ビッグネーム不在で躍進を続けるネッツ、舵取り役を担うディアンジェロ・ラッセル

2019/02/01
NBA&海外
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ディアンジェロ・ラッセル

文=神高尚 写真=Getty Images

主力が次々に戦線離脱するもチームの勢いは衰えず

最近のNBAで最も勢いのあるチームがネッツです。12月5日のサンダー戦に敗れて8連敗、この時点でシーズン成績が8勝18敗となるものの、それ以降は20勝6敗とリーグ2位の成績を残しています。3シーズン続けて30勝に届かなかった弱小チームが早くも昨シーズンの勝ち星に並びましたが、オフに大型補強したわけではなく、むしろトレードで獲得したビッグネームのドワイト・ハワードが「プレーオフに出場できるチームでプレーしたい」という希望を出したことでバイアウトに合意するなど、スター選手が集まらない状況になっていました。

しかし、このバイアウトもネッツの戦略でした。サラリーキャップが厳しく、また契約できる選手の人数が少ないなど制限の多いNBAのルールの中で最大限の成果を発揮するため、他のチームで高いサラリーに見合わない活躍度の選手を引き取り、その代わりにドラフト指名権や無名の若手選手も獲得してはチームの中心に育ててきました。無名でも才能を見いだした選手には時間とチャンスを与えるために、サラリーの高いベテラン選手とはバイアウトを繰り返します。現在のネッツはチームのサラリー総額の3分の1を「すでにチームにいない選手」へ支払っている奇妙な状況です。

集められた選手たちはヘッドコーチのケニー・アトキンソンにより、NBAの中でもトップクラスの高度な戦術を叩き込まれ、昨シーズンから素晴らしい内容のバスケットを展開していましたが、その一方で勝ち切るための個人能力の不足も目立ちました。今シーズンは3年目のカリス・ラベートをエースとして、開幕から5割の成績を残したのですが、そのラベートがケガで離脱すると接戦に勝てなくなり連敗の日々が続きました。

ラベートだけでなく、ケガ人が多いチーム状況の中で苦しんだネッツでしたが、一気にステップアップしたのがディアンジェロ・ラッセルです。1月の個人スタッツは23.7点、7.1アシストとその才能を開花させ、チームに勝利をもたらし始めました。

ラッセルの特徴は滑らかな動きと独特のタイミングから繰り出される予測不能なプレー。連続したスクリーンとオフボールムーブを繰り返すネッツのチームオフェンスにおいて、一瞬のスキを見逃さないパス能力は特に重要な意味を持っています。その一方でラッセル本人の得点力に課題があり、エースとしての役割は果たせませんでした。

いくら『読めない』プレーでディフェンスを引き離しても肝心のフィールドゴール成功率が低く、ディフェンスからするとはっきり止めるのは難しくても、少しでもバランスを崩させれば外してくれるので警戒しすぎる必要がなかったのです。今シーズン序盤もイージーなレイアップシュートを外すシーンが多くありました。

1月に入ってからはフィールドゴール成功率が49%と上がりましたが、レイアップの確率は46%程度といまだに苦手。今シーズンのダンク数は1本のみ、スピードやジャンプ力といった運動能力で勝負するタイプではないだけに、ゴール下まで行っても高さに負けてしまうのです。それを補っているのは、ゴール下に行く前に打つフローターとショートレンジのジャンプシュートの向上で、よりゆっくりとしたプレーでリングから離れた位置から多く打つようになってきました。レイアップよりもジャンプシュートの方が確率の高い珍しい選手です。

ジャンプシュートの改善は3ポイントシュートも同様で、自分で切り崩してから打つプルアップ3ポイントシュートの成功率は45%を記録しています。リングから離れた位置で勝負してくるラッセルのシュートへの警戒は、ディフェンスにより多くのスキを生み出すことになり、アシストも増加してきました。単に個人が活躍するのではなく、個人の活躍がチーム全体に波及する好循環を生み出しています。

複数のスクリーンとオフボールムーブをしながら、フロアバランスを崩さないポジショニングによって多くの3ポイントシュートとゴール下シュートを生み出すネッツのオフェンス。チーム全体にパスを配給するだけでなく、チームのコンセプトと少し違うジャンプシュートを武器に得点しているラッセルに引っ張られ、チームは好調を維持しています。

ネッツはとにかくケガ人が多く、ラベートだけでなくアレン・クラブやランディ・ホリス・ジェファーソン、ジャレット・ダドリーといったスターターに名前を連ねていた選手が次々にケガで離脱していますが、その穴を埋めるようにトレバン・グラハム、ロドニー・クルッツ、セオ・ピンソンといった無名の選手が次々に活躍し補ってきました。

現在は28勝24敗、東カンファレンスの5位でプレーオフ圏内をキープしています。それでもラッセルとともにチームの主役であったスペンサー・ディンウィディーまでがケガで手術に踏み切り、離脱を余儀なくされました。この苦しいチーム状況でも勢いを継続しプレーオフに進めるのか。チームの顔として、そしてオールスター選手としてのさらなる大活躍が求められるディアンジェロ・ラッセルです。