PJ・ワシントン

「NBAでの夢を実現するチャンスを与えてもらった」

PJ・ワシントンはNBAキャリア5年目のトレードデッドラインで、再建チームのホーネッツから優勝候補の一つであるマーベリックスへと移籍することになった。同じ日にサンダーへとトレードされたゴードン・ヘイワードは直近の試合を欠場しており移籍は秒読みとなっていたが、ワシントンのトレードは最後の最後まで決まらず、彼自身も移籍の可能性を感じながら気持ちが揺れる難しい時期を過ごした。

再建中のホーネッツはすでにテリー・ロジアー放出を決めており、タレントを将来の指名権と交換する作業を粛々と進めていた。ただ今回、ホーネッツはマイルズ・ブリッジズのトレードを進めていたが、本人に拒否されたことで矛先がワシントンに向くこととなった。

グラント・ウィリアムズとセス・カリー、2027年の1巡目指名権がホーネッツに行き、ワシントンと2つの2巡目指名権がマブスへと渡る。マブスは2027年の1巡目指名権が1位か2位になった場合のみ保有できるプロテクトをかけている。2027年は大エース、ルカ・ドンチッチの現行契約が満了する年。最終年はプレーヤーオプションとなっており、ドンチッチがこれを破棄して他チームに移るというマブスにとって最悪のシナリオになった場合、完全に再建へと舵を切ってトップ指名の可能性を残すという、デリケートな判断となった。

とにもかくにも、そんなシナリオを未然に防ぐのがマブスのやるべきことであり、そのために昨夏に獲得したウィリアムズがチームにフィットしなければすぐに見切り、貴重な1巡目指名権を使ってでもワシントンへと乗り換えた。ワシントンはウィリアムズと体格がほぼ同じだが、3ポイントシュートはやや苦手とする一方で身体能力は高い。マブスでのワシントンはパワーフォワードとして身体を張り、運動量と泥臭い仕事をこなすと同時に、インサイドではドンチッチとカイリー・アービングのスペースを決して潰さず、むしろ広げてキックアウトからの3ポイントシュートを決めることが求められる。

センターの層を強化するのもマブスの狙いで、ここはウィザーズからダニエル・ギャフォードを獲得した。センターはルーキーながら先発を務めるデレック・ライブリー二世、ギャフォードとドワイト・パウエルと層が厚くなり、スモールラインナップを敷く場合はワシントンがここでプレーすることも考えられる。

ドンチッチというスーパースターを擁する以上、マブスには優勝争いを演じる義務がある。ただその一方で現状は29勝23敗の西カンファレンス8位と、結果が出ているとは言い難い状況で、だからこそこの時期にチームのテコ入れが必要だった。ワシントンもただ頑張っていれば良かったホーネッツとは違い、新天地では勝利への重圧を背負う必要がある。

それでも、移籍が決まった時点での彼はまだ気持ちの半分以上をホーネッツに残していた。ホーネッツの公式サイトで彼は「たくさんの感情がある」と語る。

「新しいチャンスに興奮しているけど、同時にここを離れる悲しみもある。間違いなく僕を育ててくれた場所だから、離れるのは寂しい。たくさんの人たちと関係を結び、良きチームメートと出会い、ここで家族を持った。そこから離れるのは難しいことだ。人々と仲良くなり、コート外でも関係を築くことが、僕にとってはすごく大事だった。バスケのこともそれ以外でも、何かにつけて気軽に電話して話をするような関係だ。僕はここで成長させてもらった。NBAでの夢を実現するチャンスを与えてもらった」

「ここには若いタレントがたくさんいる。この数年間でチームは成長し、成功して、みんな特別な体験をするはずだ。その時に自分がその一部を担っていたと言えるのはうれしい。僕はホーネッツがこれからもベストを尽くすことを願っているし、みんなが今後の僕も応援してくれることを願うよ」