ジェイソン・テイタム

「フィジカルな戦いになるのは分かっていたこと」

セルティックスはプレーオフを最高の形でスタートさせた。試合が始まって最初のプレーはジェイソン・テイタムのドライブからのダンク。これはギリギリで阻まれたが、オフェンスリバウンドを拾ったテイタムはすぐに外で待つジェイレン・ブラウンにパスを送って3ポイントシュートへと繋げる。続くポゼッションではブラウンがスピンムーブでハイメ・ハケスJr.をかわしてダンクを叩き込んだ。クリスタプス・ポルジンギスのフローター、テイタムのドライブレイアップで9-0。ヒートはたまらずタイムアウトを取るも、ドリュー・ホリデーの3ポイントシュートにポルジンギスのミドルジャンパーと、セルティックスの勢いは止まらなかった。

開始3分で14-0。ヒートを率いるエリック・スポールストラは「ティップオフの瞬間から激しさで負けていた」と振り返る。ヒートは第1クォーター終盤に追い上げ、第2クォーター開始直後には1ポゼッション差まで詰めたが、その後は再び離された。第3クォーターのセルティックスは3ポイントシュート13本中7本成功と長距離砲が炸裂。17-2のランを含む31-14のビッグクォーターで34点の大量リードを奪った。

第4クォーターにはヒートの3ポイントシュートがついに当たり始めるも、点差が1桁に戻ることはなく、セルティックスが114-94と余裕を持って逃げ切った。

この完勝劇で主役を演じたのはジェイソン・テイタムだ。23得点10リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録。3ポイントシュートは8本中成功わずか1本とチームで唯一当たりが来なかったが、相手ディフェンスの注意を引き付けてはパスを出すプレーメークも冴え、特に第1クォーターの5アシストがチームを乗せ、ヒートのリズムを狂わせる大きな要因となった。

「シンプルに正しいプレーを心掛けた。相手を引き付け、ミスマッチを見つけ出す。飽きずにずっと続けるのが大事なんだ。いつものことだけど、ウチには優れたシューターが揃っているから難しいことじゃない。それでもヒートのディフェンスを相手に良いプレー選択ができたと思う」とテイタムは言う。

すでに110-94と勝敗が決まった残り1分、ディフェンスリバウンドを確保しようとしたテイタムは、空中でケイレブ・マーティンに突き飛ばされて背中からフロアに落下した。必要以上に激しい接触だったことでブラウンがマーティンに詰め寄り、両チームの選手が集まる。乱闘にこそならなかったが一触即発の状況。それでもテイタムはすぐに起き上がってボールを持ち、フリースローラインに立ってプレーを再開した。

「大丈夫だよ」とテイタムは言う。「プレーオフがフィジカルな戦いになるのは分かっていたこと。これが最後じゃなく、このシリーズでは何度もあんな感じでやられ、ファウルを受けるだろう。でもケガはしなかった。ただ立ち上がってフリースローを決めるだけだよ」

テイタムとブラウンがチームを引っ張り、サポートキャストもベンチ出場の3人を含め全員がそれぞれ自分の仕事を果たし、TDガーデンに詰め掛けたボストンのファンは最高の盛り上がりを見せた。セルティックスにとっては完璧な試合で、ジミー・バトラーを膝のケガで欠くヒートはほとんど対抗できなかったが、11得点と不発に終わったタイラー・ヒーローは不敵にこう語った。「本来やるべきレベルでプレッシャーを掛けることができなかったけど、まだ1試合が終わっただけさ」