ヤニス・アデトクンボ&デイミアン・リラード

デイミアン・リラード獲得を始めとする補強が成功

開幕を5勝4敗でスタートしてディフェンスの問題が浮上したバックスですが、以降は12勝3敗と例年通りの強さを発揮し、東カンファレンスで2位につけています。しかし、ディフェンスレーティングは22位と問題が解決したわけではなく、圧倒的なオフェンス力で打ち勝つスタイルが好調の要因になっています。それはドリュー・ホリデーとデイミアン・リラードのトレードが想定通りの結果に結び付いていると言える状況です。

現地12月13日のペイサーズ戦で、ヤニス・アデトクンボはキャリアハイの1試合64点を記録しました。シーズン平均ではフィールドゴールのアテンプトは少し減らしながらも、フィールドゴール成功率62.3%と高確率で決めることで平均32.0得点と、いずれもキャリアハイのスタッツを残しています。ポイントガードとしてプレーを構築するリラードの加入により、よりイージーな得点チャンスが生まれるようになりました。

3ポイントシュートが22.5%と低確率なだけでなく、2ポイントのジャンプシュートも34%と、相変わらずシュート力の問題は解決していませんが、起点がリラードとなったことで、1から10まで自分で仕掛ける必要がなくなり、ボールを持って迷う時間が減ったことで、ダブルチームやヘルプディフェンスに囲まれるシーンも激減しました。これにより確率の悪いジャンプシュートの本数が減り、ドライブにしてもカットにしても、スピードに乗った状態でのダンクやレイアップといった効率の良いフィニッシュが増えています。

リラードのゲームメークは得意のディープスリーを見せることでディフェンスを引き出し、シンプルにチームメートを使うのが特徴です。アデトクンボがボールを持つ『時間』は減りましたが、パスを受ける『回数』は増えており、これまでよりも広いスペースを得られることがジャンプシュートの回数を減らし、しかもパスを受ければテンポ良く仕掛けられることが高確率のフィニッシュを増やしています。リラードとアデトクンボの直接的なコンビプレーだけでなく、強みとなるプレーエリアの違いが相乗効果を生んでいます。

また、リラードだけでなくマリーク・ビーズリーとキャメロン・ペインを補強しており、明らかにディフェンスよりもアウトサイドシュートに比重を置いているだけでなく、マージョン・ボウチャンプやアンドレ・ジャクソンjr.、AJ・グリーンといった若手も確率良く3ポイントシュートを決めています。このこともアデトクンボにディフェンスが集中することを防いでおり、守れなくても勝ち切れるというチームの自信にも見えてきます。

アデトクンボの持つスピード、パワー、高さは誰にも止められない武器ではありますが、それは個人レベルの話であり、判断力とシュート力の悪さを誘い出すチームディフェンスで対処が可能でした。しかし、今のバックスはゲームメーク力とシュート力によって、アデトクンボにディフェンスを集中させないオフェンスを確立しつつあります。

ここから攻守のバランスを取りながらディフェンスの問題を改善していくのか、それともオフェンス向上に力を注ぎ続けるのか、目標を優勝に置くからにはさらなるステップアップを図る必要はあるものの、オフにガード陣が大きく入れ替わった中で新たな勝ちパターンを構築できたシーズン序盤でした。