WNBA最強シューターと真剣勝負「だから特別なんだ」
ステフィン・カリーにとって今回のNBAオールスターは10度目の出場となる。一度として同じ大会はないものの、今回は彼にとって特に印象深いものとなった。オールスター本戦で彼は初めてリザーブとして出場するが、それ以上に2015年と2021年の2度優勝している3ポイントシュートコンテストではなく、WNBAのスター選手、サブリナ・イオネスクとの対決を行ったからだ。
ニューヨーク・リバティでプレーするイオネスクは、昨年夏に行われたWNBAオールスターでの3ポイントシュートコンテストで圧倒的なパフォーマンスを見せ優勝を果たした。彼女はこの時にSNSでカリーに対し「対決してみる?」と呼びかけた。この時、カリーは「面白そうだ。決着を付けよう」と返答。そして先月、勝負を受けることを正式に表明した。かくしてNBAとWNBAの3ポイントシュート対決が実現した。
現地2月17日、3ポイントシュートコンテストの直後に、2人の対決は行われた。ルールは3ポイントシュートコンテストと同じ。先行のイオネスクは最初の10本のうち9本を決める好スタートを切る。NBAの3ポイントラインは女子よりも遠い位置に引かれているが、彼女にとっては何の問題もなかった。終盤にややペースを落としたものの、彼女の26ポイントは直前の3ポイントシュートコンテストで優勝したデイミアン・リラードと変わらぬ記録だった。
だが、カリーはそれを上回った。最初の3本のうち2本を落とすスタートとなったが、そこから連続成功で立て直す。最後のマネーボールラックを残した時点で21ポイント。これを4本決めて29ポイントとすると、コート上で軽やかに踊り、イオネスクと抱擁して健闘を称え合った。
イベント終了後の会見でカリーはこう語る。「彼女の素晴らしいスタートを見て、夏のWNBAオールスターでのパフォーマンスを思い出して、プレッシャーを感じたよ。ありがたいことに彼女の記録を上回り、素晴らしいエンタテインメントになった。通常の3ポイントシュートコンテストに出場していたとしても、僕らは2人とも決勝ラウンドに進出していただろうね」
カリーと並んで会見に出たイオネスクは「この舞台でシュートを打てたこと自体がうれしかった」と言い、こう続けた。「これはバスケ界全体にとって大きな意味があること。多くの若い選手を勇気付け、女子スポーツの可能性を信じていなかった人々に、私たちに何ができるかを示すことができました」
その言葉を、カリーはうなずきながらうれしそうに聞いていた。以前からカリーは自分のブランドを活用して、バスケを通した社会貢献に力を入れているが、そこで大切にしていることの一つが男女の垣根なく盛り上げることで、様々な活動のすべてで男子だけでなく女子も対象としている。そして彼自身も女子バスケに大きな関心を持ち続けてきた。今回のイベントでカリーは、男女のアスリートが互いに刺激を与えながら切磋琢磨していけることを実証した。
「彼女の活躍は、僕らのどちらかに自分自身を重ね合わせ、競争したいと願う少年少女のモチベーションになる」とカリーは言う。彼はイオネスクをライバルとして認めたからこそ、前日には彼女が練習しているコートにやって来て、楽しそうにブーイングをして集中を妨げようとした。「彼女にプレッシャーを与えたかったんだ」とカリーは笑顔で認める。
カリーとイオネスクが見せたのは、男子と女子のエキシビジョンではなく、偉大なシューター同士の真剣勝負だ。「そう、だから特別なんだよ」とカリーは言う。そしてイオネスクは、早くも次回の挑戦を楽しみにしていた。「ステフが勝ったのには理由がある。次は私が勝てるように頑張らないと」