「あんなに多くのシュートは打ちたくない」
東カンファレンス10位でプレーイン進出を目指すホークスは、ケガ人続出にもかかわらず失速するどころか勢いを増している。トレイ・ヤングは左手小指の腱を痛めてもう1カ月プレーしていない。サディック・ベイは左膝の前十字靭帯断裂でシーズン終了。ジェイレン・ジョンソンは右足首の捻挫で、オニエカ・オコングは左足の指を痛めて欠場している。それでも現地3月25日にセルティックスを相手に30点ビハインドから逆転勝利を挙げ、27日にトレイルブレイザーズを一蹴すると、翌28日に再びセルティックスとのホームゲームを迎えた。
ヤング離脱後に平均28.1得点でオフェンスを引っ張っているデジャンテ・マレーは、背中の痛みでこのセルティックス戦を欠場する可能性があったが、「プレーできる限りは試合に出るし、自分にできるベストを尽くす」と強行出場を選択。こうして迎えた試合で44得点を記録し、セルティックスとのオーバータイムを制する立役者となった。
フィールドゴール試投数は44回。決めたのは18本で成功率40.9%と効率が良かったとは言えない。それでも堅守を誇るセルティックスを相手に臆さず攻め続けた。自分一人で攻めすぎたことに対し「ひどいプレーだったと思っている」とマレーは言う。「あんなに多くのシュートは打ちたくないんだ。でも、コービー・ブライアントは僕を誇りに思ってくれるだろう」
1試合でのフィールドゴール試投数44本は、1984年に記録が取られるようになってから7番目の数字で、2016年にサンダー時代のラッセル・ウェストブルックが44本のシュートを放って以来となる。そして過去20シーズンでウェストブルックとマレー以外に44本以上のフィールドゴールを放った選手はただ一人、コービー・ブライアントだ。
そしてオーバータイムの残り6秒でジェイレン・ブラウンのシュートを浴びて逆転された後、逆転のプルアップジャンパーを決めたのもマレーだった。残り時間がない中、マークに付くドリュー・ホリデーをクロスオーバーで右から左へと相手を揺さぶって放ったシュートが決まって123-122と逆転。ステート・ファーム・アリーナの観客は総立ちとなった。
試合後の会見でのマレーは、隣に座るボグダン・ボグダノビッチを見ながら「彼がいなかったら負けていたのを忘れちゃいけない」と笑顔を見せた。ゲームウィナーはマレーが決めたが、第4クォーターの最後に同点の3ポイントシュートを決めたのはボグダノビッチだった。
マレーにとって44得点はキャリアハイの数字。しかし彼は「僕個人は、さっきも言ったようにシュートを打ちすぎるのは好きじゃない。今日は勝つためにそうするしかなかった」と語り、「あまり褒めないでほしい。まだ僕たちは目標を成し遂げたわけじゃないんだからね」と続けた。プレーオフ進出が目的であれば11位ネッツとの差はすでに6ゲーム差で、プレーイン・トーナメントは当確と言える。9位ブルズとは1ゲーム差で、この勢いなら残り9試合での逆転も可能だろう。
レギュラーシーズンで東西カンファレンスを合わせて最も安定した強さを見せているセルティックスを4日間で2度撃破したことで、ホークスを見る目は変わりつつある。今、ホークスを最も評価し、警戒しているのはセルティックスだ。ホークスがプレーイン・トーナメントを勝ち抜けば第8シードとなり、プレーオフのファーストラウンドで対戦する。セルティックスの指揮官ジョー・マズーラは「軽視などしていない。ホークスは本当に強いチームだと認識している」と語った。
ホークスはケガ人を抱えながら、目の前の一戦に全力を尽くすスタイルで4連勝を記録している。セルティックスを相手に30点差からの逆転勝利。そしてオーバータイムを制する勝利。どちらがうれしいかと問われたマレーとボグダノビッチは「どっちも」と口を揃えた。「勝てばどんな形だって構わないよ」