早期のファウルにも動じず「アグレッシブに行った結果だと思います」
バスケ女子日本代表は、2月8日から11日にかけてハンガリーで行われた『オリンピック世界最終予選』(OQT)で格上のスペイン(86-75)、カナダ(86-82)に勝利し、グループ首位でパリ五輪出場を決めた。
第2戦でハンガリーに75-81で敗れ、かなり不利な状況に追い込まれた最終日のカナダ戦。日本代表はチームの生命線である3ポイントシュートを封じられた上で、191cmのナタリー・アチョンワ、193cmのカイラ・アレクサンダーらを中心にインサイドを執拗に突かれ、インサイドの大黒柱である髙田真希が早いタイミングからファウルトラブルに追い込まれた。
大会前にネット上で話題になった「センターが髙田1人しかいない」という的はずれな指摘はさておき、恩塚亨ヘッドコーチのバスケットをよく理解し、チームの精神的な柱でもある髙田が長くコートに立てないという状態に、筆者は少なからず不安を抱きながら試合を見守っていた。第4クォーター残り2分4秒、4点リードという状況で髙田がファウルアウトしたときはなおさら不安が募ったが、コートで戦う選手たちはそうは考えていなかったようだ。
髙田の交代メンバーとして大活躍した馬瓜エブリンは「誰が出てもリバウンド、ディフェンスをやりきれるメンバーだと思っていました。リツさん(髙田)がファウルトラブルになってしまっても悲壮感はなかったです」とコメントし、髙田本人も「(交代した)エブリンも良かったですし、ファウルトラブルになってしまったというよりアグレッシブに行った結果だと思います。恩塚さんがうまくタイムマネジメントしてくれて、『 短い時間で出し切ろう』って言ってくれていたので、自分が出ているときは流れを作れたかなと思います」と話している。
『5人の個』でなく『1つのチーム』として試合の流れやボールをつなぎ、戦ったバスケ女子日本代表は、リオ、東京に引き続いての五輪出場権を勝ち取った。
「東京オリンピック後から、自分たちには自信が必要だと感じていた」
五輪出場を決めた胸中を尋ねられると、髙田は「色んな感情があります」と言った。試合前に脳裏をよぎったのは12年前のOQT。「カナダに負けてロンドン五輪に行けなかったので、今回はやり返したい、勝ちたいっていう気持ちは強かったです」
昨年のワールドカップで五輪出場を決めた男子日本代表の存在も力になったという。「男子がすごく盛り上がっているのに、自分たちはそれをテレビで見ているなんてすごく悔しい。だからこそ必ず五輪に行きたいって思っていました。今は安堵感もありますし、 自分たちで出場権を勝ち取ったっていう嬉しさもあるし、色々引っくるめてとにかくうれしいです」
東京五輪で史上初の銀メダルを獲得し、トム・ホーバス体制から恩塚体制へとシフトした女子日本代表だったが、五輪と同等の順位を目指した2022年のワールドカップはグループラウンド敗退の9位。2023年のアジアカップ、アジア競技大会も目指していた結果は得られなかった。東京五輪からの歩みについて尋ねられた髙田は、次のように答えた。
「ワールドカップですごく悔しい思いしましたが、 悔しい思いをしてきてよかった思います。悔しいという過程があったからこそ、この大会にそれをぶつけられたと思いますし、こういう結果になったと思うので。 苦しい思いもたくさんしてきましたけど、東京オリンピック後もこうやって結果につなげられてすごくうれしいですし、チーム体制が変わってもこうやって結果を勝ち取れたことは自信につなげられると思います」
髙田と吉田亜沙美以外のメンバーにとって、五輪出場権がかかったOQTは初めて。世界で12枚というレアチケットを入手するするために、どの国も死にもの狂いで挑むこの大会はさまざまなドラマをはらむ。今回の日本にとっては格上のスペインに大金星を挙げたこともしかり、ランキング下位の開催国・ハンガリーに敗れたこともしかり、カナダに12年ぶりのリベンジを果たしたこともしかりだ。
「いろんなことがあるなって感じましたけど、自分たちがやることをやれば勝てるなという自信になりました」と大会を振り返った髙田は「高さに対しての対策はまだまだ課題があると感じました」と言及しつつも、「こういった課題を勝って得られたことがすごくよかったです。東京オリンピック後から、自分たちにはとにかく自信が必要だと感じていたので、すごく大きな収穫になりました」と続けた。
恩塚ヘッドコーチは、今回のOQTはあくまで「OQTに勝つため」の戦術・メンバーで挑んだと話しており、大会本番までにこれらが入れ替わる可能性もあるだろう。しかしOQTでチームとしての「自信」を取り戻した日本代表はこれを土台とし、半年間でさらなる進化を見せてくれそうだ。