「終盤にリバウンドを取り切れて速攻に繋げられたのが勝因だったと思います」
大学の男子日本一を決めるインカレは、群馬県太田市総合体育館で12月16日に準決勝、17日に3位決定戦と決勝が行われる。白鷗大、東海大、筑波大とともに4強入りを果たしたのが専修大だ。
専修大はベスト8で中京大と対戦。前半は堅守によって36-20とリードを奪うが、第3クォーターに入ると不用意なターンオーバーに加え、レフリーの判定にフラストレーションを溜める場面も見られるなどリズムを崩してしまう。そして、この試合で23得点を挙げた中京大のエース中野友都のタフショットなどで徐々に詰め寄られると、第4クォーター中盤には2点差にまで肉薄された。
だが、専修大はこの危機をジョベ・モハメドのインサイド、介川アンソニー翔のトランジションからのドライブによる得点と、1年生コンビの活躍で乗り切る。そして粘る中京大を振り切って74-64で勝利し、一昨年に次ぐベスト4進出を決めた。
専修大の中心選手である3年生ウイングの浅野ケニーは、9得点に留まったが4リバウンド3アシストに加え、堅実なディフェンスでチームの勝利にしっかりと貢献した。
「第3クォーター途中から第4クォーター途中まで相手のシュートが入り続けたこともあり、ディフェンスリバウンドから速攻に持っていくことはできませんでした。それでも終盤にリバウンドを取り切れて速攻に繋げられたのが勝因だったと思います」
このように勝因を語った浅野は、「春のトーナメントだったら絶対に切れてしまっていたと思う場面で我慢をできたのは、この1年間の成長だと思います」と振り返り、メンタル面の成長にも手応えを得ている。
「ファウルゲームで自分にファウルを仕掛けてくるならスタッツが稼げる」
2年ぶりの4強入りに「結構、安心しています」と浅野は語るが、その訳は1年前にある。昨年のインカレベスト8で専修大は日本大と対戦。最後までもつれる接戦となり、2点を追う第4クォーター残り0.2秒で浅野はフリースローを2本獲得した。しかし、1本目を失敗し、2本目をわざと外すが、クベマ・ジョセフ・スティーブのプットバックが決まらずに敗北を喫した。
もちろん敗因は、浅野のフリースローミスだけではないが、彼は自身を責めた。そして今回のベスト8には強い覚悟を持って臨み、大きな壁を乗り越えることに成功した。「意識はしていました。トラウマ的なものがあって、ベスト8の壁を越えられるか不安な気持ちはありました。結果的に越えられたので、次からは新しい自分で戦えます」
1年前のような重圧のかかる場面ではなかったが、第4クォーター途中には相手のテクニカルファウルで与えられたフリースローの機会を浅野が担当した。「終盤で任せられる場面があると思うので、練習のためにも打とうと思いました」と、辛い過去の記憶にも正面から向き合う逞しさを持っている。
「相手がファウルゲームで自分にファウルを仕掛けてくるなら、僕のスタッツが稼げるくらいの気持ちで戦っています。怖いのは怖いのですが、ここで変わらないと次のキャリアに繋がらないので。しっかりと乗り越えます」
今シーズンの専修大は、先発の4年生がスティーブだけであり、下級生の頃から試合に出ている浅野は名実ともにチームの中心選手だ。本人もそこはしっかりと意識している。「インカレベスト4は、1年生の時のキング開さんの代ぶりです。その時から主力で出ているのはスティーブさんしかいないですが、僕が上級生としてチームを導ければと思います。今までは得点能力が評価されていましたが、それだけでなくディフェンスやチームを引き締める発言の部分も常に意識しています」
4強入りの各チームに実力差はなく、準決勝は終盤までもつれる接戦となる可能性は高い。クラッチタイムでしっかりフリースローを決められるかどうかが勝敗の分かれ目となる展開は十分に考えられる。浅野が1年前のトラウマから逃げずに心身ともに研鑽を積んできた成果を披露した時、自然と専修大の結果にも繋がっていくはずだ。