文・写真=鈴木栄一

試合を重ねるごとに調子を上げ、ここ5試合連続で2桁得点

現在、リーグ最高勝率の座を川崎ブレイブサンダース、アルバルク東京らと激しく争っている栃木ブレックス。シーズンも後半戦に突入し、これから一つの勝ち負けがより大きな意味を持ってくる中において、2月19日に行われた三遠ネオフェニックス戦を93-88と苦しみながら勝ち切ったことには大きな価値があった。

この試合の勝利に大きく貢献したのが、21得点を挙げた古川孝敏だ。前回、20得点以上を記録した1月29日のサンロッカーズ渋谷戦はダブルオーバータイムまでもつれた一戦であり、リーグ有数の得点力を持つ彼にとっては、意外にも40分間では今シーズン初めての20得点超えとなった。

昨シーズンの古川は1試合平均15得点以上と、エースのライアン・ロシターに次ぐ得点源として栃木のオフェンスを牽引していた。今シーズンも同様の活躍が期待されていたが、10月下旬から左足底腱膜炎によって約1カ月の欠場を強いられた。

ただ、1月29日のSR渋谷戦から今回の三遠戦まで、これで5試合連続2桁得点を記録している。「コンディションが良い悪いという感覚は、あまり考えていないのですが、もっともっと上げていければと思います。途中、抜けてしまった部分はあるので、その分を取り戻したいです。チームのために、どんなパフォーマンスを出していけるのか考えていきたいし、もっとやりたい部分はあります」

このように語る古川は、現状に満足することなくこれからさらに調子を上げていくことに集中している。また、当然のように、個人としてではなくチームとして、いかに高いパフォーマンスを発揮するかを重要視している。

それゆえ19日の勝利についても、「トータルで88失点は多すぎで、自分たちの展開ではなかった。単純にチームとして守れていませんでした。1対1でアタックされ、そこでやられることが多かったです。1人で守りきれればいいのかもしれないが、そうはいかない時もあります。一人ひとりが個々に集中しすぎた部分があったので、チームとして守ることが大事。勝ったことだけに一喜一憂せずに反省して、すぐにアルバルク東京と試合があるのでそこに向けて準備したい」とまずは反省を口にする。

三遠戦で出た『守備の課題』を中2日で修正できるか

22日のアルバルク東京戦は、東地区の首位決戦という大一番。A東京は外国籍選手2人が変わることで、どんな戦いをするのか分かりにくい面はある。しかし、だからこそ古川はチームのさらなる進化にとって大切な一戦になると考える。

「自分たちの持ち味は『まずは固く守って』となります。相手がどうこうを抜きにして、しっかり準備していきたい。(A東京の新外国籍選手についてはデータが少なく)試合の中でアジャストしていかなければいけない。自分たちが成長する上で大事な試合になります」

19日の試合では、三遠のジョシュ・チルドレス、また日本人ガード選手たちによるゴール下へのアタックに切り崩される場面が少なくなかった。古川はこう振り返る。「相手がドリブルから来る場面が多かったですが、どう対処していくかうまく自分たちの中でできていなかった。点が取れたので勝てましたが、ああいう形のなかでも守りきらないと自分たちの展開にならない。どう考えても良くない状況でした」

この課題を抱えたままA東京とぶつかるのはリスクが大きすぎる。メンバーが入れ替わるとはいえ、A東京の大きな武器がディアンテ・ギャレットの高い個人技を生かしたアタックであることは変わらないはず。この課題を短い準備期間の中でどこまで修正できるかが、A東京戦の勝敗を分けるポイントになりそうだ。

「大事なところで決めることを意識していけたら」

最後に20得点オーバーという数字について質問すると、特に意識してはいないそうだ。「チームには点を取れる選手が揃っています。その中で大事なところで決めることを意識していけたらと思います」。ちなみにこの試合、古川は21得点のうち15得点を後半でマーク。要所での得点が光っていた。

ライアン・ロシター、ジェフ・ギブス、竹内公輔らを擁するインサイド陣は、リーグ随一の破壊力を誇る栃木。だが、外角シュートを主体に、ゴール下へ効果的にアタックして点の取れる古川がそこに絡んでいくことで、オフェンスはより厚みを増す。

古川がこれからどこまでさらに調子を上げていけるか。それが栃木のリーグ制覇を占うキーポイントになりそうだ。