文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

ディフェンスの奮闘から攻撃のリズムを作り出し、オーストラリアと競り合う。

「バスケットボール女子日本代表国際強化試合2016 三井不動産 BE THE CHANGE CUP」の最終戦。オーストラリアとの3連戦のうち、5月7日の初戦は良いところなく大敗、9日の第2戦は後半に持ち直したものの、終始大きなビハインドを背負う展開で、見せ場は作ったものの限られた時間帯に過ぎなかった。そして最終戦となった今日、日本は過去2戦とは違うアプローチで試合に臨んだ。

第2戦は慎重にプレーした前半にオーストラリアに圧倒され、後半に気持ちを切り替えて思い切りの良さを出して善戦した。この収穫を立ち上がりから生かし、日本代表は積極的に「リスクを取った」のである。

司令塔の吉田亜沙美は素早いパスワークに加え、チャンスがあると見れば奪われるリスク覚悟でペイントエリアにバウンドパスを送った。本川紗奈生と髙田真希は強引なまでの積極性でドライブを仕掛け、シュートまでは行かずともファウルをもぎ取った。誰もがリングに向かう意識をむき出しにする序盤だった。

吉田が試合後に振り返る。「良い形で入れましたし、ディフェンスもオフェンスもリズム良く攻めることができました。スタートの5人の入りがすごく良かったです。前の2試合は気持ちの部分で逃げていましたし、今日は向かっていく気持ちが強く出ていました」

的確なパスでオフェンスをリードしつつ、ディフェンスでも精力的かつ頭脳的プレーを見せた吉田。

この「リスクのある攻め」はオーストラリア代表を慌てさせ、競り合いに持ち込めなかった過去2戦とは異なる展開を生み出した。しかし、日本がリードするには至らない。オフェンスでリスクを取るだけにディフェンスはやや甘く、インサイドに簡単にボールを運ばれ、相手のシューターが当たっていたこともあって失点を重ねた。

それでも第2ピリオドの終盤、布陣変更が機能せずオフェンスが停滞するオーストラリアとは対照的に、日本代表は攻守が噛み合い、一気攻勢に出て逆転する。オフェンスリバウンドからの展開で本川が決めた3ポイントシュートを皮切りに、スティールを決めた吉田がそのまま速攻を決める。そして山本千夏が、3ポイントシュートを狙うと見せかけたカットインから髙田のゴールをアシストしてついに逆転(41-40)。続くプレーでゴール下に攻め込んだ相手選手を囲い込んでボールを奪うと、速攻から山本がレイアップを沈めて、日本代表はこれで13-0のラン。43-42とリードして前半を終える。

後半に入って一時は逆転を許すも、栗原三佳が2本連続の3ポイントシュートを、髙田も前半に続いてインサイドで激しい競り合いを演じながらしぶとくシュートを沈めて、オーストラリア相手に一歩も引かない戦いを演じる。立ち上がりとは打って変わって、後半に入るとディフェンスにも注力。読みが冴え渡った吉田を中心に、ただ走るだけでなく巧みな駆け引きを含めた守備を見せた。

58-61でスタートした第4ピリオド。オーストラリアの3ポイントシュートが決まり始めて一時は突き放されるも、栗原と本川が立て続けに3ポイントシュートを決めて食い下がる。間宮佑圭がフリースロー2本を決めて71-73、残り4分49秒の時点で1ポゼッションゲーム。吉田のリバウンド奪取から本川のシュートにつなげた2分23秒のプレーまで(73-77)、日本は勝利の可能性を見いだしながら戦った。

それでも最後の2分間は勝負強さを発揮できず。相手より良いポジションを取ることでリバウンドを譲らずオーストラリアに食らい付くも、肝心のシュートが入らない。逆にオーストラリアにチャンスを確実に決められて突き放されてしまい、終盤にファウルゲーム戦術を使うも功を奏さず。最終的に73-84でゲームを終えた。

握手する栗原(左)と本川。2人とも積極果敢なプレーを貫き、3ポイントシュートで強豪国を苦しめた。

3戦全敗には終わったが、日本代表は試合を重ねるたびに大幅に向上してみせた。昨年にアジアを制したチームがベースとなっているが、実戦から遠ざかっていて試合勘がなかったこと、オーストラリアのような高さも幅もある大型選手の対応に戸惑ったことで実力を出し切れなかったが、対応できるだけの能力があることを示した。オーストラリアはただ大きいだけではない。3ポイントシュートもあるし、フリースローも苦にしなかった。そんな世界の強豪に対し、4日間で3試合を戦う短期間でどう対抗するかを学び、実践できたことは収穫だ。

試合後、吉田知秀ヘッドコーチは今回の強化試合を振り返ってこう語った。「この3試合、良い経験ができました。ここから日本らしいバスケット、そして強いチームを作っていけるように強化していきたいです。オリンピックで戦い抜けるチームを作っていきたいと思います」