ディロン・ブルックス

トリビュート映像に感動し「絶対に負けないと思った」

ロケッツはグリズリーズとのホームとアウェーでの連戦にいずれも勝ち、連勝を5に伸ばした。13勝9敗はレイカーズやサンズ、ウォリアーズを上回る成績で、ドアマットチームからの脱却を印象付けている。

グリズリーズとの連戦に強烈な敵愾心を持って臨んだのがディロン・ブルックスだ。2017年のデビューから6シーズンをグリズリーズで過ごした彼は、今年オフに延長契約を提示されずにロケッツへと移籍した。自分の能力を認めず、昨シーズンのプレーオフでの敗因のスケープゴートにされたような仕打ちに彼が反発を覚えるのは当然のこと。ただ、彼が普通の選手と違うのは、その怒りの感情をストレートに言葉にするし、コート上のプレーにも反映させることだ。

現地12月15日の連戦2戦目、先の試合を落としているグリズリーズにインテンシティで上回られ、ロケッツは前半を終えて45-55と2桁のビハインドを背負っていた。試合が始まって最初のタイムアウトで、ブルックスのグリズリーズ在籍時代のハイライト映像が流される。ブルックスは言う。「自分の家に戻って来た感覚だった。様々な感情が沸き上がったよ。ルーキー時代のこと、メンフィスでの生活、選手としての成長、人としての成長、ヴィラン(悪役)に変身すること。すべてが素晴らしかった。そしてこう思った。『絶対に負けない』とね」

前半のブルックスは得点わずか2。本職のディフェンスでは奮闘していたが、それだけだった。しかし後半にはオフェンスでも力を発揮する。グリズリーズ時代と変わらず、ロケッツでもオフェンスの局面での彼は『使う側』ではなく『使われる側』で、自分でクリエイトする回数は多くない。それでも、その機会が来ればアグレッシブに攻めた。

後半のブルックスはフィールドゴール13本中9本を決め、24得点を挙げた。もちろん、コートに立った40分間ずっと、グリズリーズのガード陣を執拗に追い回し、プレッシャーを掛け続けながらだ。その相手は主にデズモンド・ベインだった。第4クォーター途中にブルックスのドライブを止めたベインは、ブルックスに顔を近づけて何かを言い、テクニカルファウルを受けている。「ドリブルが下手だと言われたよ」とブルックスは明かす。「でも、あれは仲が良いからやることで、それが最近の審判のやり方だとしてもテクニカルファウルは余計だった」

残り40秒、ブルックスはベインのシュートチェックの前から、ロケッツの勝利を決定付ける3ポイントシュートを決めている。試合後、彼はこう語った。「グリズリーズには1回も負けたくない。彼らの判断が間違いだと毎回証明したい」

4年8000万ドル(約120億円)の契約は、当初は高すぎるのではないかと疑念を持たれたが、ロケッツのファンは彼の加入が正しかったと確信している。自分自身の活躍はもちろん、ポテンシャルは高くても勝つ経験のなかった若手たちに、ブルックスは勝つために何をすればいいのかを毎試合示す存在となっているからだ。古巣との連戦を前に、彼はロケッツのロゴを編み込んだ新しいヘアスタイルを披露している。トリビュート映像に心が動くことはあっても、今の彼は身も心もロケッツの選手だ。