個性派ぞろいの東山はゲームキャプテンの佐藤友(3年)とチームキャプテンの小泉広翔(3年)のダブルキャプテンがチームをまとめる。去年のウインターカップ予選で敗退した時には「バスケットを辞めたい」と思うほどの悔しさを味わった。今春までは強豪校に苦しめられたが、下級生の成長とともに3年生もそれぞれの役割に徹してチームが成長。2人は意見を交わし合い、時には衝突しながらも強い信頼関係を築きチームを牽引する。

「ディフェンスが頼れて勉強もできるのに運動音痴」

──自己紹介をお願いします。

佐藤 新潟県新潟市立上山中学校出身です。背番号は『4』で、ゲームキャプテンです。ポジションは一応何でもできるんですけど、今はパワーフォワードをやっています。好きなポジションは2番、3番のアウトサイドのポジションです。好きな食べ物はお寿司、オムライスといろいろあるんですけど、一番は母の作る唐揚げです。好きな有名人はtiktokerの加藤乃愛さんです。

小泉 東京都出身、私立実践学園中学校でした。背番号は『8』で、チームキャプテンです。ポジションは一応シューティングガードですが、自分的には相手のエースにつくディフェンダーだと思っています。好きな食べ物はたこ焼き。好きな女性芸能人は上國料萌衣さんです。

──それぞれ相手の紹介を。

小泉 友の一番の強みはリバウンドからのシュートと、正確なジャンプシュートです。瀬川琉久(2年)や佐藤凪(1年)のシュートがこぼれた時もプットバックしてくれる。困った時は友頼みで、攻守両面全部頼っています。コートを一歩出たら、良い意味でガキ大将感があります。良いやつなんですけど後輩、同い年含めていじってきます。特に自分をめちゃくちゃいじってくるんですよ。何かとニコニコしながら、楽しそうに。かっこいいっていうより可愛いです。

佐藤 ディフェンスはすごく頼れます。相手のエースや得点源を止めてくれるし、泥臭い部分で、こぼれたリバウンドやルーズボールを追ってくれる。オフコートだと頭は良いんですけど、バスケ以外は運動音痴。体育の野球の時もバットにボールは当たんないし、サッカーも空振りばっか。頭だけは良い。学年でトップレベルです。

──お互いにキャプテンとしてどうですか。

佐藤 自分は苦手です。あまり人に興味がなくて、「自分は関係ないし」と思ってしまいます。普段は小泉がやってくれて、練習中から大人で人一倍頑張っています。試合中もハードワークするんで尊敬できます。自分は試合で率先して声を出し、困っているところを助けたいです。

小泉 練習ではチームがキツイ時に声を出して、雰囲気を良くしようと常に考えています。友は締めるところを締めてくれる。みんながフワついた時に、普段は言わない友が一発言うことで、ピリッとなります。友は試合で一貫してプレーで見せてくれるし、お互いの役割がはっきりしているので信頼し合えています。

──去年、一昨年と悔しい思いをしました。

佐藤 一時期めちゃくちゃ仲が悪かったです。プライベートでケンカして、3カ月ぐらい口をきかない時期がありました。冷静になって解決してからは仲が良いです。いつもいじり合って楽しくやっていますし、言い合える仲で頼り合えているのは、そういう時期があったからだと思っています。

「去年の冬はバスケットを辞めたかった」

──3年間を振り返って、一番キツかった思い出は。

佐藤 2年時のウインター予選で負けた時です。自分の中でも悩んで「バスケット辞めたいな」と思った時期もありました。3年生が引退した2日後ぐらいに練習が再開して、チームミーティングをした後に大澤徹也先生と話して、「ちょっと今はバスケットをしたくない」という気持ちを伝えました。それで先生と話し合いをしました。「なんで出られないの?」と考えたし、他チームで取り上げられる同級生もいて悔しくて、やるせなかったです。そこで終わるんじゃなく、自分たちの代で日本一を取れば見返せる。吹っ切れたというかスイッチが入りました。

小泉 去年のウインターカップ予選で負けた時に一度、何も考えられなくなりました。大澤先生と友と自分とマネージャーの森脇巧翔先生と4人で話して、悔しかったから日本一を絶対に取らないといけないという思いがあります。今年の3年生は全体的にめちゃくちゃ仲が良いわけではないけど、上っ面の仲って良くないと思って全部言うようにしています。衝突も多いんですけど、最近は言い合うことでどんどん一つになり、その結果が近畿大会などの優勝に繋がったと思います。

──悔しい思いを経て成長できたところは。

小泉 新チームが始まって京都府の新人大会で京都精華学園に負けたんですよ。また一回仕切り直しになりました。1カ月後ぐらいに近畿大会があって、みんな自主練も最後まで集中してやって、優勝できて報われました。近畿大会で優勝しただけなんですけど、自分もすごくうれしくて、チームの雰囲気もポジティブに変わりました。

