ジェイレン・グリーン

勝負どころの第4クォーターでベンチを温める存在に

生まれ変わったロケッツはディフェンス力を武器に勝率5割を超える戦いを続け、今シーズンのサプライズチームとなっています。ジェームズ・ハーデンのトレードからドラフト指名権を集めて再建を図ってきた中で、今オフにイメイ・ユドカをヘッドコーチに招聘し、ベテランを補強したことで安定感が生まれたのが成功の要因ですが、その一方でチームの中心として育ててきたはずのジェイレン・グリーンは難しい立場に追い込まれ始めています。

2021年のNBAドラフト2位で指名されたグリーンは、Gリーグのイグナイト出身としても注目され、スピードとシュート力を武器にしたエースとして大きな期待をされてきました。グリーンに前後したドラフトではポイントセンタータイプのアルペラン・シェングン、ディフェンスとアウトサイドシュートのジャバリ・スミスJr.、そしてパワフルなウイングのタリ・イーソンを集めており、それはグリーンの周りに置くために、個人技で得点するタイプではない選手を求めてきたようにもみえます。

ルーキーシーズンに17.3得点を記録したグリーンは、2年目となった昨シーズンには22.1得点と早々にチームのリーディングスコアラーになりました。しかし、戦術の足りないチームにおいて得意な得点パターンを確立することなく、個人技による突破が頼み。しかも試合終盤の大事な場面でボールを託される機会も限られるなど、本当の意味でグリーンを中心にしたチーム作りが進められていたのかは疑問の残るところでした。

ポイントガードにフレッド・バンブリートを補強した今シーズンはコンビプレーの意識が高まったことで、シェングンが平均20.4得点でリーディングスコアラーとなり、確率の高いシュートが増えたスミスJr.のフィールドゴール成功率は40.8%から48.7%へと8ポイントも改善しました。これに対してグリーンは17.1得点、フィールドゴール成功率は39.6%と新しい戦術にフィットしているとは言い難く、次第にプレータイムも減っています。

特に試合終盤の大事な場面でヘッドコーチからの信頼を得られておらず、12月は11試合中4試合で第4クォーターにプレータイムがなく、出場した試合でも平均得点は1.7、フィールドゴール成功率は15%と悲惨な状況です。チームが好調を維持する中で、あまりにも不安定なグリーンはもはやエースではなく、フィジカルなディフェンスと突破力で貢献できるイーソンがクロージングラインナップに選ばれています。

グリーンは自分勝手な個人技に走る選手ではなく、闇雲なプレーで得点力を落としたわけではありませんが、初めの2シーズンでチーム戦術の中で自分の特徴を生かしてもらうプレーを構築できなかったことで、何をすれば効果的なプレーに繋がるのか分からなくなっているように見えます。チームの好調さとは裏腹にグリーンにとっては試練の3年目となっています。