CSの6試合で3ポイント1本成功のみも、ファイナル初戦で3本を成功
琉球ゴールデンキングスは、広島ドラゴンフライズとのBリーグファイナル初戦を74-62で勝利し、昨シーズンに続くBリーグ連覇に王手をかけた。琉球にとって大きな勝因となったのは、第1クォーターでいきなりの5本成功に加え、試合全体で33本中15本成功と効果的に沈めた3ポイントシュートの爆発だった。
岸本隆一、今村佳太の中心選手と共に、長距離砲で存在感を示したのが松脇圭志だ。ベンチから第1クォーター終盤にコートに入った松脇はすぐさま3ポイントシュートを成功させると、第2クォーター開始早々にもリードを2桁に広げる一撃を決め、試合の流れを琉球にもたらした。
松脇の活躍もあって勢いに乗った琉球は、第3クォーター途中にリードを最大24点にまで広げる。しかし、ここから広島の帰化選手、河田チリジを軸としたビッグラインナップによるインサイドアタックを止められず猛烈な追い上げをく食らう。第4クォーターに入っても広島の時間帯が続き、琉球は開始から得点が止まり、リードは11点にまで減ってしまった。
だが、ここで悪い流れを断ち切ったのが松脇だった。残り5分16秒、第4クォーターでは琉球の初得点となる値千金のコーナースリーを成功。これで落ち着きを取り戻した琉球は岸本、今村の長距離砲が続いたことで、広島の反撃を凌いで逃げ切った。
元々、松脇は強靭なフィジカルを生かした守備と3ポイントシュートを持ち味とするチーム屈指の3&D選手だ。しかし、クォーターファイナル、セミファイナルの6試合での3ポイントシュートは11本中1本成功のみ。確率が低いだけでなく、シュート本数自体も少ないスランプ状態に陥っていた。
しかし、千葉ジェッツとのセミファイナル3戦目でようやくCS初の3ポイントシュートを決めると、ファイナル初戦で8本中3本を成功させた。本数も含め、この大一番でシューターとして本来の力を取り戻した松脇は、自身のプレーをこう振り返る。「CSでシュートが入っておらず、自分のリズムがつかめていなかった中、本数を打って自分のリズムをつかめたかなという感じでした」
シューターと言えども、タッチが悪い中でファイナルの大舞台で積極性を維持するのは決して簡単なことではない。だが、松脇は次のような強い気持ちを持っていた。
「(セミファイナル3試合目で)一本入ったことでほっとした部分もありましたけど、あそこでリズムをつかめたかと言ったらわからないです。ただ、いつも以上に打たないといけない気持ちになっていて、その部分も少しは影響したのかと思います」
守備でも奮闘「自分がビッグマンを止めるつもりでプレーしています」
また、今日の松脇は3&Dのディフェンスの部分でも見事な活躍だった。第4クォーターには、185cmの松脇より一回り以上も大きい206cmのニック・メイヨとマッチアップする機会も多かったが、コンタクトの強さを発揮しメイヨにポストアップからシュートを打たせなかった。第4クォーターの勝負どころにおいて広島の外国籍2人、帰化枠の河田を同時起用するビッグラインナップに対し、琉球が連携と機動力重視の日本人3人、外国籍2人のマッチアップで耐えられたのは松脇の貢献による部分が大きかった。
このディフェンス面について松脇は「チーム自体がすごくインテンシティが高かったので、僕がそれを下げないようにと思いベンチから出ていました。満点ではないですけど、それなりにディフェンスできたのかと思います」と総括する。
そして、外国籍フォワード相手の守備については、このような心構えで臨んでいると続ける。「自分がビッグマンを止めるつもりでプレーしていますし、相手が3ビッグをしてくることに対して、そこまで引き気味にはなっていないです。自分のディフェンスであり、チームディフェンスをやれば完全にやられることはないと思います」
今日の試合、琉球は松脇に加え、牧隼利も貴重な3ポイントシュート2本を沈めた。千葉Jとのセミファイナル第2戦、第3戦に続き、脇役たちが攻守でチームに活気を与えたことが大きな勝因となった。この層の厚さこそ琉球の大きな武器であり、松脇も「僕も牧もそうですし、セカンドのメンバーがシュートを決めたり、盛り上げることはチャンピオンシップでより大事になってくると思います」と強く意識する。
この盛り上げるという部分でいうと、若手を中心に『ゴールデンキングス』のチーム名にあやかり髪を金髪にしていることもチームの結束を高める1つの要素となっている。沖縄アリーナが誕生する前の2018-19シーズン、古川孝敏や須田侑太郎、橋本竜馬やアイラ・ブラウンなどが在籍していた当時のチームで、多くの選手が金髪に染めて戦ったことがある。
そういう過去も踏まえ、レギュラーシーズン最終節で広島に敗れ4連敗を喫した後、牧の提案で悪い流れを変えるきっかけになればと若手から率先した金髪に染めた。そこからチームの流れが変わり、セミファイナルの前にはアレン・ダーラムが金髪になるなど徐々に人数が増えた。松脇は「まずは同じ世代でやれって牧に言われて、やりたくはなかったですが、渋々やりました」と明かしたが、しっかりと染めるところにチーム愛が見える。
明日の第2戦、あとがない広島は今日以上に強い気持ちで序盤からアグレッシブに戦ってくる。この相手の激しい圧力を跳ね返すためにも、セカンドユニットのキーマンとして松脇が攻守で再びインパクトをもたらすことに期待だ。