日本の強豪高校には進まず、東京都に拠点を置くクラブチーム『ブギーズ・バスケットボールU18』でスキルアップしたハウエットナイル賢大が、NCAAディビジョン1のウィーバー州立大に進学する。193cmでウインドミルダンクも決めるシューティングガードは高校時代に渡米すると、バスケの本場で揉まれながらユタ州で4位に輝いた。夢はドラフトでのNBA入り。デイミアン・リラード(ミルウォーキー・バックス)が巣立った強豪校でどのような成長曲線を描くのか。
「トラッシュトークも言い返せるようになりました」
――自己紹介をお願いします。
身長193cm、現在18歳のハウエットナイル賢大です。ポジションはシューティングガードをやっています。父はアメリカ人で母は日本人です。教師の父が各国を渡ったのでアメリカ生まれですが、様々な国で育ちました。来日したのは小学5年生の時です。小菅ヶ谷小学校のワイルドキャッツでバスケットを始めて、豊田中学校へ。中学最後の大会は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、中止になりました。高校は横浜インターナショナルスクールに進学して、クラブチームのブギーズ・バスケットボールU18に入りました。3年時にアメリカ遠征を経験し、スカウトされて渡米を決断。アリゾナ・コンパス・プレップに編入しました。さらにユタ州のオグデン高校に転校して、州で4位になり、ウィーバー州立大に進学します。
――得意なプレーは何ですか。
1番はシュートです。シューティングガードなので3ポイントシュートやジャンプシュートが好きです。ブギーズで練習してリムアタックも得意になりました。ダンクも簡単にできます。スリーシックスティ(1回転)はまだできませんが、ウインドミルダンクはたまにできます。
――アメリカでの生活を振り返って。
住んだことがなく、家族もいないので、ドキドキと緊張がありました。アメリカは全部でかくて、1番の違いは車がないと生活が難しいことです。周りのみんなはオープンに話しかけてくれるので、人柄が良いと思います。うるさい人たちも多いですが、日本よりも仲良くなれると感じました。
――バスケットボールでの違いは。
身長の高さと体格が違いました。アメフトなどを並行してやっているのでガッチリしています。コート外で仲が良くても、5対5になると知らない人同士みたいになります。一つひとつの練習でけんかが起きるぐらいです。みんな負けず嫌いで、そこは日本との大きな違いです。
自分も元々は負けず嫌いなんですけど、物静かな方なのでトラッシュトークに慣れるのに少し時間がかかりました。負けないように言い返せるようになったと思います。競争を勝ち抜くために最初に取り組んだのは筋力トレーニングです。筋肉が付けば速くなるし、バランスよくシュートまで行ける。あとはシュートが入ればボールも回ってくるので、シュート練習も日本にいる頃よりも多くしました。
――NCAAディビジョン1(D1)のウィーバー州立大に進学します。
D1は1番レベルが高いです。ほとんどの人が大人というか身体つきもデカいし、プロに行ける実力があります。ウィーバー州立大はデイミアン・リラードの出身校で、今年のドラフトで注目されているディロン・ジョーンズがいます。8月の入学に備えて、今は日本で身体を作っています。すごい楽しみですし、緊張もあっていろんな気持ちが混ざっている状況ですが、早くアメリカに戻って思いっきりやりたい気持ちです。
――大学で成長させていきたい部分は。
相手は全員大人のようなものなので、身体は大きくしていきたいです。あとはシュート力。オープンの3ポイントシュートは絶対に外さないようになりたいですし、打った瞬間に入るって思えるくらいまで伸ばしたいです。また、バスケットボールIQも高めたいです。大学は個よりチームプレーがメインになり、プレーの数も多いです。相手のディフェンスもこれまで以上に上手いし、ポイントガードでプレーする可能性もあるので、IQが必要です。
「日本代表としてオリンピックにも出たい」
――将来のビジョンは。
大学でしっかり4年間を過ごして、最終的にはNBAに絶対に入りたいです。でもプロ選手になれるなら、アメリカ以外の他の国でもプレーしたいと思っています。日本代表としてオリンピックにも出たいですね。道は長く険しいですが、NBAドラフトで名前を呼ばれて、ステージに立つのが夢ですね。絶対に叶えたいです。
――NBAで憧れている選手は。
ペイサーズにいた時のポール・ジョージ(現クリッパーズ)が大好きで、バスケットを始めた理由の一つになっています。本当におもしろい選手で今でも見ていますが、ジャンプシュートがうまくて、落ち着いて自分のシュートに入るところがすごいなと思います。
――日本人で意識している選手はいますか。
日本人選手で中学生の時にたくさん見たのはデーブス流河選手です。彼はD1のボストンカレッジ大に進学する予定です。プレースタイルも少し似ていると感じていて。これからのライバルだと思っています。ブギーズのBANG LEEコーチはアディダスバスケットボールのアドバイザーで、流河選手は契約選手なので、一緒にワークアウトできないか聞いてもらっています。
――ブギーズで成長できた部分は。
ブギーズに入る前は左手のドリブルはできなかったし、シュートもあまり入らなかったです。ほぼ毎日練習して、だんだん上手くなって自信もつきました。なので、最初はアメリカでプレーすることになんて思ってもみなかったです。
普通の日本のチームと違って、個人練習がメインになります。ファイブアウトのシステムで練習の中で学んだことを実践して、できなかったことをまた練習で修正します。『どれだけ練習しても試合で使えなければ意味ない』と小林大起ヘッドコーチは強調しています。海外風なプレースタイルや練習法も良かったですし、本当にすごいチームです。ブギーズで成長して、身長も少し伸びて『やっぱりいけるな』って。ブギーズがなければアメリカに行けなかったと思っています。
――両親や兄弟とはまた会えなくなります。
3人兄妹で弟と妹がいます。弟も今年からアメリカの高校に行くことになりました。去年から両親と離れていたんですけど、今後は夏にたまに帰れるかどうかで、会う機会は少なくなりますが、今の時代は電話で話せるので助かります。
母は体調や食事を気遣ってくれて、毎日の練習にしっかり準備できました。父は優しいけど、たまに厳しい時があって、『何がやりたいの?』ってしっかり聞いてくれます。『本当にやりたいなら全面的にサポートする』と言ってくれて、本当に感謝しています。
――最後に、全国の皆さんにメッセージを。
NCAAディビジョン1なので、英語面も含めて最初はすごく苦労すると思います。でも日本を代表して頑張りたいですし、大学4年間を終えた後は必ずNBAに入りたいので努力します。みなさんが応援してくれれば、気持ちも少しは楽になるし頑張れるので、ぜひ応援をお願いします!