「ディフェンスで期待されるのはエキサイティング」
昨シーズンのピストンズは17勝65敗とNBA30チームでぶっちぎりの最下位だった。司令塔のケイド・カニングハムがケガで早々にシーズン終了となると、その後は個々の奮闘はあれどチームとしての一体感が感じられない戦いぶりに終始した。最下位でもロッタリーで得られたのは5位指名権。NBAドラフトの目玉、ビクター・ウェンバニャマ獲得の夢も潰えた。
それでも全体5位で指名したアサー・トンプソンが、新シーズンへの期待を高めている。サマーリーグで好調なパフォーマンスを見せたトンプソンは、オフの大半を新たなチームメートとともに過ごした。「みんながチームとして何に取り組むべきかを教えてくれた。まだNBAのコートに立ったわけじゃなくても、NBAで戦う準備はできたと感じている。それだけの手応えを得られるだけの練習はやってきた」
新たな指揮官のモンティ・ウィリアムズは、カニングハムと組むシューティングガードとしてトンプソンを先発起用すると公言している。ドラフト前から定評のあった、身体能力を生かしてバスケIQも高いディフェンス力を評価してのものだ。
モンティは言う。「ケイドもディフェンスはできる。だがこれまでの彼は、ボールを運んでチームオフェンスを遂行しながら、相手のエースをマークしていた。私はアサーが激しいディフェンスをすることで、ケイドが相手のエースに付かなくて済むことを期待している」
トンプソンは「ディフェンスで期待されるのは僕にとって一番エキサイティングなことだ」と、期待されることに大きなモチベーションを感じている。「汚れ仕事は誰かが先頭に立ってやらなきゃいけない。誰かがやっていれば、それはチームに伝染していく。昨シーズンがどうだったかは知らないけど、みんなプライドを持ってやっているよ」とトンプソンは語る。
高さと長さ、しなやかな動きと爆発的なダッシュとジャンプを兼ね備えたアスリートであるトンプソンは、その身体能力をフルに活用してオールラウンドな仕事をするつもりだ。ここまでのプレシーズンゲーム3試合で目を引くのは、どんなボールにも飛びつく反応の良さから来る平均リバウンド9.0という数字。攻めではジャンプシュートの精度には難があるものの、オフボールでも良い動き出しでチームオフェンスに貢献し、12.7得点、3.7アシストと上々の数字を残している。
すでにピストンズのチームメートとは良い関係を築いている。チームリーダーのカニングハムについてトンプソンは「22歳とは思えない落ち着きとリーダーシップがある。そして毎日、誰よりもたくさん練習している」と評する。
トンプソンにとっては頼りになる兄貴分がもう一人いる。ネッツから移籍してきたベテランのジョー・ハリスだ。「僕とジョーとはロッカーが隣で、もう『僕の仲間』と言える間柄だ。彼はもうNBAで10年目のベテランで、様々な経験を積んできた。レブロン(ジェームズ)、KD(ケビン・デュラント)、カイリー(アービング)といった偉大な選手を間近で見てきてもいる。彼は自分が学んできたことを少しずつ僕に教えてくれるんだ」
サンズをドアマットチームから優勝候補へと飛躍させたモンティを指揮官に迎え、カニングハムとアイザイア・スチュワートがケガから復帰。新戦力のジョー・ハリスとモンテ・モリスはチームに足りない経験を補うだろう。ただ、それでもピストンズを高く評価する人は少ない。サプライズの躍進を起こせるかどうか、それはルーキーのトンプソンが1年目からどれだけ活躍できるかにも、大きくかかってくる。