金近廉

「接戦が続いた後半に自分の出番がないのは、そういうことだと感じています」

バスケットボール男子日本代表は6月22日、23日にオーストラリア代表と強化試合を実施し、初戦を89-90で落とし、第2戦を95-95の引き分けで終えた。今回の連戦はパリ五輪へ向けてチーム力を高める貴重な実戦の場であるとともに、代表メンバー12名を決める選考会でもあった。そのため、初戦と2試合目で4名の選手を入れ替えるなど、多くのメンバーを試した。

2試合ともに出場したのは8名だったが、その内の7名はワールドカップ2023で平均15分以上のプレータイムを得ていたチームの主力だ。唯一、金近廉だけがワールドカップに出場していない選手で2試合ともコートに立った。振り返れば今回の北海道遠征の前、代表メンバーは20名から16名へと絞られたが、そこでカットされたメンバーは原修太、須田侑太郎、今村佳太と、代表においては金近とポジションのかぶるBリーグのトップ選手たちも含まれていた。

このように金近は、トム・ホーバスヘッドコーチから大きな期待を寄せられていた。しかし、この2試合の金近は初戦が13分36秒のプレータイムで0得点1リバウンド、2試合目も7分26秒のプレータイムで0得点1リバウンドとインパクトを残せなかった。世界と比較した場合、サイズ不足の日本にあって、196cmのサイズと非凡な身体能力を備えた金近は、大型ウイングとして貴重な存在だ。しかし、2日間で0得点が示すように、オフェンス面で完全に沈黙したのは大きなマイナス材料だった。

Bリーグ屈指のウイング陣との競争に勝ったように、今回の強化試合までの金近のパフォーマンスは良かった。「チャンピオンシップが終わってすぐに代表の活動に移ったので、自分としてはコンディションも良く、この1カ月間くらいすごく手応えもありました。トムさんもそこを評価してくれて、メンバーに入れてくれていたと思います」

このように本人も好感触を得ていたが、「やっぱり試合で何もできなかったら本当に意味がないと思います」と語るように、肝心の実戦でアピールできずに終わってしまった。初戦の敗戦もあり、第2戦のホーバスヘッドコーチはトレーニングマッチではあったものの勝利にこだわった采配をした。後半は出番なしに終わったことを、金近は冷静に受け止めている。「今日は特にチームとしても絶対に勝たないといけない試合だったと思います。 そういう中で接戦が続いた後半に自分の出番がないのは、もうそういうことだと感じています。やはり、あの場面で出られるような選手にならないといけないです」

金近廉

「自分の中で納得できない形で終わってしまった。本当に悔しいということに尽きます」

21歳の若武者は「ただ、起用してもらえるパフォーマンスを昨日の1試合目と今日の前半で出せなかったのは自分の責任です」と、己にベクトルを向ける。「これを重く受け止めるというか、やっぱり改善していかないといけないと思います。自分の中でチャンスを生み出せるところはありました。うまく試合の中でアジャストできず本当に悔しいです」

決められなかったのは残念だが、1試合目より2試合目の方がシュートに積極性はあった。それは千葉ジェッツの同僚、富樫勇樹のおかげもあったと感謝を忘れない。「まずはキャッチ&シュートのところでチャンスを探そうと思っていました。(3ポイントシュート)2本は、両方とも勇樹さんからのパスで、しっかりと僕のことを見てパスを供給してくれました。あの2本が決まっていれば大きく変わっていたと思いますが、そこを決められなかったのは自分の練習不足で、これからまた練習するしかないです」

あらためてこの2日間について総括してもらうと、「ここまで約1カ月に渡ってやってきたことを見せたい場でしたが、自分の中で納得できない形で終わってしまいました。本当に悔しいの一言に尽きます」と沈痛な表情で語った。

それでも彼は「ただ、引きずっていてもしょうがない。これが今の自分の実力だと受け入れて、また切り替えて次に向かっていかないといけないです」と言い、すでに前を向いている。今回の北海道遠征のパフォーマンスを見る限り、金近がこのまま代表に残ることができるのかは不透明だが、どんな結果になるにせよ、この2試合で得た悔しさは金近をさらに成長させる糧となることは間違いない。