スクート・ヘンダーソン

「ここでファンと一緒に戦えたのは本当に楽しかった」

チャウンシー・ビラップスがヘッドコーチに就任して以降のトレイルブレイザーズの3シーズンは評価が難しい。27勝、33勝、21勝でいずれもプレーオフ戦線に絡めず。最初のシーズンはデイミアン・リラードが腹部のケガで離脱、2年目はCJ・マッカラムなど主力を放出して『リラード以外は再建』という中途半端な方針で失速した。3年目の今シーズンは、開幕前にリラードがトレードを要求。ここに来てチームは完全に解体に舵を切った。

ビラップスにとって、1年目はケガなどのアクシデントで戦えず、2年目以降はフロントが上位を狙える戦力を準備できなかった。彼自身、就任した2021年夏の時点では、プレーオフの常連であるブレイザーズに新たな変化を加えて優勝争いをするつもりだったが、シーズンを重ねるごとに戦力は落ちている。これで結果を求められるのは酷というものだ。

昨夏にはリラードのトレードも含めて再建を加速させる良い交渉ができたが、エース不在では勝てない。アンファニー・サイモンズがチームトップの22.6得点を挙げたが、膝のケガを抱えて46試合のみの出場に留まった。

そんなブレイザーズで来シーズンにエースを務めるべきはスクート・ヘンダーソンだ。昨夏に全体3位指名で彼を獲得したことは、去就の定まっていなかったリラードの気持ちを移籍へと後押しした。極論すれば、ブレイザーズのフロントはリラードを捨ててヘンダーソンを取ったことになる。ヘンダーソンにその重荷を背負わせるのは酷ではあるが、彼がエースへと成長しなければブレイザーズの再建は成らない。

65試合に出場し、28.5分の出場で14.0得点。フィールドゴール成功率は38.5%、3ポイントシュート成功率は32.5%で、5.4アシストに対しターンオーバーは3.4。スーパールーキーのビクター・ウェンバニャマが躍進したシーズン、それに比べてヘンダーソンは期待外れに思えるが、ビラップスは「NBAを理解するのに時間がかかるのは当然のことだ。どんなチームが相手でもペイントに入り、リムに圧力を掛けられる選手は多くない。この調子で成長してほしい」と彼を擁護し、2年目の飛躍に期待している。指揮官が言うように、ヘンダーソンは好不調の波こそ激しかったがリムに攻める姿勢を失うことは決してなかった。

ヘンダーソンはルーキーシーズン最後の会見で「何よりもまず、ここポートランドに来ることができて良かった。両手を広げて僕を歓迎し、受け入れてくれたことに感謝したい。ここでファンと一緒に戦えたのは本当に楽しかった」と語った。

「シーズンを戦う中で思い通りにいかないこともたくさんあったけど、この1年で僕なら乗り越えられると学んだ。支えてくれる人がいるから、批判されても耳を傾けずに自信を持ち続けられる。新しい環境に来て自分の力を発揮するのは簡単じゃない。でも僕はNBAのあらゆることを学び、順応してきた。それは来シーズンに生きるはずだ。開幕当初のことを思い出すと、自分がどれだけ成長しているか、周囲とどれだけ噛み合うようになったかが感じられるよ」

今シーズンを通して一番成長したことは何かと問われると、ヘンダーソンは「リーダーシップとポイントガードとしての成長」と答えた。「コート内外でコミュニケーション能力はかなり伸びたと思う。メンタルもかなり強くなったと思う。シーズンを通して自分を責めたことは一度もなかった。そのマインドセットはできていたよ」

これから長いオフに入るが、彼の頭の中はすでにやることでいっぱいになっている。「まずはしばらく心と身体を休めるけど、あとはバスケのために時間を使うつもりだ。一番はハンドリングだね。コンタクトを受けている時のハンドリングを上達させること。他にもフィニッシュ、爆発力、瞬発力。身体を鍛えて気持ちも鍛える。映像をたくさん見て、どんな状況でどんなプレーができるかチェックするよ」

シーズンが終わったタイミングでも、彼は20歳の若者らしく先を急いでいる。「まだチームとは話をしていないけど、サマーリーグにも出たい。プレーできるならどこにでも行くつもりだ」

彼がたった一つ決めかねているのは、レーシックの手術を受けるかどうか。最近になって視力が低下したことで、彼はコンタクトを着けてプレーすることになり、保護のためにゴーグル着用を医師から勧められた。「それはちょっと様子を見てから決めたい。ゴーグルも気に入っているからね」と彼は言う。

ゴーグルを着けているかどうかは分からないが、来シーズンはさらにパワフルにリムを攻めるスクート・ヘンダーソンの姿が見られるのは確実なようだ。