瀬が「勝つということはチームが浮上する一番の薬」と言うように、結果を何とか出すことが未来につながっていく。勝率が五分に戻ったことは、チームを立て直すための前向きなエネルギーになるだろう。

とはいえSR渋谷がシビアな状況に置かれていることは間違いない。サクレはチームのスタイルに影響を及ぼすほどのインパクトを持つ存在で、お互いがアジャストするためには時間もかかる。そこは予想されていた部分だ。一方でシーズンは間もなく終盤戦で、現時点ではチャンピオンシップの出場すら危ぶまれる成績だ。

サクレをどうフィットさせるのか。チャンピオンシップに向けた道のりをどう開くのか。広瀬は課題から目をそらすことなく向き合っている。その難問の答えを見つけられるか、広瀬とSR渋谷は26日も青学記念館で京都ハンナリーズと対戦する。