楠元龍水

ウインターカップ2連覇を誇る延岡学園が3年ぶりの出場を果たした。2018年に就任した楠元龍水コーチは「日本一応援されるチーム」を掲げてチームを成長させ、夏のインターハイでは開志国際を苦しめた。NBAサンズの渡邊雄太は尽誠学園時代のチームメートで大親友。その活躍は楠元コーチ、生徒の刺激となっている。

「延学で」という生徒が勝たせてくれた

——ウインターカップの出場権を獲得して、率直な感想を教えてください。

今年は力的にも結果を出さないといけない年でもありましたので、まずは出場権を獲得できて、生徒たちに感謝しています。

——やはり宮崎県といえば、毎年多くの学校が鎬を削っているイメージが強いです。

赴任して5年が経過しましたが、互いに競い合える学校が県内にあることは非常に大きいです。もちろん敗れたときは悔しいですが、だからこそ強くなれると確信しています。2年間勝てなかった苦しい時期を乗り越え、今回勝たせてくれた生徒に感謝しかありません。3年ぶり18回目となるウインターカップに向けて、私も生徒もさらに成長して臨みたいです。

——ウインターカップに出場できなかった間、チーム状況はどうでしたか。

就任当時は30人ぐらいの部員数だったのが、去年は65人と倍以上に増えて、ここで頑張ろうという生徒が増えました。しかしながら、なかなか結果に繋がらず、すごく考えさせられました。2019年はインターハイも、ウインターカップもベスト8に入りましたが、このままのバスケットでは日本一は取れないなと思ってもいました。自分のバスケットを通して、生徒を日本一に導くという挑戦の途中ではあるものの、結果が伴わなかった。年齢も経験もまだまだ浅いんですけど「楠元のバスケットって何だろう」って考えて、年々突き詰めていけば、目標に近づくという強い信念がありました。「負けていたとしても、楠元の言葉を信じてついていこう」と生徒たちに思ってもらう。それが一番苦労しました。

——突き詰めたことは

まずは負けにくいチームにならないといけないと思いました。「勝たせる選手」は、しっかりストップできる、ピボットをしっかり踏める、目線はどこにあるかなどを理解している選手。そういう細かい部分を突き詰めていくことが試合の細部に繋がり、ディシジョンメイクや良いシュートをクリエイトすることに生きてくると考えました。そのためにも反復練習が必要になります。バスケットはオフェンス、ディフェンスの繰り返しなので、どういうオフェンスの終わり方をすれば、ディフェンスがどう始まるかというシナリオが固まってきます。今は速いトランジションを中心に、目指すスタイルを生徒に理解してもらっています。 個々にフォーカスしている部分と、チームオフェンス、チームディフェンスを浸透させる考え方を理解してもらうのに時間はかけました。

——その上でチームが大切にしている部分はなんでしょう?

チームの掲げている理念の一つに、「我々の取り組む姿から感動や勇気を与える」とあります。目指すスタイルを堅守速攻という大きなフレームで考えると、オフェンス、ディフェンスをだらだらしているバスケットよりも、アップテンポな方が見る人に活力を与えられるんじゃないかなと。激しいディフェンスからの速いトランジションは、もっと深めていきたいです。それから、夏以降、ハーフコートバスケットにも取り組んでいます。県予選決勝ではやりたいオフェンスができず、不完全燃焼でした。この部分やバスケットIQを高めることが今後の試合のポイントになります。

——6月の九州大会で福岡大学附属大濠に競り勝りました。

指導者になって、九州大会の準決勝までいくものの、福岡第一さんや福岡大濠さんにこの5年間すべて負けてきたんです。やはりこれまで勝てなかったチームに勝つのはすごく難しいことですよね。尚且つ2年間全国に出ていない生徒たちなので。県総体で小林高校さんに勝ったことも含めて、自分たちのスタイルを確立させ、自信を持って挑んだ結果、勝ちがついてきました。ステップを踏んで勝ったことが本当に大きいと感じています。

——目標とする「日本一応援されるチーム」へ少しずつ近づいているように感じます。

今年の大きな収穫は、北海道インターハイの開志国際高校さんとの試合を見ていた北海道在住の方が学校に手紙を送ってくれたことです。劣勢の試合を最後までチーム全員で戦う姿や、終わった後の立居振る舞い、そして帰りの電車での行動を見て感動し、これからさらに応援したいという内容でした。正直涙が出る程嬉しかったです。自分たちの目指すスタイルが間違っていなかったと自信にも繋がりました。

