「不意に彼らがいなくなったのを思い出す」
ジャズは26勝27敗で西カンファレンスの10位につけている。再建2年目のチームではあるが、若いヘッドコーチと若い選手たちは自分たちのキャリアを高めるためにバスケに打ち込み、経験の浅いチームとしては上々の結果を出している。レブロン・ジェームズを擁するレイカーズとは0.5ゲーム差、ステフィン・カリーを擁するウォリアーズとはゲーム差なし。NBAの歴史に残るスター選手を擁して優勝経験のあるチームでさえ、このリーグで1勝を挙げるのは簡単ではない。そこでジャズは苦戦する2つの優勝候補と変わらぬ結果を出している。
それでも、持てる力のすべてを発揮して勝利を重ねていこうとするチームに対し、フロントはまた別の考え方を持っているようだ。トレードデッドラインでシモーネ・フォンテッキオをピストンズに、ケリー・オリニクとオチャイ・アバジをラプターズに放出。ここで主力3人を指名権とトレードするのは、今シーズンは勝たなくていいと言っているようなものだ。
トレードデッドラインにしばしば非情な出来事が起きることは、選手たちも覚悟している。だが、チームが期待値以上の結果を出している状況で主力を放出することに、どうしても感情は揺れ動く。ラウリ・マルカネンはこの数日で味わった気分を「空虚感」という言葉で表現した。
現地2月8日のサンズ戦は3人を欠いて初めての試合となり、奮戦虚しく115-129で敗れている。ヘッドコーチのウィル・ハーディーは「あと3試合は、心穏やかには戦えないだろう」と語る。3試合とはNBAオールスターまでを意味し、このダメージはしばらく残るということだ。「役割が変わり、ラインナップが変わる。今までのようにスムーズにはいかない。この3試合でチームに何が起きるかを見て、それに対応したい」と指揮官は言う。
マルカネンは悩める胸中をこう明かす。「トレードはこのビジネスの一部だし、毎年ある出来事だけど、僕個人は慣れることができない。彼らは良い友人であり、今後も良いキャリアを築いてもらいたいと思う。でも同時に、できるだけ長く一緒にプレーしたいという気持ちもあった。むしろそれが本音だよ」
マルカネンはジャズに加入して以来、オリニクがシュート練習のパートナーだった。彼ら3人がトレードされたことは、ただラインナップから名前が消えるだけではない。「バスに乗って彼らの席が空いているのに気付いたり、試合前の練習でふとシモーネを探してしまったり。そうやって不意に彼らがいなくなったのを思い出す。毎年の出来事だけど、毎年同じような空虚感がある」
努力すれば必ず結果が出るものではないし、上手く行っていても右肩上がりに成長が続くわけでもない。タレントレベルでライバルに劣るジャズが昨シーズンに続き健闘を続けているのは、チーム内の結束が強かったからに他ならない。そこにトレードデッドラインで傷が入ってしまった。マルカネン自身もドラフト当日を皮切りに3度のトレードを経験し、この仕組みは理解している。ただ、彼の言う『空虚感』は今後も残り続けるのだろう。