自身に向けられた歓声に「うれしかったです」
シーホース三河の生原秀将にとって、先週末の栃木ブレックス戦は特別な試合だった。Bリーグ初年度に特別指定で栃木に入団した生原は、B1優勝を経験。プロ本格挑戦となった2年目は、田臥勇太に続く2番手として自分の居場所を確保した。そして、3年目の今シーズン、栃木から三河へと新天地を求めた彼にとって、ブレックスアリーナに戻る初めての試合だった。
比江島慎にとっての古巣対決も注目を集め、ブレックスアリーナは2日連続で最多観客動員数を更新する大入りに。「本当にたくさんのお客さんが入ってくれて、うれしかったです」と、超満員の会場が作り出す雰囲気に生原はあらためて感じるものがあった様子。スターティングメンバーが発表された際、生原には栃木ファンから大声援が送られた。
だが本人は「意識してしまうとあまり良くないと思って、逆に意識して無意識にするように努めました」と、あえてリアクションを抑えたという。
金丸晃輔と桜木ジェイアールの不在が響いた三河は連敗を喫した。生原も第1戦で2得点4アシスト、第2戦で3得点4アシストと目立った活躍はできず。それでもコントロールを意識した初戦に比べ、第2戦ではペイントタッチする機会が増えたことを収穫に挙げた。
「シュートに繋がらなくても、できるだけゴール下までドライブしたり、そこからキックアウトのプレーを増やすことができました。栃木のディフェンスに対して、ペイントエリアまで侵入できたというのは収穫でした」
自分に大歓声を送る栃木のファンに自身の成長を見せたいとの意気込みが空回りに終わり、生原は肩を落とす。「成長した姿を見せたかったので、この2日間は悔しさが残ります。自分の良さはハードなディフェンスやゴールにアタックすること。うまく表現できず悔しいです」
悩める若き司令塔「正直、プレーに迷いがある」
三河に移籍したことで生原は先発に据えられた。しかし、栃木で見せたようなインパクトは残せていない。チームが変わればバスケットのスタイルも、求められる役割も変わる。以前のような思い切りの良い、アグレッシブなプレーを見せれなかったのだから、悔しいのは当然だ。
生原もそんな現状に「正直、プレーに迷いがある」と、本心を明かした。「どのタイミングで僕がアタックするべきなのか。ここはインサイドだったりシューター陣にボールを配分するべきなのか。そういったところで迷いがあります」
迷いが生まれるのも仕方がない。生原が移籍したタイミングは、常勝軍団の中心にいた比江島と橋本竜馬の2人が抜けたタイミングであり、チームもまた新しい方向性を見いだそうともがいている。変革の時を迎えたチームの司令塔を務めることはもちろん容易ではない。
鈴木貴美一ヘッドコーチも、「発展途上というか、初めてスタートをやってすべてが勉強のような形です」と、その点は理解している。
それでも、すべてがネガティブなわけではない。苦悩する中で栃木では味わえなかった充実感も確かに感じている。「栃木では、特にナベさん(渡邉裕規)と鵤(誠司)さんと出ることが多かったです。3ガードで、誰がトップでコントロールしても良かったですが、彼らがメインでコントロールしていました。でも今は、試合に出ている時の1番は僕しかいません。そこでトップでどうコントロールしていくかは、ブレックスでは気づけなかった部分です」
三河に移籍したことで磨かれるコントロール力
筑波大時代、生原は不動のポイントガードとしてチームを日本一に導いた。栃木に加入し、プレースタイルの幅は広がったが、やはりトップの位置からゲームコントロールをする、純粋なポイントガードとしての役割が最もしっくりくるのだろう。
自ら下した大きな決断に対し、「この選択は間違ってなかったと思います」と言い切る生原。ワイルドカード2位でのチャンピオンシップ進出を狙うのが現実的な三河だが、再び常勝軍団を作り上げていくためには生原がさらに経験を積んで成長し、チームを牽引し、ゲームを支配していくことが求められる。
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