──4月末の飯塚カップでは開志国際や福岡第一、福岡大学附属大濠と対戦しました。

佐藤 やる前から「まだ勝てないな」と思っていました。開志国際とちょっと競れたのはラッキーで、福岡第一と福岡大学附属大濠にコテンパンにやられたのは、まあこんなもんでしょうと。正直、飯塚てカップでこの3チームに勝てるビジョンは見えなかったです。それを糧にインターハイで勝てればいいなと思っていました。負けるのは嫌で、悔しかったんですけど、ポジティブに捉えられたのは良かったです。

──インターハイ、トップリーグ、ウインターカップ予選を通じて東山の評価が一気に上がってきています。

小泉 一番は1年生の佐藤凪と、カンダ・マビカ・サロモンが入ってきたことですね。スタメンのチームは佐藤友、瀬川、佐藤凪の三銃士と呼ばれるようなオフェンスのチーム。逆に2チーム目に3年生が多くディフェンスのチームとなった時に、試合中の役割が明確になった。自分だったらディフェンス、控えガードの伊計叶貴なら、テンポをバーンって速くしようとか。インターハイは役割を徹底しました。それがすごいハマって、どんどん強くなったという感じです。

──優勝したときに踊る東山のダンスの伝統や由来を教えてください。

佐藤 あれを元々やっているチームは、サッカーJ2のロアッソ熊本です。自分も気になって調べてみたんですけど、ロッソっていうのが赤という意味。サッカー部が真似して、それをバレー部がして、さらにその真似を自分らがした感じです。初めてカモンロッソを見たのは、米須玲音さん(現日本大3年)が2年時の2019年インターハイ予選でした。でも実は本家が東山じゃなく、ロアッソ熊本だという。

──あれにはどういう意味が込められてるんですか。

佐藤 分からないです。特別な感じがするんですよ、優勝した時にしかできないものなので。

小泉 あれをウインターの舞台でできたら気持ちいいんだろうなって、みんなで想像しています。

「会場を味方につけられるような戦いを」

──対戦カードが発表されました。

小泉 結構楽しみなチームが多いです。桜丘の舘山洸騎、福岡第一が上がってきたら崎濱秀斗もケガから戻っていると思うし。開志国際か藤枝明誠か分からないですけど、どのチームにもすごいエーススコアラーがいる。一番キツイブロックだと思いますがそこを叩き潰したい。

──個人的に負けたくない選手、チームを教えてください。

佐藤 チームは開志国際です。今年1回も勝っていなくて、トップリーグでやっと背中が見えてきた感じなので勝ち切りたいです。個人はやっぱり(崎濱)秀斗ですかね。高校に入ってからずっと仲良くて、アンダーの合宿でずっと一緒にいました。秀斗は日本語が下手くそすぎて、たまに会話にならないんです。そして、寝るのがめっちゃ早いです。たまにテスト期間とかに電話するんですが、午後10時ぐらいにかけても「寝てた」とか言って朝8時ぐらいに起きる。自由気ままに生きているなって感じがしますね。秀斗はアメリカに行くので、高校最後にメインコートという舞台で戦いたいです。

小泉 開志国際に勝ちたいんですけど、インターハイで負けた日本航空に最後、借りを返したいです。

──今年は優勝を十分に狙える力がある。

小泉 初戦で当たる桜丘さんも、どのチームも怖いです。でも、そういうチームと何回もやって、これで勝ったら真の優勝だなって。東山は今シルバーコレクターみたいになっているんです。バレー部もインターハイ2位で、国体も2位。春高予選も2位。バスケ部もまだ1回も全国取っていないくて、先生が多分一番思っていると思います。

──バレー部と「お互いに日本一を取ろう」と話している。

佐藤 お互いに日本一取りたいねという感じなんですけど、今年はバレー部が負けちゃったので、その分も自分たちが1番を取りたいです。

小泉 バレー部のキャプテンと仲が良いいんです。3年間一緒に頑張ってきたので、その分も背負って俺らが勝てたらなと思っています。サッカー部も昨年度の全国選手権で準優勝して、インターハイに関しては、クラスにいる6部のうち5部出ているんです。卓球、テニスも。自分たちはずっと全国大会に出られなくて、他の部活の応援に行っていました。この冬のスポーツでは自分たちしか出ないので、学校を代表しているぐらいの勢いで日本一を取りたいです。

──最後にメッセージをお願いします。

佐藤 まずは18年間育ててくれた母と父には良い景色を見せてあげたいです。高校1年の夏に大好きな祖父が亡くなったんですが、自分が活躍している姿を見て、近所の仲間に自慢してくれていました。それがうれしかったんですけど、そんな存在がいなくなった分、日本一を取って両親や祖母、姉と、今まで支えてくれた人に恩返ししたい。OBをはじめ東山に関わってきてくれた方々に「今年の東山は一味違うぞ」って見せつけて、みんな笑顔で終わりたいです。

小泉 保護者の方や父と母に感謝しているんですけど、一番は大澤先生ですね。3年間いろいろあって、言い合いになったこともあったんですけど、自分たちのために動いてくれました。先生が多分、一番日本一を取りたいと思うんですよ。自分たちもそうですが、先生と一緒に優勝して、先生と笑って卒業できたらって思いが一番なので、そのために頑張ります。