馬場雄大

文=丸山素行 写真=鈴木栄一、FIBA.com

快挙達成も「貢献しきれなかったと感じています」

日本代表は先日のイラン戦、カタール戦に勝利し、8勝4敗でワールドカップ本大会行きを決めた。直近の参加となった2006年大会は自国開催。自力での予選突破は実に21年ぶりの快挙だ。

それでも、昨夜に帰国した日本代表で最年少の馬場雄大はどこか手放しで喜べていないようだった。それは今回のWindow6でのパフォーマンスに悔いが残っていたからだ。

「イランのディフェンスに対応しきれなかったところもありました。カタール戦でも後半にいくにつれて上がっていきましたが、最初コートに入った時は『これで決まる』という緊張もありました。総合的にイランが技術面、カタールではメンタル面という反省点が少し残って、両方ともまだまだこれからだなって感じました」と馬場は言う。

ハイスコアリングゲームになったイラン戦で、馬場はシュートアテンプト数がわずか3本の4得点に終わった。一方、比江島慎はエースの貫録を見せ、24得点を記録した。「比江島選手は打開して点数を取っていました。ウイングの点数が求められている中で、貢献しきれなかったと感じています」

馬場はプロ入りする前から海外志向が強く、この予選も自身を世界にアピールする場としてとらえていた。だからこそ、予選突破の快挙に浮かれるのではなく、自身のプレーを戒めた。

それでも、こうした世界と戦った経験は確実に己の糧となる。馬場も今後のさらなる飛躍には「技術云々ではなくて経験」が必要と言う。「いくら技術があっても、そこでメンタル的が伴わないと力を発揮できないです。世界レベルのプレーというのは肌で感じてましたし、ワールドカップはそうした一つの経験だと思っています。焦らずに1試合1試合経験しながら、その場(世界)に相応しい選手になりたいと思っています」

馬場雄大

「馬場雄大のプレーを出そうと心がけています」

日本人離れした身体能力を持つ馬場は、この予選を通じて豪快なダンクを何本も決め、FIBAからも『BABABOOM』として発信されている。もちろんこうしたプレーは馬場の持ち味だが、いかにチームに貢献できるかを重視していると馬場は強調する。「海外の上のリーグの選手たちはチームにどう貢献するか、どういう仕事をするのかを見ていると思います。派手なところだけじゃなく、何をやるべきなのかを見つめながらやりたいです」

インパクトのあるプレーだけでなく、繊細な部分も見てほしいと訴える馬場だが、もちろん「選手ごとの特色は出すべき」とも主張する。「比江島選手にあって僕にはないもの、田中大貴選手にあって僕にはないものもあります。逆もまた然りですし、そういうバランスは絶対にあるので、馬場雄大のプレーをコート上に出そうと心がけています」

代表の興奮冷めやらぬまま、今週末にはBリーグが再開する。ワールドカップ出場が決まり、世間からの注目も増している。馬場も「結果を残した日本代表として見られる」と、他を圧倒する存在にならなくてはいけないと自覚している。

そうした強い思いの一つに、外国籍選手への対抗心がある。「今まで以上に外国籍選手に対してどういうプレーをしていくかを突き詰めたい。ウイング陣の外国籍選手にも積極的にディフェンスしたいと思います」

馬場が所属するアルバルク東京には、馬場の他に田中と竹内譲次ら代表でも主力を張る選手が揃っている。「代表選手が3人いるアルバルク東京と見られるので、リーグでも結果を求めてやってきたいです」と、ラスト20試合へ向け馬場は意気込んだ。

馬場は今後のステップアップのために「経験が必要」と言った。それと同時に、「他の選手よりも絶対に経験はさせてもらっているので」と、先輩や同年代の選手よりも経験値は高いことを自負している。

新たな気持ちでリーグを戦い、経験値を積む若武者の今後にますます目が離せない。