小川敦也

「自分たちの流れが来る。やることをやれば負けないと思っていました」

大学バスケットボールの日本一を決めるインカレの男子ベスト16で、筑波大と日本体育大の強豪対決が行われ、筑波大がオーバータイムまでもつれる激闘を75-73で制した。

日体大は堅いディフェンスでペースをつかみ34-24で前半を終える。後半の立ち上がりも日体大のペースは続き、長いリーチを備えた長身留学生センターのジャンピエール・ムトンボに加え、ガード陣も積極的にアタックを繰り出すことでリードを広げていった。

しかし、筑波大は劣勢の中でも集中力を切らさずに粘りのディフェンスを続けていく。そして、日体大が外からの単発シュートと、ボールムーブに欠けたオフェンスが続いた隙を見逃さず、チームの持ち味である堅守速攻を繰り出すことで流れを引き寄せた。37-45とビハインドを一桁に戻して第4クォーターを迎えると、3ポイントシュートにも当たりが来ることで、試合は完全に筑波大のペースに。そして逆転に成功し、残り2分半には5点のリードを奪った。ここから日体大の粘りに遭いオーバータイムに持ち込まれるが、試合の主導権は渡さない。4年生エースの三谷桂司朗、3年生ポイントガードの小川敦也と、2人の大黒柱が得点を重ねることで競り勝った。

筑波大の小川は17得点10リバウンド6アシストと、190cmのサイズを誇る大型司令塔の本領発揮で攻守に渡って躍動。リバウンドを取ると、そのままボールをプッシュして一気に敵陣へと攻め込み、次々と得点機会を作り出した小川の活躍なくして筑波大の逆転勝利はなかった。

今年の筑波大は、関東大学バスケットボール連盟のリーグ戦では、安定感を欠いたプレーが目立ち7位(9勝10敗)と苦しい時期を過ごした。しかし、この大一番で見事な修正を果たし、小川もリーグ戦の反省を生かすことができたことを勝因に挙げる。

「後半の最初、点数が離れた場面でも粘り強くプレーし、仲間を信じて戦うことができました。自分たちは(関東大学)リーグ戦で離された時に我慢できなかったのが課題でした。それを修正しようと、インカレまでの練習でずっと意識してきました。最後まで戦い続けていれば、自分たちの流れが来る。やることをやれば負けないと思っていました」

また、自身が起点となり、後半の見事なカムバックを導いたトランジションオフェンスについては、「ディフェンスからの速攻が筑波のバスケです。そして自分の持ち味も速攻です。自分だけでなく、周りもしっかり走ってくれました」と自信を見せる。

小川敦也

「勝った瞬間は今までやってきたことが無駄ではなかったと感極まってしまいました」

小川自身のパフォーマンスを見ると第4クォーター、オーバータイムと、ここ一番で得点を決める勝負強さも光った。司令塔としてゲームコントロールに加え、得点面にもこだわりを見せる。

「ポイントカードとして周りを生かすだけでなく、得点も取ることが自分の持ち味です。リーグ戦では周りを生かす時、自分が攻める時のバランスが悪いと、負ける試合が続いていました。劣勢の時、負けている時は自分がより攻める意識を強くしています」

筑波大はインカレでの強さに定評があるが、昨年はベスト16で中京大に56-61で敗れ、連続ベスト4以上の記録が8年で途絶えてしまった。昨シーズンも中心選手としてプレーしていた小川にとっても、「去年は本当に先輩に任せっきりで、気づいたら試合が終わっていました」と大きな後悔が残った。

だからこそ、今大会は同じ過ちを繰り返さないと決意し、大黒柱としての覚悟を持ってコートに立っている。「筑波のエースは三谷さんですけど、三谷さんだけでは相手も絞りやすいと思います。自分もチームを引っ張っていきたいです」

2年続けてのベスト16敗退を阻止し、リーグ戦の課題を克服しての勝利は大きな弾みがつくものだ。だからこそ「勝った瞬間は今までやってきたことが無駄ではなかったと感極まってしまいました」と、勝利が決まった後の小川の目には光るものがあった。

だだ、すぐに「気持ちは切り替えました。明日負けたら意味がないので頑張っていきます」とベスト8に向けて集中している。小川を筆頭に大きな手応えをつかんだ筑波大の、明日以降の戦いがより楽しみになる激闘だった。