山口瑛司

ブレイク中の宮本ツインズも封じられる

ウインターカップの福岡県予選決勝リーグ最終戦、6連覇が懸かった福岡第一は福岡大学附属大濠に61-79で敗れた。

悔やんでも悔やみきれない2分間だった。開始早々、大濠の渡邉伶音、榎木璃旺に連続3ポイントシュートを許して福岡第一の歯車が狂った。6月のインターハイ県予選の大濠戦をはじめ、今までチームを救ってきた世戸陸翔が続けてターンオーバーを喫し、一気に0-10と走られた。「立ち上がりの連続ミスから始まって、ガードとしてチームを制御できなかった。ミスをした後でも厳しいディフェンスができていれば、トランジションスリーを防げた」。第一のキャプテン、山口瑛司は視線を落とした。

大濠のサイズがプレッシャーになったのか、ドライブで守備を割ってもフィニッシュがリングに嫌われ続け、リバウンドを抑えられて速攻を許した。井手口孝コーチも局面を打開しようと、第1クォーター残り3分50秒にセカンドユニットを投入。トップリーグでブレイクした双子の1年生ガード、宮本聡と耀には2-3ゾーンをぶつけられた。大濠の片峯聡太コーチはこのタイミングでゾーンを敷いた理由をこう明かす。「やり合いには強いから長所を消そうと思いました。1年生なので中学では経験していないゾーンディフェンスには対応が遅れていた」。交代直後にターンオーバーを重ねたのも響き、第一の切り札を封じられ、流れを変えられなかった。

福岡第一

エース崎濱秀斗の不在響く

前半を終えて29-43。ベンチからは「シュートまでは行けている。気持ちを強く持って攻めよう」と指示が飛んだ。ギアを上げたのが、前半を無得点で終えていた山口瑛司だ。前半は2年生の八田滉仁に攻めさせる場面が目立ったが、局面を打開しようと自らアタックした。第3クォーター残り6分15秒、リバウンドをつかんだ世戸からボールを引き取ると一気に加速。大濠の渡邉をかわして速攻から初得点を挙げた。さらに残り3分48秒には三輪大和からファウルをもらいながらドライブを決める3点プレーで気を吐いた。「故障でチームを離れた崎濱秀斗の分まで自分が得点の部分で貢献しないといけない」という思いがプレーに表れていた。

ゲームキャプテンの崎濱がトップリーグの大濠戦で右足を骨折。手術を余儀なくされた。チームを離れた崎濱とはLINEで連絡を取り合い、「迷惑を掛けるけど頑張ってほしい。(日頃の練習は)大濠戦を意識して緊張感を持たせて」というメッセージを受け取っていたという。それだけに随所に出てしまった『甘さ』を反省した。「ディフェンスのローテーションでミスが起きたり、24秒直前でシュートを許したり……。ロングリバウンドもガードが抑えないといけなかった。力の無さがこの試合で全部出てしまった」

例年、福岡決戦には完成度を高めて臨む井手口コーチは「ケガや病気でこの大会への準備ができなかった。練習をやり込めていないから自信が持てず、腰が引けて足が出ていない。大濠さんの方が良い準備をしていた」と力不足を認めた。

4強入りしたインターハイから3カ月余り。崎濱を欠いたチームの現状を「あの時よりも状態は落ちている」という。ウインターカップまで残り2カ月弱。崎濱と195cmのアピア・パトリック眞の復帰の可能性も残され、井手口コーチは「11月はトップリーグがあるけど、個を鍛え直します。崎濱とアピアが間に合うのかどうかでチーム作りも変わる」と先を見据える。昨年のウインターカップで敗れた開志国際(新潟県)や夏の王者である日本航空(山梨県)をはじめ、全国のライバルと渡り合うためには時間との勝負にもなる。この敗戦を糧に這い上がれるか、第一にとって試練の2カ月となりそうだ。