デンソーのヴクサノヴィッチHC「点差は競っていても、ゲーム内容は僅差ではなかった」
Wリーグファイナルの第1戦が行われ、富士通レッドウェーブが40分間を通し、しっかりと連携の取れた強度の高いディフェンスを貫くことで64-57でデンソーアイリスに競り勝った。
試合の出だしから富士通は、各選手が激しいプレッシャーをかけることで、デンソーにタフショットを打たせる。しかし、オフェンスではデンソーの粘り強い守りに苦しみ、互角のスタートとなる。
この均衡状態を破るきっかけとなったのは町田瑠唯だった。ピックプレーに対してデンソーのインサイド陣がアンダーで守ることで空いたスペースを突き、ミドルレンジからのブルアップシュートを連続成功。前半で11得点を挙げた町田に加え、富士通はベンチメンバーの中村優花も持ち味のドライブにより第2クォーターだけで8得点をマークと勢いに乗る。一方のデンソーは、大黒柱の髙田真希が前半で3ファウルとファウルトラブルに陥った影響もあり、オフェンスがうまく噛み合わない。馬瓜エブリンが3ポイントシュートを決めて食い下がるが、富士通が36-32と先行して前半を終える。
後半の立ち上がり、デンソーが連続ターンオーバーと自らリズムを崩した隙を突き、富士通は第3クォーター序盤に点差を一気に2桁に広げる。その後、デンソーも馬瓜、赤穂ひまわりと日本代表コンビの奮闘で追い上げて接戦へと持ち込むが、富士通が常にリードをキープした。そして6点リードで迎えた残り2分半、ンフォンノボン・テミトペが髙田をファウルアウトに持ち込むバスケットカウントを決め、これがダメ押しとなって富士通が初戦を制した。
終盤までもつれる熱戦だったが、デンソーのヴラディミール・ヴクサノヴィッチヘッドコーチは、プレーの質においては完敗だったと振り返る。「富士通さんの方がアグレッシブにプレーしていました。重要なリバウンドを取られ、ビッグショットを決められました。富士通さんの方が勇敢でした。点差は競っていたかもしれないですが、ゲーム内容は僅差ではなかったです」
一方、勝者である富士通のBTテーブスヘッドコーチは、堅守の要因について「今日、ディフェンスのローテーションとか、ヘルプについて(チームで決めた)ルールにおける失敗が少なかったです。それが良かったです」と、遂行力の高いチームディフェンスができたと振り返る。
勝てば優勝の第2戦へ向けて「明日も思いっきり攻めていきたいと思います」
接戦を制した富士通だが、持ち味である3ポイントシュートは「ウチの3ポイントシュートはトランジションから打つ本数が多いです」とテーブスヘッドコーチが語るように、デンソーの徹底したハリーバックによって得意な状況から打つことができず、いつもより少ない17本試投の3本成功のみに留まった。それでも2ポイントシュートの成功率53.3%が示すように手堅いハーフコートオフェンスを遂行できたことが勝利に繋がった。そして長距離砲の不発を効果的な2点シュートで補うことを、個人で最も体現したのがエースシューターの林咲希だ。
デンソーの厳しいマークによって、林はタフショットを打たされ3ポイントシュートは5本中1本成功のみ。だが、3ポイント封じで間合いを詰めてくる相手に対し、積極的なドライブによって2点シュートは7本中5本成功をマーク。また、冒頭で紹介したテミトペの得点は林のアシストであり、14得点3アシストと見事なプレーで勝利に貢献した。
林はロースコアに抑えたディフェンスに加え、「オフェンスに関しても自分たちのバスケットがしっかりできたと思います。中にはできていない時間帯もありましたが、自信を持って戦えたのは良かったです」と、オフェンスについても手応えを語る。
そして、自身のプレーについては「(3ポイントは)もうちょっと打てたと思います。迷いがあったことが、5本中1本成功になってしまいました」と反省しつつ、効果的なドライブについてはチームメートのおかげと強調する。「今日はみんながドライブでアグレシッブに行っていました。私もしっかりアタックしようという気持ちにみんながさせてくれました。その結果、シュートを決めることができました。明日も思いっきり攻めていきたいと思います」
テーブスヘッドコーチは「数年前のレッドウェーブだったら、3ポイントが入らなかったらデンソーさんのような上位チーム相手に勝つことは難しかったです」と語る。だが、今の富士通は当時と違う総合力を兼ね備えたチームとなったことをあらためて証明する今日の勝利となった。