序盤から強固なディフェンスを遂行した京都が連敗脱出
京都ハンナリーズは11月11日、ホームに信州ブレイブウォリアーズを迎えた。前節まで1勝11敗と結果を残せていない京都だったが、終始相手を圧倒し、一度もリードを許すことなく74-62で勝利した。
序盤から信州の連続ターンオーバーを誘発した京都は水野幹太と岡田侑大が立て続けに得点すると、トランジションでもチャールズ・ジャクソンが得点し、完全にイニシアチブを握る。信州のロン・ジェイ・アバリエントスに3ポイントシュートで返されるも、京都はトランジションが機能し、開始3分で10-3とリードを作り早くも信州にタイムアウトを取らせた。ここでエースの岡田が2つ目のファウルを犯しベンチへ下がるも、マシュー・ライトの3ポイントシュートやジャクソンのダンクなど攻撃の手を緩めず点差を10点まで広げる。栗原ルイスに2本の3ポイントシュートを許すも、2ポイントシュートを高確率で成功させた京都が23-11で第1クォーターを終える。
第2クォーター、タイトなディフェンスで信州の攻め手を潰していた京都だったが、不用意なファウルからフリースローを与えてしまい追い上げを受ける。ここで流れを変えたのがコートに戻ってきた岡田だった。ショートコーナーのジャンプシュートを的確に沈めると、次のオフェンスではドライブでディフェンスを抜き去り、バスケット・カウントを獲得して再び点差を2桁に戻す。その後、終盤にインサイドでの失点が続いたものの42-32で前半を終える。
第3クォーターに入っても京都のリズムで試合は展開。ライトの3ポイントシュート、岡田のドライブと積極的なプレーで得点を重ねていく。特に岡田はピックを使ってディフェンスを切り裂いていき、多彩なフィニッシュパターンを見せて、この日15得点を記録した。ケビン・ジョーンズやライトが3ポイントシュートを沈め、ディフェンス強度を上げて引き離しにかかり、62-46とリードを広げて最終クォーターへ。
お互いにシュートミスが続く展開となったが、インサイドアタックをうまく使った信州が追い上げを見せる。京都は3分以上にわたって得点が止まる苦しい展開に。そして、サイモン拓海に3ポイントシュートを決められ、点差が8点に縮まったところで、京都はタイムアウトを取り発選手に戻した。その後、良いオフェンスの形を作るものの、ゴールに嫌われてしまう時間帯が長く続いたが、岡田のダブルクラッチでの得点が決まり会場が大歓声に包まれた。その後、点差と時間をうまくコントロールし、終始リードした京都が今シーズン2勝目を挙げた。
「侑大のことは信じていますし、いくらターンオーバーしても自分が守ればいいと思っています」
序盤から激しいディフェンスで信州の攻撃の芽を摘んだのが、前節に引き続き先発出場した水野だった。信州のファーストポゼッションでアバリエントスのパスをスティールして得点を挙げ、さらにその後のインバウンズパスにもプレッシャーをかけて、連続ターンオーバーを誘発。出だしで主導権を握る立役者となった。
水野自身が「前からプレッシャーをかけるのが自分の仕事なので、体現できたのはよかったです」と話すように、3スティールを記録した数字以上にディフェンスでの貢献が大きかった。また、相手オフェンスの起点となるガード選手にプレッシャーをかける後ろ姿は、チームメートにも良い影響を与えていた。「ゲームチェンジャーとして、コーチに試合前に毎回『エナジーを出してやってくれ』と言われていて、トーンをセットできるのは自分だと思っています。今日は良い形に繋がりました」
ロイ・ラナヘッドコーチも水野に大きな期待と成長を感じている。「昨シーズンもチームの若手として頑張っていましたが、継続性を持ってできていたかというと難しい部分もありました。しかし、今シーズンは彼自身が自分はどういう存在かというのを見つけていますし、ディフェンスのタフさがあります。チームを作り上げていく上で非常に大切な存在です」
水野は積極的なアタックから放った2ポイントシュート5本をすべて成功させ、B1でのキャリアハイとなる14得点を挙げる活躍を見せた。特に前半だけを見ればチームハイとなる10得点を記録している。しかし、得点に関しては「あまり考えていないです」と振り返りつつ、チームメートへの信頼について語った。「周りの選手にディフェンスが寄るので、自分がアタックすればいけることも多いです。逆にディフェンスがきたらパスすればいいというシンプルな考えでやりました。仮にブロックが来て外してしまっても、CJ(ジャクソン)がリバウンドを取ってくれるというマインドなので、まずはリングに向かうという気持ちでやっています」
昨シーズンからの継続選手は水野を含め4選手のみで、他は移籍してきた選手だ。チームスポーツである以上、信頼関係やケミストリーは当然重要で、今の京都は徐々にチーム内でのコミュニケーションが良くなっているようだ。「最近は全員でリバウンドを取って、全員でディフェンスをし、全員でオフェンスすると、声を掛け合っています。常に準備をしよう、出たらエナジーを出して自分の仕事をやり通そうと皆に言っているし、皆にも言われるので、良い関係ができています」
特に看板選手として加入した岡田に対しては特別な想いがあるようだ。「(岡田)侑大もポイントガードを初めてやることになって、苦戦している部分もあると思います。ただ、彼はエースなので僕は信じていますし、いくらターンオーバーしても自分が守ればいいと思っています」
また、チームをより良くするために「チーム内でいろいろとコミュニケーションを取ってはいるものの、試合の中で体現できてないことが多かったかなと。試合中に話すことが少なくなって、自分たちが準備したことがやり通せないこともありました」と、今後の課題についても話した。
前節まで1勝11敗と大きく負け越していたが、対戦相手は勝率が5割以上のチームが多かった。もちろん結果に納得しているわけではないが、水野自身は「自分たちは成長していると思っています」と振り返り、先に目を向けている。実際、この試合後すぐに「相手は明日絶対修正してくるから、しっかり準備しようという話はしました」というようにホーム初勝利に浮かれることなく、兜の緒を締めている。
京都は新加入の若手選手が多く、リーグの中で最も伸び代があるチームの一つと言っても過言ではないだろう。シーズンを通じて成長が図れた昨シーズン終盤には、西の強豪チームに勝利する試合もあった。スタートダッシュこそできなかったものの、『共に登る。』を体現し、成長していく水野やチームであれば、今後の浮上も容易に想像ができる。