川崎ブレイブサンダース

文・写真=鈴木栄一

九死に一生を得た川崎、土壇場での勝負強さが光る

3月2日、川崎ブレイブサンダースが本拠地とどろきアリーナでサンロッカーズ渋谷と激突。第4クォーター終盤の要所でフリースローを外したSR渋谷に対し、しっかり決めた川崎が追いついてオーバータイムに持ち込むと、89-80で熱戦を制した。

この試合、川崎のエース、ニック・ファジーカスが母校ネバダ大での永久欠番セレモニー出席により前日に帰国したばかりとあってベンチスタート。しかし、代わりに先発を務めたシェーン・エドワーズが、故障明けで1月16日以来の出場にもかかわらず試合開始5分で8得点をマークする活躍で、川崎がリードを奪う。SR渋谷もライアン・ケリーが持ち前の高い得点力を発揮して対抗。前半はそのまま互いに譲らずSR渋谷の32-29と僅差で終える。

第3クォーターに入ると、川崎は、ターンオーバー奪取からの速攻でエドワーズが豪快なダンクを決めるなど、走る場面が増えることで逆転に成功。しかし、SR渋谷もここで広瀬健太が2本の3ポイントシュートとベテランの意地で踏み留まり、川崎の53-51と激戦は続く。

第4クォーターに入っても一進一退の攻防は継続するが、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスを効果的に決めたSR渋谷が徐々に流れを引き寄せる。そして残り2分半で5点を追いかけるところから残り40秒に本日26得点を挙げたケリーのシュートで2点を勝ち越した。

さらに残り21秒にベンドラメ礼生がフリースローを獲得し、勝利まで目前に迫るが、ここでまさかの2本失敗。さらに落ちたリバウンドを取った藤井祐眞がファウルも獲得し、川崎のフリースローに。藤井はしっかりと決めて71-71と土壇場で追いつくと、最後のディフェンスを守り切る。九死に一生を得た川崎が、オーバータイムの5分間では3アシストを挙げた篠山竜青を起点にした攻撃でフィールドゴール5本中5本成功とSR渋谷を圧倒した。

シェーン・エドワーズ

「フリースローが2本落ちたのは会場の皆さんのおかげ」

川崎の北卓也ヘッドコーチは「内容的には中断期間にやってきたことがまずます出せたと思います。代表選手たちは帰ってきてあまり練習はできていないですが、できることはやってくれました。今日の勝ちは非常に大きいし、うれしいです」と語る。

ただ、次のように課題を挙げ、明日に向けて気を引き締めてもいる。「オフェンスリバウンドを19本取られて、第4クォーターの終盤にはおそらく2本くらい、こちらがシュートを外れたのを見ているだけになってしまい、そこから得点を取られています。そういうミスで負けているゲームが数試合あるので。そこは口うるさく言っていく。本当の局面のところの強さが出るようにしていかないといけないです。ただ、ああいう劣勢の中で粘って、フリースローが2本落ちたのは会場の皆さんのプレッシャーのおかげです。最後に藤井が2本決めたのは良かったです」

また、中断期間で取り組んでいたことの成果をある程度は出せたと手応えも得たようだ。「リーグ戦がない間は、基本的なことを取り組んでいました。守備ではレイアップなどペイント内でのイージーシュートを簡単に入れられているところが課題で、今日はチームディフェンスでそこを守れていました。攻撃ではボールを持った選手にスペースを与えることを練習していて、今回はいいスペースを作れてチームで29アシストありました」

そして24得点、14リバウンドと奮闘したエドワーズについては「素晴らしいです。リバウンドをとって自らプッシュして、あとは3ポイントシュートも序盤からいい形で決めてくれました」と絶賛。そして3番ポジションをこなせるエドワーズが好調なら「今日はやらなかったオン・ザ・コート3など、引き出しがまだ増え得るような気がしています」と戦術の広がりが増すと言う。

ロバート・サクレ

「勝たせてあげられなかったことが悔しい」

惜しくも敗れたSR渋谷の伊佐勉ヘッドコーチは「スタッツから見て、川崎さんにやりたいバスケットをやられている中、それでも勝つチャンスはいくつかありました。そこでベンチワークをしっかりして勝たせてあげられなかったことが悔しいです」と振り返る。

また、「オーバータイムとなりましたが、その前に勝ちきれなかったのが大きかったです」と第4クォーター終盤の決定力不足に加え、「エースのファジーカス選手、(バーノン)マクリン選手については練習した通りに守ってくれました。ただ、辻選手をあれくらい空けてしまったらシュートを外さないので、そこはチームとして彼をマークしないといけない」と、19得点を取られた辻への守備を課題に挙げた。

中地区首位の新潟アルビレックスBBに追いつくためには負けられない戦いが続く川崎が、今日も勝って連勝できるか。それともSR渋谷がリベンジを果たせるか、一つの大きな鍵は、SR渋谷が19-4とオフェンスリバウンドで大きく上回ったゴール下の争いで再び優位に立てるか、それとも合計17得点と不発に終わったファジーカス、マクリンと川崎の誇るツインタワーが本領発揮となるかに注目したい。