「何かを起こして試合にインパクトを与えたいんだ」
バックスは西部へ遠征した4試合で1勝しか挙げられずにミルウォーキーに戻ることになった。主力をごっそり休ませたクリッパーズには勝ったが、西カンファレンスで熾烈な順位争いを繰り広げる3チームには完敗。ウォリアーズには35点差で負け、レイカーズには最後のポゼッションを守り切れず逆転負け。そしてキングス戦では再び35点差での大敗を喫した。
キングス戦では第1クォーターに11本中8本の3ポイントシュートを決められ30-38と出遅れると、追い付こうと焦った第2クォーターにターンオーバー連発で自滅。どの選手も個人での打開ばかりに気が向き、キングスのブリッツやダブルチームの餌食となった。キングスの攻めのリズムを狂わせるはずのゾーンディフェンスはたちまち攻略され、前半終了時点で56-75。後半も立て直せずに点差を広げられ、94-129で敗れた。
バックスのフィールドゴール成功率は36.6%しかなく、3ポイントシュートは17.9%。キングスの53.3%、45.0%とはかけ離れた数字だった。バックスを率いるドック・リバースは「ボールが動かなかった」と課題を語る。「この試合の最初のプレーで、ある選手(マリーク・ビーズリー)がポンプフェイクをしてペイント内に入り、無理なシュートに行ってブロックされた。相手がプレッシャーを掛けてきたらキックアウトするように指示していたんだが、そうはならなかった。これがすべてだ。我々はタフショットを自ら打ちにいっていた」
ヤニス・アデトクンボは30得点13リバウンド4アシストと結果を出したが、チームが負ければ笑顔はないし、内容に納得できてもいない。「ボールを動かすべきだと分かってはいるんだ。でも、ポストで毎回ダブルチームされると突破したくなる。ただ受け身でパスするだけじゃダメだと思う。時にはダブルチームを打ち負かして、試合の流れを変えなければいけない。デイム(デイミアン・リラード)はいつもブリッツを受けるけど、彼はボールをキープしてその隙間を突破しようとする。その理由は理解できるよ。何かを起こして試合にインパクトを与えたいんだ」
「改善は必要だし、次の試合では必ず変わってみせる。ダブルチームやブリッツが来た時に適切なプレーを選択し、効果的にチャンスを作るよ。でも、それがヤニスやデイムの仕事なんだろうか。ただパスしていれば何かが起きるのか。これはチームリーダーであることの苦悩だ」
アデトクンボは過度に責任を感じすぎているのかもしれない。試合の流れに身を任せてプレーすれば上手くいくのに、個人での打開にこだわる。それでもキングスには脅威であり、止められないアデトクンボは14本のフリースローを獲得して得点を伸ばした。ただ、彼が『やりすぎ』た結果、ボールは回らずにチームオフェンスは機能しない。
それとは真逆のプレーをしたのがドマンタス・サボニスだ。フィールドゴール14本中10本と効率良く得点を取り、11リバウンド8アシストを記録。ブルック・ロペスとアデトクンボが目を光らすペイントエリアで強引なプレーを選択せず、相手を引き付けてはパスをさばいて3ポイントシュートのチャンスを作り続けた。そのサボニスはこれで47試合連続のダブル・ダブルを記録。ジェリー・ルーカスが1968年に作ったキングスの記録を更新した。
ディアロン・フォックスはサボニスの貢献について「どの試合でも必ず大活躍しているけど、人々はそれに慣れてすぎて特に話題にしない。すごく難しいことだし、成し遂げた人はほとんどいないレベルの働きだ。すごいことだよ」と称えている。
バックスにとっては屈辱の敗戦。ここから学びを得て変化し、なおかつ自分たちの良さを失わないままでいられるか。アデトクンボは「チームリーダーであることの苦悩」に向き合う。