フレッド・バンブリート

「来シーズンは間違いなくもっと良いチームになれる」

プレーオフ進出のラインは一般的に勝率5割と言われる。プレーイン・トーナメントが導入されて10位までチャンスが広がったことで、そのラインはもう少し下がるはずだった。しかし、今シーズンの西カンファレンスはレベルが高すぎて、ロケッツは41勝41敗で勝率5割に手が届いたにもかかわらず、西の11位でプレーイン・トーナメントにも進めなかった。

だが、どの関係者に聞いてもロケッツの2023-24シーズンは意味のあるものだったと答えるだろう。イメイ・ユドカが指揮官に就任し、フレッド・バンブリートとディロン・ブルックス、ジェフ・グリーンのベテラン勢が加わったことで、若いチームには明確な変化があった。そのすべてが前体制での3シーズンには起きなかったことだ。

チームがどんなバスケを目指すかの指針が定まり、それを実現するための規律ができた。良いプレーをしたいと願ってはいても、チームとしてまとまる術を知らず場当たり的に頑張るだけだった若手が、チームの歯車としての自覚を持ち、それが噛み合うことに達成感を感じるようになった。

チームとして団結し、タフに戦うこと。オフェンスの波に左右されず強度の高いディフェンスを貫いてイージーバスケットを与えないこと──。この指針を選手たちに浸透させ、その上でチームをまとめていったユドカの手腕は称賛に値する。就任してすぐ「これまでとは違うチームになる」と宣言した通りに、ロケッツは変わっていった。

シーズンを通してのベストゲームは、3月の11連勝の10番目の試合となったサンダー戦だろう。オーバータイムの激闘を制した選手たちは、落胆する観客の間を通り抜けてコートを出ると、飛び跳ねながら雄叫びを上げ、身体をぶつけ、肩を抱き合った。いつもは険しい表情をしているユドカも大きな笑顔を浮かべていた。ロケッツは個々が頑張るのではなく、チームとして支え合いながら一つの勝利をつかみ取ることの意味を知る集団へと確実に進化していた。

バンブリートはシーズン終盤のある会見で「違いが分かるだろう? 難しいことじゃなく、目に見える形で違いが出ている」と語った。「日々の練習に責任を持って取り組み、毎日成長し、仕事として試合に臨むこと。これが若手が成長するために必要な道しるべとなるんだ」

プレーオフに進めなかったことで、予定より早くシーズンは終わってしまったが、バンブリートは最後の会見で「意味のあるシーズンを過ごせた」と語った。「僕たちは土台を作って種を蒔いた。すぐに収穫を得られるわけじゃないけど、物語を変え、視点を変え、文化を変えるのが最初の一歩だった。そこから積み上げていくんだ。本当に良いグループができつつあるし、そのまとめ役ができたことを誇りに思う」

彼は、ロケッツに来て最初にユドカと面談したことを振り返る。「最初のミーティングで、チームをどんな姿にしたいのかのブレインストーミングをやったんだ。このチームを正しい方向に導くために必要とされていると感じられて、僕のモチベーションは高まった」

「若い選手たちはみんな勝利に飢えていた。でも、勝つために何が必要なのかは必ずしも分かっていなかったように思う。でも今はみんな理解しているよ。僕らのような多少経験を積んだ年上の選手たちがハードルを設定し、そこに若手が追い付いたんだ」

「プレーオフには進出できず、目標は果たせなかった。そのことははっきりさせておきたい」と彼は言う。「でも、成功じゃなかったとは言わない。僕はポジティブな人間だし、事実としてこのチームには有望な選手がたくさんいる。今シーズンの西カンファレンスはクレイジーで、50勝したチームが5つもあった。そんな中で良い戦いができたと思うけど、向上の余地も多い。例えばホームではプレーオフ進出チームのように戦えるのに、アウェーではロッタリーのチームだ。そういう課題にまた来シーズン向き合うと考えると、今からワクワクするよ」

そう、この挑戦はまだ序章が終わったにすぎない。バンブリートは昨年にロケッツと3年1億2850万ドル(約190億円)の契約を結んでおり、成長していくチームを導く役割はこれからも長く続く。「これから僕たちのあるべきプレースタイルを見つけ、課題を解決するためのオフを過ごす。それで来シーズンは間違いなくもっと良いチームになれる。おそらくは多様性とリズム、プレーの引き出しを増やすことがカギになるだろうね」

ユドカはかつて、バンブリートを始めとするベテランたちへの期待をこう語っていた。「ベテランにチームの救世主になってほしいとは思わない。若手の内面的な成長がチームを向上させる。それを引き出してほしい」

ロケッツはプレーオフ進出こそ果たせなかったが、ユドカが最も望んでいた変化が起きている。そしてバンブリートはそこに大きな貢献をした。だからこそ胸を張って「大きな進歩を遂げた1年だった」と言い、シーズンを終えることができた。