目標は日本一応援されるチームですので、コート内外で見ている方々に感動してもらえるような立ち振る舞いができなければ、試合に勝っても目指している勝利ではありません。しかしながら、ウインターカップ前なのに、学校や寮での生活面を理由に練習を取り上げるようなことが、この1カ月の中でもありました。 思いは高まってきているものの、バスケットボール以外のところにも喝を入れている部分もあるような状況ですね。

「良い意味でもっとバスケットに集中できるようになった気がします」

——プライベートな話になりますが、結婚されて変わったところは。

教員を始めて7年目ですけど、6年間ずっと寮監でした。7年目のタイミングで晴れて結婚生活が始まって、寮を離れました。生徒をちゃんと見るのはもちろんですけど、私自身、仕事とプライベートで頭の切り替わりの部分が大事だなと実感しています。そういう面でも妻は心の支えになっています。インターハイも、北海道まで見に来てくれたんですよ。開志国際に負けて私よりも悔しがっていました(笑)。そういう存在がいるのは、やはりありがたいですね。

——良い意味で考える時間が増えたのでは。

籍を入れたのは今年2月で、3月31日まで寮監をしないといけなかったので、籍を入れても別居が続いていました。4月1日からやっと共同生活が始まったので、4月、5月の学校と家を行き来する車の中で、すごくそれは感じました。頭や心の切り替えができるようになって、良い意味でもっとバスケットに集中できるようになった気がします。

——今年、渡邊雄太選手に会いにアメリカへ行かれたと聞きました。

婚前旅行でブルックリンに1週間ほど行きました。それこそ、渡邊夫妻と毎晩ご飯を食べましたし、ご両親も来られていたので、そういう時間も海外で共有できました。大親友ですけど、一緒に寝泊まりしていた男旅から、お互い家庭を持って顔を合わせる。僕らもそういう年なのかなって感慨深かったですね。

渡邊の活躍に「間違っていない」と背中押され

——渡邉選手がNBAで活躍する姿を見てきたことは刺激になりましたか?

今大会も「これで結果を出すんだ」と60通りの思いを持ったチームが集結します。自分たちも今こだわっていることの答え合わせをやっていきます。やっぱり渡邊のプレースタイルは参考にしかならないですよね。間違ってないんだって思わせてくれる選手ですので、背中を押してもらえますし、彼の姿にチームも僕もいつも刺激をもらっています。

——対戦カードが発表されました。どのような印象を受けましたか。

組み合わせをそんなに気にしていないと言えば嘘になります。しかし、対戦相手にかかわらず、自分たちが目指しているオフェンス、ディフェンスを突き詰めて完成を迎えて大会に臨みたいという強い想いがあります。見ていて面白いオフェンス、思わず良いな、応援したいなと思われるディフェンスをしっかり披露できる大会にしたいですね。

初戦で対戦する美濃加茂(岐阜県)さんはインターハイでは序盤で敗れていますが、本当に上位まで勝ち上がる力のあるチームだと思っています。まずは自分たちのバスケッ トを美濃加茂さんにぶつけたい。目指すバスケットを一つずつ積み重ねていって、6試合全部勝ち抜いて優勝をつかみ取りたいと思っています。日本一という目標は、全国の舞台に立てない時からずっと言い続けていることです。今、ようやく生徒のおかげでスタートラインに立てました。みんなでハドルを組んでそこに向かって頑張りたい。それだけですね。

——キープレーヤーを教えてください。

4番の成松輝彩と6番の竹江蓮のツーガードを中心に、速い展開が始まります。今はそれに、留学生の5番ンジェ・シェキや10番の内田悠介、9番の永徳翔というスタートの5人です。190cmを超える選手もトランジションに入ってくるので、まずはスケールの大きいトランジションを、小さい選手も 大きい選手もコートで体現したいなと思います。中でも4番の成松は1年生時から試合に出ていますし、「最後は成松と一緒に心中できるな」と思えるほど彼には信頼を置いています。県大会決勝も頼りになりましたし、ゲームキャプテンでもあるので、高校生活最後の大舞台でチームを優勝へ導いてほしいですね。

——最後に試合を見てくれる方々にメッセージをお願いします。

延岡学園にはコートに出ている5人と、マネージャー含めベンチには11人います。それから、メンバー外の40人。みんな素敵な心を持った子たちの集団です。一体感にあふれた、40分間のチームの戦いぶりを見ていただきたい。 それが、自分たちの目指す日本一であり、日本一応援されるチームの姿だと思っていますので、是非、情熱にあふれた生徒一人ひとりを見ていただきたいです。