シェイ・ギルジャス・アレクサンダーとアンソニー・エドワーズ

オーバーカンファレンスの試合では西が70の勝ち越し

レギュラーシーズンの最終戦を迎えても順位が確定していないチームばかりだった西カンファレンスを制したのは若きサンダーでした。スターターの平均年齢がNCAAトーナメント出場チームと変わらないことで話題になる若いチームながら、実績のあるスーパースターを揃えた各チームを抑えての首位であり、2年前は30勝すらできなかったドアマットからの転身の早さは驚くべきものがありました。

また、戦力は充実していても『勝ち切れない』チームの代表格であったティンバーウルブズが、シーズンを通して首位争いを演じました。最終的に3位になったものの56勝はチーム史上2番目に多い勝ち数でした。ケガ人が出てもカバーできる選手層はリーグ最高といっても過言ではなく、ベンチメンバーのスターターと変わらぬ活躍はチームとしての成熟を示しています。

2位のナゲッツも含めて3チームに共通するのは、若手の成長をベースにしたチーム作りで、特に今シーズンは大きな補強を行うことなく、昨シーズンからの継続性が好結果に繋がっています。また、ガードだらけでスピードと運動量で勝負するサンダー、時代にそぐわないツインタワーを基本とし、時にはトリプルタワーまで使ったウルブズ、そして誰にも真似できない二コラ・ヨキッチによるプレーメークのナゲッツと、上位3チームに共通するのは『独自の戦術』を突き詰めたことでした。

特にナゲッツは3ポイントアテンプトがリーグ最少と、ディフェンディングチャンピオンながら現代NBAの常識とは異なるスタイルで勝っています。11チームが勝率5割以上というハイレベルかつ拮抗した戦いとなった西カンファレンスで、この3チームが抜け出せた要因は自分たちの戦力と戦術を信じ抜いたことにありました。

リバウンド王の座を手にしただけでなく、アシストランキングでも6位、そしてダブル・ダブル77試合を記録したドマンタス・サボニスがオールスター選出から漏れたように、西カンファレンスはスターが多すぎます。それでも、スター選手を並べただけではハイレベルな競争に勝てないことも明確となりました。『独自の戦術』を掲げて、チームカラーに合った選手を揃え、成熟を待つ我慢強さが必要になります。

若手が躍進する一方で、特に30代のスター選手の苦労が目立つシーズンでもありました。タフな試合ばかりが続くため、エネルギー溢れる若手の方が長いシーズンで結果を残せたことと、サラリーの安い若手スターを抱えているチームが層の厚いロスターを構築できたことが関係しています。シェイ・ギルシャス・アレクサンダー、ルカ・ドンチッチ、アンソニー・エドワーズといった若手スターに対して、ベテランスターがプレーオフになれば実績と経験で違いを見せつけるかが注目されます。

また、4位から10位までが5勝の差しかなく、実力差が生まれなかったシーズンでもありましたが、このうちクリッパーズ、サンズ、レイカーズ、キングス、ウォリアーズの5チームが同じパシフィック・ディビジョンに所属しており、強豪同士の潰し合いという構図にもなりました。ディビジョンは普段は全く意識されませんが、ディビジョン内のチームとは必ず4試合が組まれる上、今シーズンから始まったイン・シーズン・トーナメントの影響で、相手によっては5試合戦うこともあり、わずかではあれ大事な勝率の差を生み出した可能性もあります。

オーバーカンファレンスの試合では西カンファレンスが261勝、東カンファレンスの191勝と70もの差が付きました。8つ以上勝ち越したチームが西カンファレンスには9チームあったのに対して、東カンファレンスはセルティックスのみと、一時は縮まったかに見えた東西の差は再び大きく開いています。東カンファレンスであれば上位シードになれる力を持ったチームが中位にまでひしめく、ハイレベルな争いが続いた今シーズンの西カンファレンスでした。